概説 |
下腹部の痛みをやわらげる漢方薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 腸癰湯(チョウヨウトウ)という方剤です。下腹部の炎症や鬱血をひき、痛みをやわらげます。下腹部痛、ことに盲腸部の痛みや生理通に適します。体力が中くらいか少し弱っている人で、冷えのない人に向く処方です。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。腸癰湯の構成生薬は下記の4種類です。“よく苡仁”と“冬瓜子”は、熱や炎症をさまし、また膿の排出を助けます。“牡丹皮”と“桃仁”は、下腹部の鬱血をひき血行をよくする作用があるとされ、生理痛にも有効です。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- よく苡仁(ヨクイニン)
- 冬瓜子(トウガシ)
- 牡丹皮(ボタンピ)
- 桃仁(トウニン)
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特徴 |
- “腸癰”とは、虫垂炎のことです。今は、その治療に第一選択することはありませんが、ある程度の痛みには効果がありそうです。
- 適応証(体質)は、中間証〜やや虚証(体力中くらい〜やや虚弱)、熱証(炎症)となります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 妊娠中の人は医師に申し出てください。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。

- 【妊娠・授乳】

- 配合生薬の桃仁や牡丹皮により、妊娠によくない影響をする可能性があります。大量でなければまず心配ないのですが、妊娠中の服用については医師とよく相談してください。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、腸癰湯をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |
盲腸部に急性または慢性の痛みがあるもの、あるいは月経痛のあるもの。 |
用法 |
通常、成人1日6.0gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、服用時にむかついたり、かえって食欲がなくなるかもしれません。しだいに慣れることが多いのですが、つらいときは医師と相談してください。
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