概説 |
浮腫(むくみ)や喘鳴(ゼイゼイ)をやわらげる漢方薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 木防已湯(モクボウイトウ)という方剤です。体の停滞した水分を発散して取り去るような作用があります。その作用から、心臓病あるいは腎臓病にもとづく浮腫(むくみ)や喘鳴(ゼイゼイ)の治療に用いられます。「心下痞堅(しんかひけん)」といって、みぞおちが板のようにかたく張っていることも使用目安です。

- 【組成】

- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。木防已湯の構成生薬は下記の4種類です。“防已”には利尿作用があり、体の水分循環を改善します。“石膏”は寒性の発散薬で、熱や炎症をさまし、また停滞した水分を発散させます。“桂皮”も発散性の生薬で、余分な水分を取り去るのを助けます。これに、滋養強壮薬の“人参”が加わります。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 防己(ボウイ)
- 石膏(セッコウ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 人参(ニンジン)
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特徴 |
- “防已”を主薬とする方剤です。漢時代の「金匱要略」という古典書で紹介されています。
- 適応証(体質)は、中間証〜やや虚証(やや虚弱)、湿証(水分停滞)となります。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。
 【注意する人】
- 冷えの強い「寒証」、体がひどく弱っている「著しい虚証」の人は慎重に用いる必要があります。
- 胃腸が弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい人は慎重に用いるようにします。
 【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。
 【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、木防已湯をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
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効能 |

- 【ツムラ】

- 顔色がさえず、咳をともなう呼吸困難があり、心臓下部に緊張圧重感があるものの心臓、あるいは、腎臓にもとづく疾患、浮腫、心臓性喘息。

- 【コタロー】

- みぞおちがつかえて喘鳴を伴う呼吸困難があり、あるいは浮腫があって尿量減少し、口内または咽喉がかわくもの。
- 心内膜炎、心臓弁膜症、心臓性喘息、慢性腎炎、ネフローゼ。

- 【三和】

- 心臓下部がつかえて喘息を伴う呼吸困難があって浮腫、尿量減少、口渇などの傾向あるものの次の諸症。
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用法 |
通常、成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する(ツムラ)。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、服用時にむかついたり、食欲がなくなるかもしれません。しだいに慣れることが多いのですが、つらいときは医師と相談してください。
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