概説 |
禁煙を助けるお薬です。 |
作用 | 
- 【働き】

- 禁煙に伴うイライラ、気分の落ち込み、集中できないといった離脱症状をおさえ、タバコに対する欲求を軽減します。さらに、喫煙による満足感を抑制し、喫煙願望を弱めます。これらの作用から、禁煙が楽にでき成功率も高まります。

- 【薬理】

- 喫煙の快感は、ニコチンによるドパミン放出によると考えられています。この薬は、脳内のニコチン受容体(α4β2ニコチン受容体)と強く結合し、ニコチンの結合を妨げます。そして、受容体への刺激作用と拮抗作用の2つの作用を示します。
刺激作用は部分的でニコチンそのものより弱いです。ニコチン受容体を軽く刺激することで少量のドパミンを放出させ、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する欲求を軽減します。ドーパミンの放出量は、ニコチンの半分くらいです。
拮抗作用は、文字通りニコチンと拮抗し、その作用を弱めます。ニコチンによるドパミン放出が抑制されるので、禁煙中にタバコを吸っても今ひとつスッキリせず、喫煙による満足感が得られにくくなるというわけです。
 【臨床試験】
- 国内でプラセボ(にせ薬)を対照とした二重盲検比較試験がおこなわれています。参加者は禁煙を希望する喫煙者で、治療期間は3カ月間(12週間)です。その結果、この薬を服用した人達の3カ月目の禁煙率は約65%(85人/130人)でした。一方のプラセボ(にせ薬)のグループでは40%(51人/129人)でした。この薬を飲んだほうが、禁煙の成功率が高くなることが確認されました。
- 1年後の禁煙率では35%(45人/130人)と23%(30人/129人)と、その差は縮まりました。この薬でせっかく禁煙できても、その後に脱落してしまうという人が少なくないことが分かりました。禁煙の維持には、禁煙に対する意志や目的意識を持つことが重要なポイントであることが示されました。
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特徴 |
- 国内初の飲む禁煙補助薬です。今までのニコチンパッチやニコチンガムとは違いニコチンを含みません。作用の仕組みも異なり、その作用機序から「α4β2ニコチン受容体部分作動薬」と呼ばれています。
- 非ニコチン製剤ですので、治療の仕方も従来の「ニコチン置換療法」とは違います。いきなり禁煙するのではなく、飲み始めの1週間に服用量を徐々に増やしながら、その間に喫煙本数を減らしていくといった飲み方です。
- 因果関係は不明ですが、アメリカの食品医薬品局(FDA)が精神症状に関する注意を呼びかけています。この薬による治療中に抑うつ気分や不安感を生じたり、さらに衝動的な行動に走るなど精神的な変調が報告されているようです。
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注意 |
 【診察で】
- 腎臓病など持病のある人は、必ず医師に報告してください。
- 妊娠中の人は、医師にお伝えください。
- 別に薬を飲んでいる場合は、医師に伝えておきましょう。

- 【注意する人】

- 統合失調症や躁うつ病など精神疾患のある人は、病状の悪化に注意するなど慎重に用いるようにします。また、腎臓の悪い人は用量を少な目にすることがあります。
- 注意が必要なケース..精神疾患(統合失調症、躁うつ病、うつ病等)、腎臓病のある人、妊娠中の女性
 【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 原則として、他のニコチン製剤とはいっしょに用いません。併用すると、副作用が出やすくなります。
- 腎臓の悪い人は、胃の薬のシメチジン(タガメット)との併用に注意が必要です。
- この薬と直接関係はありませんが、禁煙または喫煙の再開により他の併用薬の代謝に影響し、その薬の血中濃度が変動するおそれがあります。影響が心配される例として、喘息の薬のテオフィリン(テオドール)、血栓の薬のワルファリン(ワーファリン)、血圧の薬のプロプラノロール(インデラル)、インスリン注射液などがあげられます。
 【使用にあたり】
- 医師の指導のもと、禁煙スケジュールに従って治療をすすめてください。目的意識を持ち、禁煙の重要性を認識したうえで開始するようにしましょう。
- 治療中に抑うつ気分や不安、焦燥、興奮、攻撃性、敵意など精神的変調があらわれた場合は、いったん服用を中止し、すみやかに医師に連絡してください。
- 錠剤には2種類あります。低用量の0.5mg錠とその倍量の1mg錠です。専用のスタート用パックが用意されていますので、迷うことはないと思います。
- 禁煙開始予定日の1週間前から飲み始めます。はじめの3日間は、0.5mg錠を1日に1回だけ飲みます。朝昼夕は問いませんが、いずれかの食後にしてください。次の4日間は、1日2回朝夕食後に増やします。1週間目は、徐々に喫煙本数を減らしていくようにしましょう。
- 2週目以降は、さらに増量し1mg錠を1日2回朝夕食後に服用します。もうタバコは吸わないでください。禁煙のスタートです。治療期間は3カ月間(12週間)を一区切りとします。
- 3カ月間の治療で禁煙に成功した人は、長期間の禁煙をより確実にするために、さらに3カ月間延長して服用を続けることができます。

- 【食生活】

- 眠気やめまいを起こすことがあります。また、意識障害から自動車事故に至った事例が報告されています。車の運転など危険を伴う機械の操作は絶対にしないでください。

- 【備考】

- 処方してもらうには、医師の診察が必要です。禁煙治療施設として届出された保険医療機関において、一定の条件が満たされれば保険も効きます。喫煙期間やニコチン依存度、禁煙意思などがチェックされ、保険適用の条件となります。
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効能 |
ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助 |
用法 |

- 【用法】

- 通常、成人はバレニクリンとして第1〜3日目は0.5mgを1日1回食後に経口服用、第4〜7日目は0.5mgを1日2回朝夕食後に経口服用、第8日目以降は1mgを1日2回朝夕食後に経口服用する。なお、本剤の服用期間は12週間とする。
 【注意】
- 本剤は原則として、他の禁煙補助薬と併用しないこと。
- 患者が禁煙を開始する日を設定すること。その日から1週間前に本剤の投与を始めること。
- 本剤による12週間の禁煙治療により禁煙に成功した患者に対して、長期間の禁煙をより確実にするために、必要に応じ、本剤をさらに延長して投与することができる。その場合にはバレニクリンとして1mgを1日2回、朝夕食後に12週間投与すること。
- 最初の12週間の投与期間中に禁煙に成功しなかった患者や投与終了後に再喫煙した患者で、再度本剤を用いた禁煙治療を実施する場合には、過去の禁煙失敗の要因を明らかにし、それらの要因への対処を行った後のみに、本剤の投与を開始すること。
- 本剤の忍容性に問題がある場合には、0.5mg1日2回に減量することができる。
- 重度の腎機能障害患者(クレアチニン・クリアランス推定値:30mL/分未満)の場合、0.5mg1日1回で投与を開始し、その後必要に応じ、最大0.5mg1日2回に増量すること。
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
一番多いのは、吐き気や鼓腸、便秘などの胃腸症状です。頭痛も10人に1人くらいの割合で起こります。いずれも軽いものが多く、重症化することはまずないと思いますが、気になるときは医師とよく相談してみましょう。
精神的な変調もみられます。不眠、異常な夢、不安感、イライラ、怒りっぽい、気分の落ち込みといった症状です。ただし、このような精神症状は、薬とは関係なく、禁煙そのものにより発現することが少なくありません。つらいことは遠慮なく医師に話してください。
そのほか特異なケースとして、運転中に突然意識がなくなり、自動車事故に至った例が複数回発生しています。また海外では、重い抑うつや焦燥、興奮、行動変化を生じ、さらには攻撃的行動や衝動的行為に至った事例も報告されているようです。因果関係ははっきりしませんが、アメリカの食品医薬品局(FDA)では、重大な結果をまねくおそれがあるとして注意喚起しています。
 【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 重い皮膚・粘膜障害..発疹、発赤、水ぶくれ、うみ、皮がむける、皮膚の熱感や痛み、かゆみ、唇や口内のただれ、のどの痛み、目の充血、発熱、全身けん怠感。
- 血管浮腫..顔や唇、舌、喉がひどく腫れる、飲み込みにくい、息がしにくい、手足が腫れる。
- 意識障害..ふるえ、めまい、意識低下、突然の意識消失
- 肝臓の重い症状..だるい、食欲不振、吐き気、発熱、発疹、かゆみ、皮膚や白目が黄色くなる、尿が茶褐色。
 【その他】
- 吐き気、鼓腸、便秘、食欲不振
- 頭痛、めまい
- 不眠、眠気、異常な夢、不安感、イライラ、怒りっぽい、気分の落ち込み
- 思考異常、敵意、攻撃的行動
- 動悸、不整脈、狭心症
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