概説 |
体の弱った機能をおぎなう漢方薬です。おもに、足腰の痛みや排尿異常などに用います。 |
作用 |
- 【働き】
- 六味地黄丸(ロクミジオウガン)という方剤です。体の弱った機能をおぎない元気をつけます。ことに、足腰や泌尿器など下半身の衰えに最適です。
一般的に、体力の低下した中高年に用いることが多いです。ただし、冷えの強いときは不向きで、むしろ、のぼせ気味で暑がりの人に向きます。「臍下不仁」といって、オヘソから下の下腹部がフニャフニャと力がないことも使用目安です。
具体的には、足腰の痛みやしびれ、腎機能低下にともなう夜間頻尿、性機能低下、乾燥肌のカユミや湿疹などに用います。また、そのような症状をともなう前立腺肥大症や糖尿病にも適応します。
- 【組成】
- 漢方薬は、自然の草や木からとった「生薬」の組み合わせでできています。六味地黄丸は、その名が示すよう、下記の6種類の生薬からなります。主薬の“地黄”には、貧血症状を改善し元気をつける作用があります。“山茱萸”や“山薬”にも滋養強壮作用があり、“地黄”の働きを高めます。“茯苓”と“沢瀉”は、水分循環をよくする生薬です。“牡丹皮”は漢方でいう「お血(おけつ)」を治す生薬で、血行障害を改善し血のめぐりをよくします。これらがいっしょに働くことで、よりよい効果を発揮します。病院では、煎じる必要のない乾燥エキス剤を用いるのが一般的です。
- 地黄(ジオウ)
- 山茱萸(サンシュユ)
- 山薬(サンヤク)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 沢瀉(タクシャ)
- 牡丹皮(ボタンピ)
|
特徴 |
- 高齢の人を中心によく用いられています。六味丸または六味腎気丸と呼ばれることもあります。
- 八味地黄丸から温性の“桂皮”と“附子”をとり除いたもので、より熱証向けの方剤といえます。
- 適応証(体質)は、虚証(虚弱)、熱証(暑がり)、臍下不仁(下腹部脱力)となります。
|
注意 |
【診察で】
- 持病のある人は医師に伝えておきましょう。
- 市販薬も含め服用中の薬を医師に教えてください。
【注意する人】
- 冷えがとても強い「著しい寒証」の人には向きません。そのような人は、八味地黄丸のほうが適当です。
- 胃腸が弱く、食欲不振や吐き気、嘔吐や下痢などを起こしやすい人は慎重に用いるようにします。
【使用にあたり】
- ふつう、漢方薬は食前もしくは食間(空腹時)に飲みます。顆粒は、お湯で溶かしてから、ゆったりした気分で飲むとよいでしょう。むかつくときは、水で飲んでもかまいません。
- もし、食欲がなくなったり、吐き気を催すようでしたら、食後でもよいと思います。
- 効果のないときは、医師と相談してみてください。証の再判定が必要かもしれません。
【備考】
- 漢方は中国で生まれた体系医学です。その起源は遠く2千年以上もさかのぼります。そして、日本にも古くから伝わり、独自の発展をとげました。
- 漢方の特徴は、体全体をみるということです。体全体の調子を整え、病気を治していくのです。ですから、病気の症状だけでなく、一人ひとりの体質も診断しなければなりません。このときの体の状態や体質をあらわすのが「証(しょう)」という概念です。このような考え方は、西洋医学が臓器や組織に原因を求めていくのとは対照的です。漢方のよさは、薬そのものよりも、証にもとづき「人をみる」という、その考え方にあるといっても過言でないでしょう。
- 病院では、服用が簡単な「エキス剤」が広く使われています。これは、煎じ薬を濃縮乾燥させたもので、そのままお湯に溶かすだけで飲めます(一部の専門外来では、生薬のまま調合することも)。現在、六味地黄丸をはじめ約150種類の方剤が保険適応となっています。
|
効能 |
疲れやすくて尿量減少または多尿で、ときに口渇があるものの次の諸症。
|
用法 |
通常、成人1日6.0gを2〜3回に分割し、食前又は食間に経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
|
副作用 |
漢方薬にも少しは副作用があります。人によっては、胃の不快感やもたれ感、食欲不振、吐き気などを催します。しだいに慣れることが多いのですが、つらいときは医師と相談してください。
|