概説 |
胎児へのトキソプラズマ感染を減らすお薬です。トキソプラズマに初感染した妊婦さんに用います。 |
作用 | 
- 【働き】

- トキソプラズマは原虫の仲間です。通常、人に感染しても、ほとんど症状はなく、あっても風邪のような症状で済みます。ただし、妊婦さんは別です。妊娠中に初感染し、さらに胎盤を通過し胎児にまで感染が及ぶと、死産や流産だけでなく、水頭症、視力障害、精神・運動機能障害など 胎児に重大な障害を残すことがあるのです。‘先天性トキソプラズマ症’です。
このお薬は、トキソプラズマ原虫に有効な抗トキソプラズマ原虫薬です。妊娠中にトキソプラズマに初感染したとき、またはその疑いが強い場合に使います。治療目標は、胎児へのトキソプラズマ感染を防ぎ、先天性トキソプラズマ症の発症を抑制することです。治療にもかかわらず、胎児が感染した場合でも、重症度の低下が期待できます。

- 【薬理】

- トキソプラズマ原虫のタンパク合成を阻害すなどして抗トキソプラズマ活性を示すとされます。

- 【臨床試験】

- 妊娠中のトキソプラズマ初感染率はきわめて低いこともあり、国内できちんとした比較試験は行われていません。いくつかの海外の試験から、トキソプラズマに感染した妊婦さんに、全妊娠期間投与することにより、60%以上の割合で胎児への感染を防げるのではと推定されています。
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特徴 |
- 有効成分のスピラマイシンは、抗菌活性に加え、抗トキソプラズマ活性も持つ16員環マクロライド系抗生物質です。
- トキソプラズマ症に関連する国内初の治療薬になります。先天性トキソプラズマ症に使えるよう、産科婦人科学会の要望により開発されました。なお、同誘導体のスピラマイシン酢酸エステル(アセチルスピラマイシン錠)が古くから代用されてきましたが、こちらは抗菌薬として承認されており、トキソプラズマに対する正式な効能はありません。
- 世界的に使用実績が豊富で、国内外で妊娠中にトキソプラズマに初感染した場合の標準的治療薬です。胎児への感染を減らし、また重症度の軽減が期待できます。
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注意 |
 【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 服用中の薬を医師に教えてください。

- 【注意する人】

- 心臓病があれば、心電図検査を実施するなど慎重に用います。この薬の影響で不整脈(QT延長)を起こすおそれがあるためです。
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 心電図のQT間隔を延長しやすい薬剤と併用する場合は、QT延長さらには不整脈の発現に注意しなればなりません。たとえば、プロカインアミド(アミサリン)、ジソピラミド(リスモダン、ノルペース)、シベンゾリン(シベノール)、ピルメノール(ピメノール)、アミオダロン(アンカロン)、ソタロール(ソタコール)などがこれに当たります。
- パーキンソン病治療薬のレボドパ・カルビドパ配合錠(メネシット、ネオドパストン)の作用を減弱させる可能性があります。
 【使用にあたり】
- 妊娠成立後のトキソプラズマ初感染が疑われる場合、速やかに治療を開始します。服用期間は、原則、分娩までの全妊娠期間中です。
- 決められた飲み方を守ってください。通常、1回2錠(300万単位)を1日3回服用します。食事と関係なく飲めますが、食前か食後かは指示通りにしてください。
- 飲み忘れた場合は、気付いたときにすぐ飲んでください。ただし、次の服用時間が近ければ、1回分抜かし、次の時間に1回分飲んでください。2回分を一度に飲んではいけません。

- 【検査】

- トキソプラズマ初感染の診断のため、トキソプラズマ抗体検査や問診などを行います。
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効能 |
先天性トキソプラズマ症の発症抑制 |
用法 |
通常、妊婦は1回2錠(スピラマイシンとして300万国際単位)を1日3回経口服用する。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用は少ないほうです。ときに、吐き気や腹痛、下痢などの胃腸症状があらわれます。軽ければたいてい心配ないですが、ひどい症状が続くときは早めに受診してください。
そのほか重い副作用として、不整脈、大腸炎、肝障害、皮膚障害などの報告があります。これらは、きわめてまれな副作用ですが、もともと心臓病など持病のある人、他の薬と飲み合わせているときなど念のため注意が必要です。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- 重い不整脈..動悸、頻脈(120/分以上)、徐脈(50/分以下)、胸の痛みや違和感、胸苦しい、だるい、めまい、立ちくらみ、気が遠くなる、失神。
- 大腸炎..激しい腹痛、頻回な下痢、発熱、血液便、下血。
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
 【その他】
- 腹痛、吐き気、嘔吐、下痢
- 味覚異常
- 発疹、じん麻疹、かゆみ
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