概説 |
咳をしずめる漢方薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 麦門冬湯(バクモンドウトウ)という方剤です。のどを潤し、咳をしずめる作用があります。痰の少ない乾咳、あるいは切れにくい粘稠な痰をともなう咳に適用するほか、口内乾燥を伴うドライマウスなどにも応用されます。のぼせ気味で、咳き込んで顔が赤くなることも使用目安です。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。麦門冬湯の構成生薬は、主薬の“麦門冬”をはじめ下記の6種類です。“麦門冬”は代表的な潤性薬の一つで、のどを潤し粘稠な痰を出しやすくします。また、“半夏”は、こみ上げる咳や吐き気をしずめる降性の生薬です。これに、滋養強壮作用をもつ潤性の“人参”、炎症をさます“粳米”、緩和作用の“甘草”などが加わります。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 麦門冬(バクモンドウ)
- 半夏(ハンゲ)
- 人参(ニンジン)
- 粳米(コウベイ)
- 大棗(タイソウ)
- 甘草(カンゾウ)
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特徴 |
- 痰の少ない乾咳であることを条件に、咳の治療に広く用いられています。漢時代の「金匱要略」という古典書で紹介されている処方です。
- 適応証(体質)は、中間証〜虚証(体力中くらい以下)、燥証(乾燥)となります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 芍薬甘草湯など甘草を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、「偽アルドステロン症」の副作用に注意が必要です。
- 飲み合わせに注意..甘草含有製剤、グリチルリチン(グリチロン等)など。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、麦門冬湯をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |

- 【ツムラ・他】

- 痰の切れにくい咳、気管支炎、気管支ぜんそく。

- 【コタロー】

- こみ上げてくるような強い咳をして顔が赤くなるもの、通常喀痰は少量でねばく、喀出困難であり、時には喀痰に血滴のあるもの、あるいはのぼせて咽喉がかわき、咽喉に異物感があるもの。
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用法 |
通常、成人1日9.0gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する(ツムラ)。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、服用時にむかついたり、かえって食欲がなくなることがあるかもしれません。しだいに慣れることが多いのですが、つらいときは医師と相談してください。
重い副作用はまずありませんが、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧が上がってくることがあります。「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状です。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。
そのほか、間質性肺炎と肝障害が報告されています。万一のことですが、咳や息切れ、呼吸困難、発熱、ひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、といった症状に注意し、そのような場合はすぐ医師に連絡してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
 【その他】
- 胃の不快感、食欲不振、軽い吐き気
- 発疹、発赤、かゆみ
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