 概説 |
エイズウイルスの増殖を抑えるお薬です。エイズの治療に用います。 |
 作用 | 
- 【働き-1】
- エイズは、エイズウイルスの感染により起こる病気です。エイズウイルスは血液や精液を介してうつります。体に入ったエイズウイルスは、免疫系の細胞（白血球の一種のCD4リンパ球）を破壊しながら、徐々に増殖していきます。そして、体の免疫力がしだいに低下し、数年から十数年後に発症します。重い感染症にかかったり、リンパ腫などの悪性腫瘍に侵されやすくなり命にかかわることもあるのです。
このお薬は、エイズウイルスの増殖をおさえる抗ウイルス薬です。プロテアーゼ阻害薬の部類で、ウイルスの成熟を阻止する作用があります。ウイルスが減るとともに、免疫力が回復し、病状が改善します。また、エイズの発症や進行を遅らせ、長生きにもつながるのです。ただし、エイズウイルスを完全に死滅させることは困難です。したがって、生涯にわたり治療を続けなければなりません。
- ※エイズ：後天性免疫不全症候群
- ※エイズウイルス：ヒト免疫不全ウイルス（ＨＩＶ）
- 【働き-2】
- ブースターとしても用いられます。主要薬の血中濃度を高め、その作用を増強する役目です。おもに同系のプロテアーゼ阻害薬の作用増強・維持を目的に低用量を併用します。このような使い方を「リトナビルブースト」と呼んでいます。
- 【薬理】
- エイズウイルスのプロテアーゼという酵素の働きを阻害することで、細胞に感染性をもつ成熟ウイルスへの移行を阻止します。これにより、新たな細胞への感染が起こらなくなり、エイズウイルスの増殖が抑制されます。このような作用から「プロテアーゼ阻害薬」と呼ばれています。
一方、リトナビルブーストについては、抗ウイルス作用とは関係ありません。強力なＣＹＰ３Ａ阻害作用に基づくものです。すなわち、多くの薬剤の代謝・分解にかかわる酵素‘ＣＹＰ３Ａ’を阻害することにより、併用薬剤の分解を抑制しその血中濃度を高く維持するのです。いわゆるピルブースター（薬物動態学的増強因子）として働きます。
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 特徴 |
- プロテアーゼ阻害薬（PI）に分類される抗ウイルス薬です。略号はＲＴＶ。抗ウイルス作用が強く、高い有効率が得られます。ただ難点とて、脂質代謝異常をはじめとする副作用が多いこと、薬物間相互作用による併用制限がやっかいなことなどがあげられます。なかでも、この薬は開発が古く、用法が煩雑なこともあり、治療薬としてはあまり使用されなくなりました。
- 抗ウイルス効果よりも、ブースターとして汎用されています（理知なピルブースト）。ブースターとして併用が推奨されるのは、プロテアーゼ阻害薬のサキナビル（インビラーゼ）、ダルナビル（プリジスタ）、ホスアンプレナビル（レクシヴァ）、アタザナビル（レイアタッツ）などです。カレトラ配合錠には配合済みです。
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注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えてください。
- 妊娠中もしくはその可能性のある人、また授乳中の人は申し出てください。
- 別に薬を飲んでいる場合は、必ず医師に報告しておきましょう。
- 注意事項や副作用について十分説明を受けてください。薬の性質をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。
- 体に異常を感じたら、どのようなことでも医師に報告してください。
- 【注意する人】
- 肝臓の悪い人は薬の代謝が遅れがちです。副作用に注意するなど慎重に用いるようにします。血友病の人は出血の増加に注意が必要です。
- 注意が必要なケース．．肝臓病、血友病、心臓病、高齢の人など。
- 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- いろいろな薬と相互作用を起こしやすい性質があります。飲み合わせによっては、薬の副作用がでやすくなります。逆に効果が弱くなってしまうこともあります。服用中の薬は必ず医師に報告しておきましょう。また、別の病院で診察を受けるときも、この薬を飲んでいることを伝えてください。
- 併用薬の血中濃度を大幅に上昇させることがあります。とくに影響が大きい次の薬剤との飲み合わせは禁止です。不整脈の薬（キニジン、ベプリコール、タンボコール、プロノン、アンカロン）、安定薬のピモジド（オーラップ）やブロナンセリン（ロナセン）、ルラシドン（ラツーダ）、鎮痛薬のピロキシカム（フェルデン）やアンピロキシカム（フルカム）、片頭痛の薬のエルゴタミン（クリアミン）、エレトリプタン（レルパックス）、子宮収縮止血薬のメチルエルゴメトリン（パルタン）、勃起不全の薬のバルデナフィル（レビトラ）、肺高血圧症治療薬のシルデナフィル（レバチオ）やタダラフィル（アドシルカ）、降圧薬のアゼルニジピン（カルブロック、レザルタス）、抗菌薬のリファブチン（ミコブティン）、一部の抗不安薬や睡眠薬（セルシン、メンドン、ユーロジン、インスミン、ダルメート、ハルシオン）、抗血栓薬のリバーロキサバン（イグザレルト）、高脂血症治療薬のロミタピド（ジャクスタピッド）、白血病治療薬のベネトクラクス（ベネクレクスタ）（漸増期）、肺高血圧症治療薬のリオシグアト（アデムパス）・・これらとの併用により、重い副作用を起こす危険性があります。
- 痛風やベーチェト病の治療に用いるコルヒチンの血中濃度を上昇させ中毒をまねくおそれがあります。とくに肝臓病や腎臓病のある人は、併用を避けなければなりません。
- 逆に、抗真菌薬のボリコナゾール（ブイフェンド）の血中濃度が低下し作用が減弱するおそれがあります。このため、ボリコナゾールとは併用禁止です。ほかにも、抗血栓薬や抗不整脈薬、免疫抑制薬など注意が必要な薬がたくさんありますから、飲み合わせについては医師の指示どおりにしてください。
- セイヨウオトギリソウ（セント・ジョーンズ・ワート）を含む健康食品はとらないでください。この薬の作用を弱めてしまうかもしれません。
【使用にあたり】
- 決められた時間に正確に飲んでください。規則正しい服用は、薬の血中濃度を一定に保ち、ウイルスに増殖する“すき”を与えないために重要です。飲み忘れにも十分注意しましょう。抗エイズ薬の服薬率が９５％を割ると、薬の効きにくい耐性ウイルスの出現が多くなるという報告があります。
- 通常、少量より開始し、副作用に気をつけながら徐々に増やしていきます。そして、維持量として１回６錠またを１日２回食後に服用します。なお、ブースターとしもて用いる場合は、低用量（100〜200mg）を、他の抗ウイルス薬と併用します。
- 噛んだり砕いたりしないで、多めの水でそのまま飲み込んでください。飲みにくいときは、医師と相談してみるとよいでしょう。
- もし飲み忘れた場合は、できるだけ早く服用してください。ただし、次に飲む時間が近い場合は、１回分は抜かし次の通常の時間に１回分を服用してください。２回分を一度に飲んではいけません。
- 自分だけの判断で量を変えたり、飲むのをやめてはいけません。不用意な減量や中断は、薬の効き目を悪くし、治療を困難にします。
- 【検査】
- 効果判定のため、免疫細胞（CD4）の増加とウイルス量の低下を調べます。さらに、副作用をチェックするため、いろいろな検査を受けなければなりません。とくに、血液と肝臓の検査が重要です。目の検査もおこないます。
【妊娠・授乳】
- 妊娠中の服用については､医師とよく相談してください。この薬を飲むことで、赤ちゃんの感染リスクを減らせる可能性があります。なお、妊娠中に推奨されるのは、主要薬はプロテアーゼ阻害薬のロピナビル・リトナビル配合剤（カレトラ）、基礎薬としてヌクレオシド系のジドブジン・ラミブジン配合剤（コンビビル）の組み合わせです。
- 授乳は避けてください。乳汁中に薬が移行すると考えられます。また、母乳中のエイズウイルスにより赤ちゃんが感染するおそれがあります。
- 【食生活】
- エイズウイルスの感染力は非常に弱く、日常の社会的接触であれば感染することはありません。ただし、性的接触により感染の可能性があります。この薬を飲み始めても、その点には留意が必要です。
【備考】
- エイズの薬は、大きく、逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬（この薬）、インテグラーゼ阻害薬の３系統に分かれます。逆転写酵素阻害薬は、さらにヌクレオシド系と非ヌクレオシド系に分かれます。作用増強と耐性回避のため、これらを組み合わせる多剤併用療法が一般的です。現在、初回治療として推奨されるのは、２種類のヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬をベースドラッグとし、これにキードラッグの非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬、プロテアーゼ阻害薬と低用量リトナビル（この薬）、またはインテグラーゼ阻害薬のいずれかを加える３剤ないし４剤併用療法です。このような多剤併用療法によりエイズの予後はたいへん改善し、より長生きできるようになりました。
- 免疫力が低下しエイズを発症すると、別のいろいろな感染症にかかりやすくなります。サイトメガロウイルス、カンジダ、ニューモシスチス（カリニ）・・ふつうなら感染しにくい微生物にまで侵されてしまうのです。このような２次感染症に対しては、抗菌薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬などで強力な治療をおこないます。
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効能 |
HIV感染症 |
用法 |
通常、成人はリトナビルとして1回600mg(本剤6錠)を1日2回食後に経口服用する。ただし、服用初日は1回300mgを1日2回、2日目、3日目は1回400mgを1日2回、4日目は1回500mgを1日2回、5日目以降は1回600mgを1日2回食後に経口服用する。服用に際しては、必ず他の抗HIV薬と併用すること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
効果が高い反面、いろいろな副作用がでやすいです。あわてないよう、事前に医師から十分説明を受けておきましょう。軽い副作用の場合、治療を優先しなければならないことも多いです。
多くみられるのは、吐き気、嘔吐、下痢や腹痛など胃腸症状です。下痢が続くと脱水を起こしますので、ひどければ早めに受診してください。長期服用では、高脂血症やリポジストロフィーなど脂質代謝異常もあらわれやすくなります。
重い副作用として、高血糖や糖尿病、肝障害、けいれん、過敏症などの報告があります。血友病のある人は、出血の発現にも注意してください。さらに、免疫機能の回復に伴う免疫再構築炎症反応症候群として 体にさまざまな異変を生じる可能性があります。いつもと違う症状があらわれたら、どのようなことでも医師に報告してください。
【重い副作用】 ．．めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 錯乱、けいれん．．わけが分からない、混乱、意識の乱れ、手足の震え、けいれん。
- 高血糖、糖尿病．．異常にのどが渇く、水をがぶ飲み、多尿、頻尿、体重増加または減少。
- 意識障害、けいれん．．混乱・もうろう状態、異常行動、取り乱す、意識低下、筋肉のぴくつき、全身けいれん（ふるえ、白目、硬直）。
- 脱水．．下痢や嘔吐が続く、だるい。
- 肝臓の障害．．だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
- 重い過敏症．．発疹、じんま疹、全身発赤、顔や口・喉や舌の腫れ、咳き込む、ゼーゼー息苦しい。
- 重い皮膚・粘膜障害．．発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 血友病の症状悪化．．皮下出血、関節内出血など出血事象の増加、脳内出血。
【その他】
- 吐き気、吐く、下痢、腹痛、食欲不振、味覚異常
- 異常感覚、口周囲の感覚異常
- 頭痛、めまい、けん怠感、異常感覚
- 発疹、じん麻疹、かゆみ
- 高脂血症、リポジストロフィー（手足や顔が痩せ、胸や肩・腹部が太る）
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