白霧


大気に溶けた白霧に
      青い木煙る細い山道

音無く流る白水に
      薄氷はる初春の川

木々の境を一つ貫く暗い道
雑草茂り道迷う暗い道

闇より不意に光差し込み 青い空
まばゆく目に染み立ち止まる

幼心にふと返り 涙する大一本杉
手で撫でながら 頬寄せながら 何かを聞き取るそのはざま
杉は目覚まし 杉は微笑み 杉は言葉す

ひと昔前 幼子だった少年に 面会の喜び込め
川の流れに 道のうねりに 木の陰に ふと幼子の姿見出し
時の流れを感じ見る

確かに歩いたこの道も 今はもう遠くて記憶なく
夢にのみたよる