概説 |
めまいや頭痛に用いる漢方薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 漢方では、めまいの第一の要因として“水毒”を疑います。水毒とは、体の水分が停滞したり偏在することで、その循環が悪いことを意味します。この方剤、半夏白朮天麻湯(ハンゲビャクジュツテンマトウ)は、水分循環を改善し水毒を取り去ることで、めまいを治します。
めまいの症状を中心に、頭痛や頭重感、吐き気や嘔吐、手足の冷えなどをともなうときに用います。ふだんから胃腸が弱く、冷え性で体力のあまりない人に向く処方です。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。半夏白朮天麻湯は、その名前になっている“半夏”と“白朮”、“天麻”を中心に、下記の12種類の生薬から成ります。“半夏”は、吐き気や嘔吐をおさえる漢方の重要な生薬です。“白朮”と“茯苓”それと“沢瀉”には利尿作用があり、体の余分な水分を取り去ります。“天麻”は、めまいや頭痛を発散して治します。さらに、滋養強壮作用のある“人参”と“黄耆”、健胃作用をもつ“陳皮”や“黄柏”、“麦芽”や“生姜”なども加わります。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 半夏(ハンゲ)
- 白朮(ビャクジュツ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 沢瀉(タクシャ)
- 天麻(テンマ)
- 人参(ニンジン)
- 黄耆(オウギ)
- 乾姜(カンキョウ)
- 陳皮(チンピ)
- 黄柏(オウバク)
- 麦芽(バクガ)
- 生姜(ショウキョウ)
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特徴 |
- 病院でも、めまいの治療によく処方されます。金時代の「脾胃論」という古典書で紹介されている処方です。
- 適応証(体質)は、虚証(虚弱)、寒証(冷え)、湿証(水分停滞)となります。
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注意 |
 【診察で】
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、半夏白朮天麻湯をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |

- 【ツムラ・他】

- 胃腸虚弱で下肢が冷え、めまい、頭痛などがある者。

- 【コタロー】

- 冷え症、アトニー体質で疲労しやすく、頭痛、頭重、めまい、肩こりなどがあり、ときには悪心、嘔吐などを伴うもの。
- 胃アトニー症、胃腸虚弱者、または低血圧症に伴う頭痛、めまい。

- 【三和】

- 平素より胃腸が虚弱で足が冷え、ときどき頭痛、めまいを起こし、激しいときは嘔吐を伴う症状。または食後に手足がだるくねむくなるもの、しばしば心下部に振水音を伴うものの次の諸症。
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用法 |
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する(ツムラ)。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、服用時にむかついたり、かえって食欲がなくなるかもしれません。しだいに慣れることが多いのですが、つらいときは医師と相談してください。
- 胃の不快感、食欲不振、軽い吐き気
- 発疹、発赤、かゆみ
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