概説 |
結核菌など抗酸菌を死滅させるお薬です。結核や肺MAC症の治療に用います。 |
作用 | 結核は、結核菌が増殖し、体をむしばんでいく病気です。おもな病変部位は肺で、かつては肺病として恐れられました。近年は少なくなったものの、先進国の中では以前高い水準で油断はできません。最近、学校や老人ホームでの集団感染、あるいは病院での院内感染も目立ちます。
このお薬には、結核菌を殺菌する作用があります。菌が死滅すれば、結核の病気も治ります。通常、単独ではなく、イソニアジド(INH)やリファンピシン(RFP)など他の抗結核薬と併用します。結核のほか、肺MAC症をふくむ非結核性抗酸菌症にも有効です。 |
特徴 |
- 第一線薬(b)に位置付けられる抗結核薬です。抗菌力はそれほど強くありませんが、他の抗結核薬が副作用や薬剤耐性など使ええないときに役立ちます。副作用として視力障害に注意が必要です。略号はEB。
- 抗酸菌(マイコバクテリア)に有効な数少ない薬剤です。抗酸菌は一般的な抗生物質が効きにくい細菌で、結核菌のほか、マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症などを起こす非結核性抗酸菌が含まれます。結核以外のこれらによる感染症にも適応が拡大されました。
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注意 |
 【診察で】
- 持病のある人、また、妊娠中の人は医師に伝えてください。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 視力障害の副作用や注意事項について、医師から十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで使用するようにしましょう。

- 【注意する人】

- 視神経炎や糖尿病のある人は、視力障害の副作用がでやすいので、原則的に用いません。腎臓の悪い人や高齢の人も、服用量に注意するなど慎重に用います。
- 適さないケース..視神経炎、糖尿病、小さい子供。
- 注意が必要なケース..腎臓病、高齢の人など。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 他の抗結核薬と併用するときは、視力障害や肝臓の副作用に注意が必要です。
- アルコールは病気の治りを悪くしますし、肝臓や神経の副作用を起こしやすくします。飲酒は、できるだけ控えましょう。
 【使用にあたり】
- 症状や治療方針によって、飲む量や飲み方が違います。指示どおりに正しくお飲みください。
- 結核症では複数の抗結核薬と併用する必要があります。MAC症の場合は、リファンピシン(RFP)とクラリスロマイシン(クラリス、クラリシッド)またはアジスロマイシン(ジスロマック)と併用することがあります。
- 指示された期間続けることが大事です。自分だけの判断で止めてしまうと、再発したり治りにくくなります。
- 視力の異変に注意してください。毎朝、新聞を片目ずつ一定の距離で読むようにして、視力を自己チェックしましょう。かすんだり、見えにくいときは、直ちに医師に連絡してください。
- 治療開始後に、かえって症状が悪化したり、新たな症状があらわれた場合は医師と相談してください。

- 【検査】

- 必要な検査を受けて、副作用や効果をチェックするようにしましょう。とくに視力検査と肝機能検査が重要です。
 【備考】
- 結核の治療は、複数の抗結核薬による併用療法をおこなうのが基本です。併用により短期治癒を可能とし、また耐性出現を防ぐことができるのです。通常、初めの2ヵ月間は第一線薬のイソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール(この薬)の4剤による強化療法をおこないます。エタンブトールの代わりに注射用抗結核薬のストレプトマイシンを代用することも可能です。その後の4ヵ月間はイスコチンとリファンピシンの2剤に減らし、合計6ヵ月間で治療を終了します。
- 高齢の人、または肝臓が悪くピラジナミドが使いにくい場合に適用される別の治療法もあります。イスコチン、リファンピシン、エタンブトール(またはSM)の3剤で2ヵ月間初期治療をおこない、その後イスコチンとリファンピシンのンの2剤による維持療法を7ヵ月間続ける方法です
- 多剤耐性結核とは、少なくともリファンピシンとイソニアジドに耐性をもつ結核菌による結核のことです。多剤耐性結核の治療は、感受性のある複数の抗結核薬を使用しておこないます。リファンピシンとイソニアジドは原則使用できないので、第一線薬のエタンブトール(この薬)とピラジナミドに、アミノ糖とニューキノロン系抗菌薬を加えた4剤による治療が標準的です。そのほか、新規リファマイシン系抗生物質のミコブティンやデルティバも処方候補となります。これらのいずれかが、副作用や薬剤耐性で使用できない場合は、パラアミノサリチル酸など第二線薬を代用することになります。
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効能 |

- 【適応菌種】

- 本剤に感性のマイコバクテリウム属

- 【適応症A】

- 肺結核及びその他の結核症

- 【適応症B】

- マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症
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用法 |

- 【適応症A】

- 通常成人は、エタンブトール塩酸塩として1日量0.75〜1gを1〜2回に分けて経口服用する。年齢・体重により適宜減量する。なお、他の抗結核薬と併用することが望ましい。本剤の体重別1日服用量の目安は以下のとおりである(体重別の1日量はエタンブトール塩酸塩15〜20mg/kgの範囲内で算出している)。
- 体重60kg以上:1000mg(250mg4錠 or 125mg8錠)
- 体重50kg以上:875mg(250mg3錠+125mg1錠 or 125mg7錠)
- 体重40kg以上:750mg(250mg3錠 or 125mg6錠)
- 体重35kg以上:625mg(250mg2錠+125mg1錠 or 125mg5錠)
- 体重30kg以上:500mg(250mg2錠 or 125mg4錠)
※1日1回朝食後服用、あるいは朝夕2回に分けて服用

- 【適応症B】

- 通常成人は、エタンブトール塩酸塩として0.5〜0.75gを1日1回経口服用する。年齢、体重、症状により適宜増減するが1日量として1gを超えない。本剤の体重別1日服用量の目安は以下のとおりである(体重別の1日量はエタンブトール塩酸塩約15mg/kgで算出している)。
- 体重50kg以上:750mg(250mg3錠 or 125mg6錠)
- 体重40kg以上:625mg(250mg2錠+125mg1錠 or 125mg5錠)
- 体重30kg以上:500mg(250mg2錠 or 125mg4錠)
※1日1回朝食後に服用
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
いちばん重要な副作用は“視力障害”です。毎朝、新聞を片目で読むなどして自己チェックしましょう。もし、かすんだり、見え方がおかしいときは、直ちに医師に連絡してください。早期発見が大切です。すぐに中止すればもとにもどります。
そのほか、肝臓が悪くなることがあります。とくに他の抗結核薬と併用しているときや、酒量の多い人、また高齢の人など注意が必要です。重症化することはまれですが、定期的に肝機能検査を受けるようにしてください。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 視力障害..視力低下、かすんで見える、視野の中心に暗点、視野が狭い、色覚の異常。
- 肝臓の障害..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、咳、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- 間質性肺炎..から咳、息苦しさ、少し動くと息切れ、発熱。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 血小板減少..鼻血、歯肉出血、血尿、皮下出血(血豆・青あざ)、血が止まりにくい。
 【その他】
- 手足のしびれ感
- 食欲不振、吐き気
- 発疹、発熱
- 頭痛、めまい、けん怠感
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