おくすり110番
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成分(一般名) フェンタニル クエン酸塩(口腔用)
製品例 アブストラル舌下錠100μg~200μg~400μg、イーフェンバッカル錠50μg~100μg~200μg~400μg~600μg~800μg ・・その他(ジェネリック) & 薬価
区分 合成麻薬/強オピオイド/口腔粘膜吸収癌性疼痛治療剤

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   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
概説 がんの痛みを抑えるお薬です。急な“突出痛”の治療に用います。
作用

【働き】

激しい痛みは心身を疲弊させ、平穏な日々を送るのに何よりの障害となります。このような痛みを無理にがまんする必要はありません。昔と比べ、痛みに対する理解が深まり、その治療も系統的にきちんと行われるようになりました。

このお薬は、速効性のがん性疼痛治療薬です。口にふくむと、薬剤が口腔粘膜からすぐに吸収され、がんの痛みをすばやく取り去ります。このため、急な痛みの治療に最適です。基本的なオピオイド鎮痛薬による疼痛治療中に一時的に増強する“突出痛”の治療に用います。

【薬理】

中枢や末梢に広く分布するオピオイド受容体の主要な生理機能として、痛みの神経伝達経路を抑制方向に調整する働きがあげられます。つまり、オピオイド受容体が刺激を受けると、痛みを伝える神経の侵害刺激伝達が直接抑制され、また別の神経系統の下行性抑制系神経を介して間接的にも痛みが抑制されるのです。

この薬は、そのオピオイド受容体と結合することで、強力な鎮痛効果を発揮します。作用点であるオピオイド受容体にはいくつかの種類が知られていますが、この薬はとくにオピオイドμ1受容体への親和性が高いのが特徴です。消化管運動抑制や鎮静作用を示すμ2受容体への親和性が低いので、便秘や眠気の副作用が比較的少ないです。このような特性から、専門的に選択的オピオイドμ受容体作動性の強オピオイド鎮痛薬ということができます。

【臨床試験-1】

アブストラル舌下錠の突出痛に対する効果をプラセボ(にせ薬)と比較する臨床試験が行われています。参加したのは、オピオイド鎮痛薬により痛みがコントロールされているものの、ときどき突出痛があらわれる がんの患者さん37人です。まず試験の前に、有効用量(100μg〜800μg)を患者さんごとに決定しておきます。その後、9回の突出痛に対し、有効用量のこの薬6回分とプラセボ3回分を患者さんに渡し、突出痛出現時に決められた順番で頓用してもらいます。どれがプラセボなのか患者さんには知らせません。そして、服用前と服用30分後の痛みの強度VAS値(mm)を患者日誌に記載してもらい、その下げ幅を比較するのです。

その結果、この薬の疼痛強度の下げ幅は平均で41.1、プラセボでは33.9でした。この薬のほうがプラセボよりも下げ幅が大きく、がんの突出痛に対する有効性が証明されたわけです。なお、この試験で採用されたVAS値は、痛みの強さを測る“ものさし”のようなもので、100mmの直線上でまったく痛みのない状態を0mm、耐えられないほどの最大の痛みを100mmとして、現在の痛みが直線上のどこにあるかを患者さんに示してもらうことで痛みを数値化する評価法です。数値が大きいほど痛みが強く、その下げ幅(変化量)が大きいほど鎮痛効果が高いことをあらわします。

【臨床試験-2】

イーフェンバッカル錠についても同様の試験が行われています。がんの突出痛に対する効果をプラセボ(にせ薬)と比較する臨床試験です。参加したのは、オピオイド鎮痛薬によりコントロールされている突出痛のある患者さん72人です。まず試験の前に、有効用量の錠剤(錠50μg〜錠800μg)を患者さんごとに決定しておきます。その後、9回の突出痛に対し、有効用量のこの薬6錠とプラセボ3錠の計9錠を患者さんに渡し、決められた順番で頓用してもらいます。どれがプラセボなのか患者さんには知らせません。そして30分後の痛みの強度を患者日誌に記載してもらい、その疼痛強度の変化量を比較するのです。その結果、この薬の服用30分後の疼痛強度変化量は2.4、プラセボでは2.0でした。この薬のほうがプラセボよりも変化量が大きく、がんの突出痛に対する有効性が証明されたわけです。
特徴
  • フェンタニルを有効成分とするオピオイドと呼ばれる鎮痛薬です。そのなかでもとくに強力な麻薬系の強オピオイド鎮痛薬になります。有効限界がない完全作動薬とされ、用量増加とともに作用も増強します。WHO方式疼痛治療法で第3段階に位置づけられ、中等度から高度の疼痛に適します。
  • 同類の代表薬であるモルヒネをしのぐ鎮痛効果が期待できます。モルヒネとの効力比は1:100くらいです。また、モルヒネに比べ、便秘や眠気、うとうと、せん妄などの副作用が少ないです。また、脂溶性が高く、おもに肝臓で代謝されるので、腎臓の悪い人でも比較的安全に使用できます。
  • 即効的に鎮痛効果を発揮する速放製剤です。すばやい効果から、定時薬使用中に一時的に増強する“突出痛”に適応します。専門的にいうレスキュー薬、いいかえれば臨時補助薬になるわけです。
  • 現在、舌下錠とバッカルの2種類の口腔粘膜吸収製剤が販売されています。舌下錠は舌の下に置き、バッカル錠は歯茎と頬のあいだに入れます。口腔粘膜からフェンタニルが直接吸収され、すばやい鎮痛効果を発揮するわけです。なお、同一成分の貼り薬にデュロテップMTパッチやワンデュロパッチ、フェントステープなどがあります。こちらは持効性なので持続痛をおさえる定時薬として用いられます。
注意
【診察で】
  • 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
  • 別に薬を飲んでいる場合は、その薬を医師に教えてください。
  • 具体的な使用方法や注意事項、副作用について十分説明を受けてください。その内容をよく理解したうえで治療にあたりましょう。

【注意する人】

慢性肺疾患など呼吸器系に病気のある人は、呼吸抑制に注意するなど慎重に用いる必要があります。口内に炎症や傷があると、血中濃度が高まり、副作用がでやすくなるので注意してください。

  • 注意が必要なケース..慢性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎)、喘息、心臓病、肝臓病、腎臓病、頭蓋内圧亢進、意識障害などのある人、口内炎・口内出血、口内に傷がある場合、高齢の人など。

【飲み合わせ・食べ合わせ】
  • 飲酒量低減薬のナルメフェン(セリンクロ)とは併用できません。ナルメフェンによりこの薬の鎮痛作用が減弱するためです。通常、この薬を優先しますが、ナルメフェン中止後1週間以内は避けなければなりません。ナルメフェン服用中に、この薬が必要になった場合は、少なくとも1週間前にナルメフェンを中断する必要があるわけです。
  • 安定薬など脳の神経をしずめる薬と併用すると、いろいろな副作用がでやすくなります。併用のさいは、眠気やふらつき、過度の鎮静、呼吸抑制、低血圧などに留意してください。
  • ある種の薬と飲み合わせると、この薬の代謝が遅れ作用が強まるおそれがあります。たとえば、抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、抗菌薬のクラリスロマイシン(クラリス)、血圧と心臓の薬のジルチアゼム(ヘルベッサー)、抗うつ薬のフルボキサミン(デプロメール、ルボックス)などに注意が必要です。
  • この薬の作用を弱める薬剤には、抗けいれん薬のカルバマゼピン(テグレトール)やフェノバルビタール(フェノバール)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、抗結核薬のリファンピシン(リファジン)、ステロイド薬のデキサメタゾン(デカドロン)などがあります。逆に併用後に中止すると、この薬の作用が増強するおそれがあります。
  • 抗うつ薬のSSRI(ルボックス、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ)やSNRI(トレドミン、サインバルタ)、あるいは抗パーキンソン病薬のセレギリン(エフピー)などとの併用により、セロトニン症候群という副作用がでやすくなる可能性があります。併用のさいは体調の変化に注意が必要です。
  • 飲酒は控えてください。めまいや眠気、呼吸抑制などの副作用がでやすくなります。

【使用にあたり】
  • “突出痛”に対処する臨時追加薬いわゆるレスキュー薬です。つまり、別の定時薬で持続痛がコントロールされているなか、急に強い痛みあらわれたときに頓用するわけです。
  • 用法・用量は医師が決めますので指示どおりにしてください。通常は少量で開始し、効き具合をみながらちょうどよい量に調整します。もし、痛みが残るようでしたら、遠慮なく医師に申し出てください。含量が異なる複数の製剤がありますので、必要に応じ一段階ずつ増量可能です。逆に、痛みは消失するものの、強い眠気に悩まされる場合は、減量の余地があるかもしれません。
  • 口腔粘膜吸収製剤ですから、飲み込んではいけません。具体的な使用方法や手順は、説明書をよく読みそれにならってください。
  • 口内の傷、口内炎、口内出血がみられたときは、すみやかに医師または薬剤師に連絡してください。口内に傷があると、血中濃度が高まり、副作用があらわれやすくなります。
  • 吸湿性があるので、使用直前に開封してください。開封したときに錠剤が割れたり、欠けたりしているときは、使用しないでください。
  • 痛み止めとして他人にあげてはいけません。用量調節後に不用となった未使用薬剤は病院または薬局に返却してください。また、何らかの理由で口から出してしまった薬は、放置せず、多量の水で洗い流すなど安全に処分してください。
  • 保管は、高温や湿気を避け、また子供の手が届かず目に入らない場所にしてください。子供が誤って口に入れた場合、過量投与となり命にかかわる危険性があります。取り扱いにはくれぐれも注意してください。
  • 以下はアブストラル舌下錠とイーフェンバッカル錠の一般的な使用方法です。効きかたには個人差がありますから、用法・用量は必ず医師の指示に従ってください。

【アブストラル舌下錠】
  • 舌下錠です。舌の下の奥に入れて自然に溶解させてください。そのまま飲み込んだり、なめたり、噛み砕いてはいけません。
  • 水なしで舌下してください。ただし、口内が乾燥している場合は、必要に応じて少量の水で口内を湿らせた後に使用してもかまいません。
  • 用量調節期間中は、1回の突出痛に対し1回分の舌下で効果不十分な場合、その30分以降に1回だけ追加使用することができます。追加するときは、1回目の用量を超えてはいけません。
  • 至適用量決定後は、2時間以上の間隔をあけ、1日に4回まで使用可能です。
  • 誤って飲み込んだ場合も1回の服用として、その分を追加しないでください。

【イーフェンバッカル錠】
  • バッカル錠です。上の奥歯の歯茎と頬の間に入れて自然に溶解させてください。連続して使用する場合は、刺激を避けるため、できるだけ左右の頬に交互に使用するとよいでしょう。
  • 割ったり、なめたり、噛んだり、最初から飲み込んではいけません。もし30分たっても一部が口内に残っている場合は、水で飲み込んでも問題ないです。
  • 口内が乾燥している場合は、必要に応じて少量の水で口内を湿らせた後に使用してもかまいません。
  • 用量調節期間中は、1回の突出痛に対し1回分で効果不十分な場合、その30分以降に1回だけ追加使用することができます。追加するときは、1回目の用量を超えてはいけません。
  • 至適用量決定後は、4時間以上の間隔をあけ、1日に4回まで使用可能です。
  • 医師の判断しだいですが、用量調節期は1回あたり左右に2錠ずつ計4錠まで使用可能です。ただし、用量調節後は、同量の規格に切り替えて1回1錠とすることが望ましいので、1回に複数錠を使用している場合は医師と相談してください。

【妊娠授乳】
  • おなかの赤ちゃんや生まれてくる赤ちゃんに影響するおそれがあります。妊娠中は、薬の有益性がリスクを上回る場合に限ります。
  • 母乳中へ薬が移行しますので、授乳は避けてください。

【食生活】
  • 昼間から眠りがち、意識がぼんやり、あるいは呼吸が弱いなど呼吸抑制がみられる場合は、直ちに医師に連絡してください。
  • 人によっては、眠気やめまいを起こします。車の運転をふくめ、危険をともなう機械の操作や作業は避けましょう。

【備考】

がん疼痛治療のお手本にWHO方式があります。痛みの強さを3段階に分け、段階的に鎮痛薬を選択する方法です。軽い痛みには、まず第1段として一般的な非オピオイド鎮痛薬(NSAIDs、アセトアミノフェン)を定時使用します。それで効果不十分な中くらいの痛みには、第2段階として弱オピオイド(コデイン、トラマドール)を追加します。さらに第3段階では、第1段階の薬剤に麻薬系の強オピオイド鎮痛薬(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル)を追加し定時使用します。定時薬使用中の突出痛に臨時に用いるのが即放性の強オピオイドいわゆるレスキュー薬です。
効能 強オピオイド鎮痛剤を定時投与中の癌患者における突出痛の鎮痛
用法

【アブストラル舌下錠】

通常、成人には1回の突出痛に対して、フェンタニルとして100μgを開始用量として舌下投与する。

用量調節期に、症状に応じて、フェンタニルとして1回100、200、300、400、600、800μgの順に一段階ずつ適宜調節し、至適用量を決定する。なお、用量調節期に1回の突出痛に対してフェンタニルとして1回100〜600μgのいずれかの用量で十分な鎮痛効果が得られない場合には、投与から30分後以降に同一用量までの本剤を1回のみ追加投与できる。

至適用量決定後の維持期には、1回の突出痛に対して至適用量を1回投与することとし、1回用量の上限はフェンタニルとして800μgとする。ただし、用量調節期の追加投与を除き、前回の投与から2時間以上の投与間隔をあけ、1日あたり4回以下の突出痛に対する投与にとどめること。

【イーフェンバッカル錠】

通常、成人には1回の突出痛に対して、フェンタニルとして50又は100μgを開始用量とし、上顎臼歯の歯茎と頬の間で溶解させる。

用量調節期に、症状に応じて、フェンタニルとして1回50、100、200、400、600、800μgの順に一段階ずつ適宜調節し、至適用量を決定する。なお、用量調節期に1回の突出痛に対してフェンタニルとして1回50〜600μgのいずれかの用量で十分な鎮痛効果が得られない場合には、投与から30分後以降に同一用量までの本剤を1回のみ追加投与できる。

至適用量決定後の維持期には、1回の突出痛に対して至適用量を1回投与することとし、1回用量の上限はフェンタニルとして800μgとする。ただし、用量調節期の追加投与を除き、前回の投与から4時間以上の投与間隔をあけ、1日当たり4回以下の突出痛に対する投与にとどめること。

※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。
副作用 口のなかに炎症や傷があると、薬の血中濃度が上昇し、副作用があらわれやすくなるおそれがあります。使用部位またはその他の部位に口内炎や口内出血がみられたときは、すみやかに医師または薬剤師に連絡してください。バッカル錠は、連続的な刺激を避けるため、できるだけ左右の頬に交互に使用するとよいでしょう。

全身的な副作用で多いのは、眠気やめまい、吐き気や嘔吐、便秘などです。ひどいようでしたら早めに受診し医師と相談してください。眠けと吐き気は続けているうちに体が慣れて軽くなりますが、便秘は続くことが多いので下剤(通じ薬)で対処します。

異常に強い眠気がしたり、うとうと意識がもうろうとしてくる場合は、薬の量が多すぎるかもしれません。ことに高齢の人など、過量による呼吸抑制を起こしかねませんので要注意です。ご家族や周囲の方もその点に気をつけ、異変に気付いたら医師と連絡をとり指示をあおぎましょう。

長く続けていると、薬に頼りがちになることがあります。薬がないといられなくなり、このとき急に中止すると、不安、吐き気、発汗、頭痛や震えなど反発的な症状があらわれます。ただ、がん疼痛治療においては、強い依存は生じにくいとされます。心配し過ぎず、鎮痛効果が十分得られる必要最小量を用いることが大切です。


【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
  • 呼吸抑制..息切れ、呼吸しにくい、息苦しい、呼吸が浅く速い、呼吸が弱く少ない(10回/分未満)、不規則な呼吸、異常ないびき、意識がうすれる。
  • 意識障害..うとうと、意識低下、混乱・もうろう状態、異常な言動。
  • 依存..長期に多めの量を飲み続けると、体が薬に慣れた状態になりやめにくくなる。このとき急に中止すると、いらいら、強い不安感、不眠、ふるえ、けいれん、混乱、幻覚など思わぬ症状があらわれることがある(徐々に減量すれば大丈夫)。
  • ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
  • けいれん..筋肉のぴくつき、ふるえ、白目、硬直、全身けいれん、意識低下・消失。

【その他】
  • 吐き気、吐く、食欲不振、便秘
  • 眠気、めまい、ふらつき、ぼんやり
  • 口内炎
   概説    作用    特徴    注意    効能    用法    副作用
  









用法用量は医師・薬剤師の指示を必ずお守りください。
すべての副作用を掲載しているわけではありません。いつもと違う「おかしいな」と感じたら早めに受診してください。
症状に合った薬が適正に処方され、また正しく使用するかぎり、重い副作用はめったに起こりません。まずは安心して、決められたとおりにご使用ください。
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Good luck & Good bye