概説 |
強い痛みを抑えるお薬です。 |
作用 |
- 【働き】
- 激しい痛みは心身を疲弊させ、平穏な日々を送るのに何よりの障害となります。このような痛みを無理にがまんする必要はありません。昔と比べ、痛みに対する理解が深まり、その治療も系統的にきちんと行われるようになりました。
この貼り薬には、痛みをおさえる強力な作用があります。とくに持続する鈍痛に効果が高く、一般的な鎮痛薬が効きにくい各種がん痛や慢性疼痛に有効です。皮膚からゆっくり吸収されるので、持続痛をおさえる定時薬として用いられます。
- 【薬理】
- 中枢や末梢に広く分布するオピオイド受容体の主要な生理機能として、痛みの神経伝達経路を抑制方向に調整する働きがあげられます。つまり、オピオイド受容体が刺激を受けると、痛みを伝える神経の侵害刺激伝達が直接抑制され、また別の神経系統の下行性抑制系神経を介して間接的にも痛みが抑制されるのです。
この薬は、そのオピオイド受容体と結合することで、強力な鎮痛効果を発揮します。作用点であるオピオイド受容体にはいくつかの種類が知られていますが、この薬はとくにオピオイドμ1受容体への親和性が高いのが特徴です。消化管運動抑制や鎮静作用を示すμ2受容体への親和性が低いので、便秘や眠気の副作用が比較的少ないです。このような特性から、専門的に選択的オピオイドμ受容体作動性の強オピオイド鎮痛薬ということができます。
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特徴 |
- フェンタニルを有効成分とするオピオイドと呼ばれる鎮痛薬です。そのなかでもとくに強力な麻薬系の強オピオイド鎮痛薬になります。有効限界がない完全作動薬とされ、用量増加とともに作用も増強します。WHO方式疼痛治療法で第3段階に位置づけられ、中等度から高度の疼痛に適します。
- 同類の代表薬であるモルヒネをしのぐ鎮痛効果が期待できます。モルヒネとの効力比は1:100くらいです。また、モルヒネに比べ、便秘や眠気、うとうと、せん妄などの副作用が少ないです。
- 脂溶性が高く、おもに肝臓で代謝されます。このため、腎臓の悪い人でも比較的安全に使用できます。
- 皮膚からゆっくり吸収される持効性の貼り薬です。持続痛をおさえるための基本薬として定期的に使用することになります。速効性はないので、一時的に強まる突出痛の治療には向きません。
- 3日用(デュロテップパッチ等)と1日用(ワンデュロパッチ等)があります。3日用は一度貼れば3日ほど効果が持続します。貼り替えの手間が少なく服薬管理が楽そうです。1日用は毎日の貼り替えになるので、日付を気にすることなく、貼り忘れがかえってないかもしれません。
- がん性疼痛にくわえ、非がん性の慢性疼痛に対する効能が、デュロテップパッチとワンデュロパッチにおいて追加承認されました(2010年、2013年)。処方対象は、いつまでも続く耐えがたい痛み、たとえば難治な関節症や腰痛症、あるいは帯状疱疹後神経痛など神経障害にもとづく痛みなどです。ただし、安易な使用は好ましくないので、第1選択薬とはせず一般的な鎮痛薬が効かない場合に限ります。また、書面で同意を得るなど一定のルールに基づかなければなりません。
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注意 |
【診察で】
- 持病やアレルギーのある人は医師に伝えておきましょう。
- 別に薬を飲んでいる場合は、その薬を医師に教えてください。
- 具体的な使用方法や注意事項、副作用について十分説明を受けてください。その内容をよく理解し、納得のうえで治療にあたりましょう。とくに慢性疼痛に対する処方・調剤にさいしては、確認書(同意書)の受け渡しが必要です。
- 【注意する人】
- 慢性肺疾患など呼吸器系に病気のある人は、呼吸抑制に注意するなど慎重に用いる必要があります。また、肝臓の働きが落ちている人は、薬の排泄が遅れ血中濃度が上昇しやすいです。なお、この貼り薬は熱の影響を受けやすく、熱により薬の吸収量が増加する性質があります。このため、40℃以上の発熱時や激しい運動のさいは、副作用の発現に注意が必要です。
- 注意が必要なケース..慢性肺疾患、喘息、心臓病、肝臓病、腎臓病、意識障害、頭蓋内圧亢進のある人、高熱、激しい運動による体温上昇時、高齢の人など。
【飲み合わせ・食べ合わせ】
- 飲酒量低減薬のナルメフェン(セリンクロ)とは併用できません。ナルメフェンによりこの薬の鎮痛作用が減弱するためです。通常、この薬を優先しますが、ナルメフェン中止後1週間以内は避けなければなりません。ナルメフェン服用中に、この薬が必要になった場合は、少なくとも1週間前にナルメフェンを中断する必要があるわけです。
- 安定薬など脳の神経をしずめる薬と併用すると、いろいろな副作用がでやすくなります。併用のさいは、眠気やふらつき、過度の鎮静、呼吸抑制、低血圧などに留意してください。
- ある種の薬と飲み合わせると、この薬の代謝が遅れ作用が強まるおそれがあります。たとえば、抗真菌薬のイトラコナゾール(イトリゾール)、抗菌薬のクラリスロマイシン(クラリス)、血圧と心臓の薬のジルチアゼム(ヘルベッサー)、抗うつ薬のフルボキサミン(デプロメール、ルボックス)などに注意が必要です。
- この薬の作用を弱める薬剤には、抗けいれん薬のカルバマゼピン(テグレトール)やフェノバルビタール(フェノバール)、フェニトイン(アレビアチン、ヒダントール)、抗結核薬のリファンピシン(リファジン)、ステロイド薬のデキサメタゾン(デカドロン)などがあります。逆に併用後に中止すると、この薬の作用が増強するおそれがあります。
- 抗うつ薬のSSRI(ルボックス、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロ)やSNRI(トレドミン、サインバルタ)、あるいは抗パーキンソン病薬のセレギリン(エフピー)などとの併用により、セロトニン症候群という副作用がでやすくなる可能性があります。併用のさいは体調の変化に注意が必要です。
- 飲酒は控えてください。めまいや眠気、呼吸抑制などの副作用がでやすくなります。
【使用にあたり】
- モルヒネなど他のオピオイド鎮痛薬から切り替えて使用するのが基本です。切り替え方は、それまでの製剤の種類によって違いますので、医師の指示どおりにしてください。
- 決められた時間に貼り替えてください。3日用は3日毎(72時間おき)、1日用は1日毎(24時間おき)になります。貼り方は説明書にありますので、よく読んでその手順にならってください。皮膚刺激を避けるため、毎回貼付部位を変えたほうがよいでしょう。
- モルヒネ製剤から切り替えたあと、人によっては、あくび、吐き気、下痢、不安感、ふるえなどモルヒネの退薬症候があらわれることがあります。ひどいようでしたら医師と連絡をとり指示をあおぎましょう。
- 効き具合をみながらちょうどよい量に調整します。もし、痛みが残るようでしたら、遠慮なく医師に申し出てください。必要に応じ増量可能です。逆に、痛みは消失するものの、強い眠気に悩まされる場合は、減量の余地があるかもしれません。この場合も、医師に報告してください。
- 慢性疼痛において、1カ月以上使用しても期待する効果が得られない場合は、他の適切な治療への変更を考慮する必要があります。
- ゆっくり効く貼り薬です。急な痛みに対しては、別の速効性のオピオイド鎮痛薬を使用してください。
- 長期使用後に中止する場合は、医師の指示のもと徐々に減量するようにします。
- 痛み止めとして他人にあげてはいけません。何らかの理由で、不用となった未使用製剤は病院または薬局に返却してください。
- 誤って他人に付着しないように注意しましょう。万一付着に気付いたときは、直ちに剥離し、付着部位を水で洗い流し、異常が認められた場合は受診してください。
- 使用済み製剤は粘着面を内側にして貼り合わせたあと、安全に処分してください。また、未使用品は子供の手の届かない涼しいところに保管しましょう。
【妊娠授乳】
- おなかの赤ちゃんや生まれてくる赤ちゃんに影響するおそれがあります。妊娠中は、薬の有益性がリスクを上回る場合に限ります。
- 母乳中へ薬が移行しますので、授乳は避けてください。
【食生活】
- 熱により薬の放出量が増え、体内への吸収量が増加するおそれがあります。このような現象を避けるため、貼り付けた部分が電気毛布や電気パッド、カイロ、湯たんぽなどの熱源に接しないようにしましょう。また、その部分の集中的な日光浴もやめましょう。
- 貼ったまま入浴できますが、熱い温度での入浴やサウナは避けてください。やはり、熱による吸収量増加を防ぐためです。
- 発熱時または激しい運動にともなう体温上昇により、薬の過量吸収を起こす可能性があります。このような状況にあるときは、体の変調にとくに気をつけてください。
- 眠気やめまいを起こしやすいです。車の運転をふくめ危険をともなう機械の操作や作業は避けてください。
- 強い眠気は過量のサインかもしれません。日常生活や仕事に支障となる場合は、早めに受信し医師に報告してください。たとえば会話中にうとうと眠こんでしまったり、目覚めてもつじつまが合わない会話をする場合などです。さらに、呼吸が浅く速いなど呼吸に異常がみられるなら、直ちに医師に連絡してください。
- 【備考】
- がん疼痛治療のお手本にWHO方式があります。痛みの強さを3段階に分け、段階的に鎮痛薬を選択する方法です。軽い痛みには、まず第1段として一般的な非オピオイド鎮痛薬(NSAIDs、アセトアミノフェン)を定時使用します。それで効果不十分な中くらいの痛みには、第2段階として弱オピオイド(コデイン、トラマドール)を追加します。さらに第3段階では、第1段階の薬剤に麻薬系の強オピオイド鎮痛薬(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル:この薬)を追加し定時使用します。定時薬使用中の突出痛に臨時に用いるのが即放性の強オピオイドいわゆるレスキュー薬です。
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効能 |
非オピオイド鎮痛剤及び弱オピオイド鎮痛剤で治療困難な下記における鎮痛(ただし、他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する場合に限る。)
- 中等度から高度の疼痛を伴う各種癌における鎮痛
- 中等度から高度の慢性疼痛における鎮痛(デュロテップMTパッチ、ワンデュロパッチ)
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用法 |
- 【デュロテップMTパッチ(3日用)2.1mg~16.8mg】
- 本剤は、オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する。通常成人に対し胸部、腹部、上腕部、大腿部等に貼付し、3日毎(約72時間)に貼り替えて使用する。初回貼付用量は本剤投与前に使用していたオピオイド鎮痛剤の用法・用量を勘案して、2.1mg(12.5μg/hr)、4.2mg(25μg/hr)、8.4mg(50μg/hr)、12.6mg(75μg/hr)のいずれかの用量を選択する。その後の貼付用量は患者の症状や状態により適宜増減する。
- 【ラフェンタテープ(3日用)1.38mg~11mg】
- 本剤は、オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する。通常、成人に対し胸部、腹部、上腕部、大腿部等に貼付し、3日毎(約72時間)に貼り替えて使用する。初回貼付用量は本剤投与前に使用していたオピオイド鎮痛剤の用法・用量を勘案して、1.38mg(12.5μg/hr)、2.75mg(25μg/hr)、5.5mg(50μg/hr)、8.25mg(75μg/hr)のいずれかの用量を選択する。その後の貼付用量は患者の症状や状態により適宜増減する。
- 【ワンデュロパッチ(1日用)0.84mg~6.7mg】
- 本剤は、オピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する。通常、成人に対し胸部、腹部、上腕部、大腿部等に貼付し、1日(約24時間)毎に貼り替えて使用する。初回貼付用量は本剤投与前に使用していたオピオイド鎮痛剤の用法・用量を勘案して、0.84mg、1.7mg、3.4mg、5mgのいずれかの用量を選択する。その後の貼付用量は患者の症状や状態により適宜増減する。
※換算表、その他詳細については省略
※用法用量は症状により異なります。医師の指示を必ずお守りください。 |
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副作用 |
副作用で多いのは、眠気やめまい、吐き気や嘔吐、便秘などです。ひどいようでしたら早めに受診し医師と相談してください。眠けと吐き気は続けているうちに体が慣れて軽くなりますが、便秘は続くことが多いので下剤(通じ薬)で対処します。
異常に強い眠気がしたり、うとうと意識がもうろうとしてくる場合は、薬の量が多過ぎるかもしれません。ことに高齢の人など、過量による呼吸抑制を起こしかねませんので要注意です。ご家族や周囲の方もその点に気をつけ、異変に気付いたら医師と連絡をとり指示をあおぎましょう。
長く続けていると、薬に頼りがちになることがあります。薬がないといられなくなり、このとき急に中止すると、不安、吐き気、発汗、頭痛や震えなど反発的な症状があらわれます。ただ、がん疼痛治療においては、強い依存は生じにくいとされます。心配し過ぎず、鎮痛効果が十分得られる必要最小量を用いることが大切です。
【重い副作用】 ..めったにないですが、初期症状等に念のため注意ください
- 呼吸抑制..息切れ、呼吸しにくい、息苦しい、呼吸が浅く速い、呼吸が弱く少ない(10回/分未満)、不規則な呼吸、異常ないびき、意識がうすれる。
- 意識障害..うとうと、意識低下、混乱・もうろう状態、異常な言動。
- 依存..長期に多めの量を飲み続けると、体が薬に慣れた状態になりやめにくくなる。このとき急に中止すると、いらいら、強い不安感、不眠、ふるえ、けいれん、混乱、幻覚など思わぬ症状があらわれることがある(徐々に減量すれば大丈夫)。
- ショック、アナフィラキシー..気持ちが悪い、胸苦しい、冷汗、顔面蒼白、手足の冷え・しびれ、じんま疹、全身発赤、顔のむくみ・腫れ、のどが腫れゼーゼー息苦しい、めまい、血圧低下、目の前が暗くなり意識が薄れる。
- けいれん..筋肉のぴくつき、ふるえ、白目、硬直、全身けいれん、意識低下・消失。
【その他】
- 吐き気、吐く、食欲不振、便秘
- 眠気、めまい、ふらつき、ぼんやり
- 貼った部位のかゆみ・発赤
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