概説 |
細菌を抑えるお薬です。細菌が原因のいろいろな病気に用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- 感染症は、病原微生物が人の体に侵入し悪さをする病気です。腫れや発赤を生じ、ときに化膿し、痛みや発熱により苦痛をもたらします(実は、このような症状は病原微生物と戦うための体の防衛システムでもあるのです)。
病原微生物には、細菌やウイルス、真菌(カビ)などが含まれます。このお薬が有効なのは おもに“細菌”による感染症です。グラム陽性菌・陰性菌をはじめ、マイコプラズマやクラミジア、リケッチアにも有効です。病原菌が死滅すれば、腫れや発赤がおさまり、痛みがとれ、熱があれば解熱します。
いろいろな細菌に有効なので、各科で広く用いられています。具体的には、慢性気管支炎、性行為感染症のクラミジア症、また皮膚科ではニキビ菌を殺菌するのにもよく使われます。マイコプラズマ肺炎に対しては、他の抗生物質が効かないときに第2選択します。適応外ですが、マラリアの治療にキニーネとの併用療法も想定されます。さらには、感染症とは関係なく、リウマチの治療に応用されるかもしれません。

- 【薬理】

- 作用面からは蛋白合成阻害薬に分類されます。蛋白合成の初期段階を阻害することにより抗菌作用を発揮します。すなわち、細菌内に取り込まれたあと、蛋白合成開始複合体(70Sリボゾーム)の構成物質(30S)に結合し その機能を妨げ、蛋白鎖の伸長を阻害することにより細菌の発育を阻止するのです。この系統は、一般的には静菌的に作用しますが、高濃度では殺菌的作用を示します。とくにミノサイクリン(この薬)は菌体内に取り込まれやすく強い抗菌力を示すことから、菌種によっては臨床用量でも十分殺菌的に働くとされます。抗菌スペクトラムもきわめて広く、グラム陽性球菌からグラム陰性桿菌までの幅広い細菌類に抗菌力をもちます。細胞壁の有無にかかわりなく作用するので細胞壁を持たないマイコプラズマ、クラミジアやリケッチア感染症に有用性が高いです。
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特徴 |
- テトラサイクリン系の抗生物質です。この系統の特徴として、ペニシリン系およびセフェム系抗生物質が効かないマイコプラズマやクラミジア、リケッチア、さらには細菌以外のマラリア原虫にも有効ということがあげられます。
- 同系のなかでは、抗菌力が強く、耐性菌も比較的少ないです。抗菌力は従来のテトラサイクリンなどに比べ1〜4倍、またテトラサイクリンが効きにくい耐性ブドウ球菌やレンサ球菌、大腸菌に対しても一定の効果が期待できます。
- 正式な適応症ではありませんが、特殊な使い方として、リウマチの治療に応用されることがあります。とくに、他の抗リウマチ薬による肺障害の副作用が心配されるときなど役立つかもしれません。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は、医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬は、医師に伝えてください。
 【注意する人】
- 肝臓病や腎臓病のある人は慎重に用います。高齢の人も副作用がでやすいので、服用量、服用間隔などに配慮が必要です。
- マクロライド系抗生物質が効かないなど やむおえない場合をのぞき、ふつう赤ちゃんや小さな子供には使用しません。歯の成長期に使うと歯が黄色くなるおそれがあるためです。妊娠中、授乳中も原則控えるようにします。

- 【飲み合わせ・食べ合わせ】

- 飲み合わせに注意する薬がたくさんあります。市販薬も含め服用中の薬は医師に報告しておきましょう。
- カルシウム剤や鉄剤、胃腸薬(アルミニウム、マグネシウム分を含む制酸剤)、高リン血症治療薬のランタン(ホスレノール)などと同時に飲むと、この薬の効き目が落ちてしまいます。2時間以上十分間隔をあければ影響が少なくなります。
- 抗凝血薬のワルファリン、強心薬のジゴキシン、リウマチの薬のメトトレキサート、血糖降下薬などの作用(副作用)を増強するおそれがあります。
- ビタミンAまたはその類似薬との併用により、頭蓋内圧上昇を起こすことがあります。
- 経口避妊薬の効果を弱めるかもしれません。
 【使用にあたり】
- 決められた飲み方を守ってください。症状、年齢、製剤によって用法用量が異なります。症状が重いときは、多めになることがあります。
- ふつう、1日1回もしくは2回飲みます。食道や胃を荒らしやすいので、コップ1杯ほどの十分な水で飲んでください。
- 牛乳や乳製品といっしょに飲むと、この薬の吸収が悪くなります。2時間以上間隔をあけるようにしましょう。
- 指示された期間きちんと続けましょう。クラミジア症やニキビなど、病気によっては治療期間が少し長めになります(数週間〜数カ月)。自分だけの判断で止めてしまうと、再発したり治りにくくなるおそれがあります。
- ふつう、3〜4日も飲めば治ってきます(ニキビでは数週間〜数カ月)。もし、効果がなかったり、かえって悪化する場合は、早めに受診してください。薬が合っていないかもしれません。
 【妊娠・授乳】
- この抗生物質を妊娠中期以降に使用すると、赤ちゃんの歯が黄色くなるおそれがあります。2週間以上使用すると、その可能性が高くなるようです。このことから、この系統の抗生物質を妊娠中にあえて処方することはありません。
- 授乳中の使用も控えます。どうしても必要な場合は、授乳を中止します。
 【食生活】
- めまいを起こすことがあります。車の運転や高い所での危険な作業は控えましょう。
- 光線過敏症を起こす可能性があります。皮膚の弱い人や長期服用時は、できるだけ直射日光を避けたほうがよいかもしれません。

- 【備考】

- 抗生物質の効きにくい細菌が増えています。ある調査によると、中耳炎を起こす肺炎球菌の7割が抵抗力を持っていたそうです。このような耐性菌を増やさないため、欧米では抗生物質の安易な使用は慎まれています。
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効能 |
 【錠・カプセル】- <適応菌種>

- ミノサイクリンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、緑膿菌、梅毒トレポネーマ、リケッチア属(オリエンチア・ツツガムシ)、クラミジア属、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
<適応症>- 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症
- 外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、骨髄炎
- 咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎を含む)、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染
- 膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、淋菌感染症、梅毒
- 腹膜炎
- 感染性腸炎
- 外陰炎、細菌性腟炎、子宮内感染
- 涙のう炎、麦粒腫
- 外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺炎
- 歯周組織炎、歯冠周囲炎、上顎洞炎、顎炎
- 炭疽、つつが虫病、オウム病
 【顆粒】- <適応菌種>

- ミノサイクリンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、炭疽菌、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、リケッチア属(オリエンチア・ツツガムシ)、クラミジア属、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)
<適応症>- 表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症
- 骨髄炎
- 咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染
- 涙のう炎、麦粒腫
- 中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺炎
- 歯周組織炎、感染性口内炎
- 猩紅熱
- 炭疽、つつが虫病、オウム病

- 【応用】

- 関節リウマチ、神経変性疾患(パーキンソン病等)
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用法 |

- 【錠・カプセル】

- 通常成人は初回服用量をミノサイクリンとして、100〜200mg(力価)とし、以後12時間ごとあるいは24時間ごとにミノサイクリンとして100mg(力価)を経口服用する。なお、患者の年齢、体重、症状などに応じて適宜増減する。

- 【顆粒】

- 通常、小児は体重1kg当たり、本剤0.1〜0.2g〔ミノサイクリン塩酸塩として2〜4mg(力価)〕を1日量として、12あるいは24時間ごとに粉末のまま経口服用する。なお、患者の年齢、症状などに応じて適宜増減する。本剤は、用時水を加えてシロップ状にして用いることもできる。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
人によっては胃の不快感や吐き気を催すことがあります。頭痛やめまい感もわりとよくみられます。ひどいときは、早めに受診してください。少し量を減らしたほうがよいかもしれません。
長期服用時、とくに高齢の人において、手足にあざのような色素沈着を生じることがあります。また、小学生以下の子供では、歯が黄色くなるなど歯の成長に悪い影響をおよぼすおそれがあります。
重い副作用はほとんどありませんが、重いアレルギー症状、皮膚障害、血液障害、肝障害や腎障害、長期服用時にみられる結節性多発動脈炎などに念のため注意してください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、咳、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- ループス様症候群..がだるい、発熱、関節痛、筋肉痛、発疹、体重減少
- 結節性多発動脈炎、血管炎..発熱、けん怠感、体重減少、関節痛、筋肉痛、しびれ、皮膚の網状の模様。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 遅発性の重い過敏症状..発疹、発熱、だるい、吐き気、リンパ節の腫れ、皮膚や白目が黄色くなる。
- 重い血液成分の異常..発熱、喉の痛み、口内炎、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や鼻血・歯肉出血など出血傾向。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 急性腎障害..尿が少ない・出ない、むくみ、尿の濁り、血尿、だるい、吐き気、頭痛、のどが渇く、けいれん、血圧上昇。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 膵炎..吐き気、吐く、持続的な激しい腹痛、上腹部または腰から背中の激痛、発熱。
- けいれん、意識低下。
- 大腸炎..激しい腹痛、頻回な下痢、血便、発熱。
 【その他】
- 吐き気、食欲不振、腹痛、下痢
- めまい、フワフワ感、頭痛
- 発疹、じん麻疹、光線過敏症
- 歯の黄変(子供)
- 長期服用で、皮膚や爪、粘膜の色素沈着(舌変色、皮膚や爪の色がくすむ、手の甲や足の脛が青黒くなる)
- 長期服用で、菌交代症(口内炎、カンジダ症)やビタミンK欠乏症(出血傾向)
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