|  概説 | 肥満や多汗症、関節痛などに用いる漢方薬です。 | 
|  作用 |  
 【働き】
  
防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)という方剤です。体の水分循環を改善し、疲れや痛みをやわらげます。汗かきで疲れやすく、色白で太りぎみの人に向く処方です。
 具体的には、肥満症、多汗症、むくみ、関節炎(ことに関節に水がたまりやすいもの)などに用います。また、そのような症状をともなう腎炎やネフローゼにも適応します。
  
 【組成】
  
漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。防已黄耆湯の構成生薬は、下記の6種類です。主薬の“防已”は、体の水分循環をよくして余分な水分を取り去るとともに、痛みを発散して治します。“蒼朮”も水分循環をよくする生薬で、“防已”の作用を助けます。もう一つの主薬“黄耆”には、滋養強壮作用のほか汗を調節する作用があるといわれます。さらにこれに、胃腸によい“生姜”と、緩和作用の“大棗”および“甘草”が加わります。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
 
 防已(ボウイ)黄耆(オウギ)蒼朮(ソウジュツ)または白朮(ビャクジュツ)生姜(ショウキョウ)大棗(タイソウ)甘草(カンゾウ)
 | 
|  特徴 | “防已”と“黄耆”を主薬とする湿証向け方剤です。いわゆる水ぶとりタイプの女性に用いられることが多いです。漢時代の「金匱要略」という古典書で紹介されています。適応証(体質)は、虚証(虚弱)、湿証(水分停滞)となります。
 | 
  
    |  注意 |  【診察で】
 持病のある人は医師に伝えておきましょう。市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。
  
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
  
芍薬甘草湯など甘草を含む他の漢方薬といっしょに飲むときは、「偽アルドステロン症」の副作用に注意が必要です。
 
 飲み合わせに注意..甘草含有製剤、グリチルリチン(グリチロン等)など。
  【使用にあたり】
 ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。
  【備考】
 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、防已黄耆湯をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
 | 
  
    |  効能 |  
 【ツムラ】
  
色白で筋肉軟らかく水ぶとりの体質で疲れやすく、汗が多く、小便不利で下肢に浮腫をきたし、膝関節の腫痛するものの次の諸症。
 
 腎炎、ネフローゼ、妊娠腎、陰嚢水腫、肥満症、関節炎、癰、せつ、筋炎、浮腫、皮膚病、多汗症、月経不順。
  
 【クラシエ・他】
  
色白で疲れやすく汗のかきやすい傾向のある次の諸症。
 
 肥満症(筋肉にしまりのない、いわゆる水ぶとり)、関節痛、むくみ。
  
 【コタロー】
  
水ぶとりで皮膚の色が白く、疲れやすくて、汗をかきやすいか、または浮腫があるもの。
 
 | 
  
    |  用法 | 通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する(ツムラ)。 
    
      
        | ※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
 |  | 
  
    |  副作用 | 漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、服用時にむかついたり、かえって食欲がなくなるかもしれません。しだいに慣れることが多いのですが、つらいときは医師と相談してください。 
 重い副作用はまずありませんが、配合生薬の甘草の大量服用により、浮腫(むくみ)を生じたり血圧が上がってくることがあります。「偽アルドステロン症」と呼ばれる症状です。複数の方剤の長期併用時など、念のため注意が必要です。
 
 そのほか、間質性肺炎と肝障害が報告されています。万一のことですが、咳や息切れ、呼吸困難、発熱、ひどい倦怠感、皮膚や白目が黄色くなる、といった症状に注意し、そのような場合はすぐ医師に連絡してください。
 
 
  【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
 偽アルドステロン症..だるい、血圧上昇、むくみ、体重増加、手足のしびれ・痛み、筋肉のぴくつき・ふるえ、力が入らない、低カリウム血症。間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
  【その他】
 胃の不快感、食欲不振、軽い吐き気発疹、発赤、かゆみ
 |