概説 |
体をあたため、痛みをやわらげる漢方薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 当帰芍薬散加附子(トウキシャクヤクサンカブシ)という方剤です。血行をよくして体をあたため、痛みをやわらげます。また、貧血症状を改善したり、ホルモンバランスを整える効果も期待できます。
一般的に女性に用いることが多く、やせ型で顔色が悪く、とくに冷えの強い人に向く処方です。具体的には、冷え性、貧血症状、生理不順、生理痛、生理前後の不快症状、むくみ、頭痛、めまい、肩こり、更年期障害、神経痛などに適応します。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。当帰芍薬散加附子は、主薬の“当帰”と“芍薬”をふくめ、下記の7種類からなります。“当帰”と“川きゅう”には、血行をよくして貧血症状を改善し、体をあたためる作用があります。“芍薬”は生理痛や肩こりなどの痛みをやわらげる生薬です。また、“蒼朮”と“沢瀉”、“茯苓”は、漢方の代表的な利尿薬で、むくみ症状を改善したりします。さらに、体をあたため痛みをとる“附子”が加わります。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 当帰(トウキ)
- 川きゅう(センキュウ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ)
- 沢瀉(タクシャ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 附子(ブシ)
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特徴 |
- 女性の聖薬ともいわれる「当帰芍薬散」に、体をあたためる熱性の“附子”を加えたものです。したがって、より寒証向けの処方になります。
- 適応証(体質)は、虚証(虚弱)、寒証(冷え)、血虚(血流不足・貧血症状)となります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。
 【注意する人】
- 冷えの強い「寒証」向けの方剤です。したがって、体力が充実し、暑がりで、のぼせのある人には不向きです。
- 胃腸がとても弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい人は慎重に用いるようにします。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 附子を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、その重複に注意が必要です。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、当帰芍薬散加附子をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |
血色悪く貧血性で足腰が冷え易く、頭痛、頭重で小便頻数を訴え時に目眩、肩こり、耳鳴り、動悸あるものの次の諸症。
- 婦人の冷え症、月経痛、神経痛、慢性腎炎、更年期障害、妊娠中の障害(浮腫、習慣性流産の予防、痔疾、腹痛)、産後の肥立不良
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用法 |
通常、成人1日9gを3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、症状により適宜増減する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、服用時にむかついたり、かえって食欲がなくなるかもしれません。また、動悸やのぼせ、舌のしびれ感などもみられます。症状の強いときは、早めに受診してください。
- 胃の不快感、食欲不振、吐き気、腹痛、下痢
- 動悸、のぼせ、舌のしびれ
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