概説 |
エイズウイルスの増殖を抑えるお薬です。エイズの治療に用います。 |
作用 |
- 【働き】
- エイズは、エイズウイルスの感染により起こる病気です。エイズウイルスは血液や精液を介してうつります。体に入ったエイズウイルスは、免疫系の細胞(白血球の一種のCD4リンパ球)を破壊しながら、徐々に増殖していきます。そして、体の免疫力がしだいに低下し、数年から十数年後に発症します。重い感染症にかかったり、リンパ腫などの悪性腫瘍に侵されやすくなり命にかかわることもあるのです。
このお薬は、エイズウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬です。ヌクレオシド系の逆転写酵素阻害薬の部類で、ウイルスの遺伝子の複製を妨げる作用があります。ウイルスが減るとともに、免疫力が回復し、病状が改善します。また、エイズの発症や進行を遅らせ、長生きにもつながります。ただし、エイズウイルスを完全に死滅させることは困難です。したがって、生涯にわたり治療を続けなければなりません。
- ※エイズ:後天性免疫不全症候群
- ※エイズウイルス:ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
- 【薬理】
- エイズウイルスの遺伝子RNAをDNAに逆転写する酵素の働きを阻害します。これにより遺伝子の複製ができなくなり、ウイルスの増殖が抑制されるのです。このような作用から「逆転写酵素阻害薬」と呼ばれています。
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特徴 |
- ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)です。略称は3TC。発売当時、初回治療における6通りの多剤併用療法を比較した試験(ACTG384試験)では、この薬を含む組み合わせ(EFV+AZT/3TC)が最も優れていました。また、B型肝炎ウイルスにも有効なので、B型肝炎を合併している場合に選ばれることがあります。同類薬のなかでは副作用が少なく、服用しやすい薬です。
- 単独では弱いので、同系の1種類を加えて基礎薬(ベースドラッグ、バックボーン)とし、さらに別系統の主要薬(キードラッグ)を組み合わせる3剤併用療法が標準的です。たとえば、この薬(3TC)と同系のジドブジン(AZT)(レトロビル)を基礎薬とし、これに非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬のエファビレンツ(EFV)(ストックリン)を加える組み合わせです。非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬のかわりに、プロテアーゼ阻害薬またはインテグラーゼ阻害薬を用いることもできます。
- 最近は、便利な配合剤が広く用いられています。背景療法としてのコンビビル配合錠(AZT/3TC)やエプジコム配合錠(ABC/3TC)、さらに主薬のインテグラーゼ阻害薬を加えたトリーメク配合錠(DTG+ABC/3TC)も発売されました。
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注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えてください。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は申し出てください。
- 服用中の薬を医師に教えてください。
- 注意事項や副作用について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。
- 体に異常を感じたら、どのようなことでも医師に報告してください。
- 【注意する人】
- とくに、膵炎を発症する可能性のある子供には慎重に用いるようにします。
- 注意が必要なケース..膵炎を発症する可能性のある子供、腎臓病、子供、高齢の人など。
【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 同じ作用のエムトリシタビンといっしょに飲んでも意味がありません。このため、エムトリシタビンを含有するエムトリバ、ツルバダ、コムプレラ、スタリビルドとは併用しません。
- ニューモシスチス肺炎治療薬のST合剤(バクタ)との併用により、副作用が強まるおそれがあります。
- 抗ウイルス薬のザルシタビン(ハイビッド)との併用療法は避けることが望ましいです。かえって効果が弱くなってしまうためです。
【使用にあたり】
- 決められた飲み方を守ってください。規則正しい服用は、薬の血中濃度を一定に保ち、ウイルスに増殖する“すき”を与えないために重要です。飲み忘れにも十分注意しましょう。服薬率が95%を割ると、薬の効きにくい耐性ウイルスの出現が多くなるという報告があります。
- 通常、1日量300mgを1日1回または2回(150mg×2)に分けて服用します。食事と関係なく飲めますが、決められた時間にしてください。
- もし飲み忘れた場合は、気が付いたときに直ちに服用してください。ただし、次に服用する時間が近い場合は、1回分は抜かし次の通常の服用時間に1回分を服用してください。2回分を一度に飲んではいけません。
- 自分だけの判断で量を変えたり、飲むのをやめてはいけません。不用意な減量や中断は、薬の効き目を悪くし、治療を困難にします。
- 【検査】
- 効果判定のため、免疫細胞(CD4)の増加とウイルス量の低下を調べます。さらに、副作用をチェックするため、いろいろな検査を受けなければなりません。とくに、血液と膵臓の検査が重要です。
【妊娠・授乳】
- 妊娠中の服用については、医師とよく相談してください。この薬により赤ちゃんの感染リスクが減らせますが、安全性が確立されているわけではありません。治療上の有益性が催奇形性などの危険性を上回ると判断された場合にのみ使用されます。
- 妊娠中に推奨されるのは、主要薬はプロテアーゼ阻害薬のロピナビル・リトナビル配合剤(カレトラ)、基礎薬としてヌクレオシド系のジドブジン・ラミブジン配合剤(コンビビル)の組み合わせです。
- 授乳は避けてください。乳汁中に薬が移行するかもしれません。また、母乳中のエイズウイルスから赤ちゃんが感染するおそれがあります。
- 【食生活】
- エイズウイルスの感染力は非常に弱く、日常の社会的接触であれば感染することはありません。ただし、性的接触により感染の可能性があります。この薬を飲み始めても、その点には留意が必要です。
【備考】
- エイズの薬は、大きく、逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬、インテグラーゼ阻害薬の3系統に分かれます。逆転写酵素阻害薬は、さらにヌクレオシド系(この薬)と非ヌクレオシド系に分かれます。作用増強と耐性回避のため、これらを組み合わせる多剤併用療法が一般的です。現在、初回治療として推奨されるのは、2種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬をベースドラッグとし、これにキードラッグの非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬と低用量リトナビル、またはインテグラーゼ阻害薬のいずれかを加える3剤ないし4剤併用療法です。このような多剤併用療法によりエイズの予後はたいへん改善し、より長生きできるようになりました。
- 免疫力が低下しエイズを発症すると、別のいろいろな感染症にかかりやすくなります。サイトメガロウイルス、カンジダ、ニューモシスチス(カリニ)・・ふつうなら感染しにくい微生物にまで侵されてしまうのです。このような2次感染症に対しては、抗菌薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬などで強力な治療をおこないます。
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効能 |
下記疾患における他の抗HIV薬との併用療法
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用法 |
通常、成人は他の抗HIV薬と併用して、ラミブジンとして1日量300mgを1日1回又は2回(150mg×2)に分けて経口服用する。なお、年齢、体重、症状により適宜増減する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
吐き気、食欲不振、下痢、腹痛など胃腸症状がみられます。重い副作用として、念のため気を付けたいのは、血液障害と膵炎、それと乳酸アシドーシスです。皮下出血など出血傾向、激しい腹痛、動悸、過呼吸、手足の震えといった症状に注意してください。
また、多くはありませんが、免疫機能の回復に伴う免疫再構築症候群が報告されています。炎症反応の発現により、体にさまざまな異変を生じる可能性があります。いつもと違う症状があらわれたら どのようなことでも医師に報告してください。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 血液障害、貧血..発熱、のどの痛み、だるい、皮下出血(血豆・青あざ)や歯肉からの出血、息切れ、動悸、めまい、顔色が悪い。
- 膵炎..吐き気、吐く、持続的な激しい腹痛、上腹部または腰から背中の激痛、発熱。
- 乳酸アシドーシス・肝腫大(脂肪肝)..吐き気、吐く、腹痛、下痢、けん怠感、息苦しい、息が荒い、筋肉痛、手足の震え・脱力、歩けない、動悸、急激な体重減少、意識の低下、右上腹部の張り・圧迫感。
- 意識障害、けいれん..混乱・もうろう状態、異常行動、取り乱す、意識低下、筋肉のぴくつき、全身けいれん(ふるえ、白目、硬直)。
- 心不全..疲れやすい、息苦しい、息切れ、むくみ、急な体重増加、痰、ゼィゼィ、咳、頻脈。
【その他】
- 吐き気、吐く、食欲不振、腹痛、下痢
- 頭痛、めまい、けん怠感
- 不安感・イライラ感、気分が落ち込む
- 手足のしびれ、ふるえ、筋肉痛
- 高脂血症、リポジストロフィー(手足が痩せ、胸や肩・腹部が太る)
- 発疹、じん麻疹、かゆみ
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