KANNEN(観念)
     −経験した物事が積もり重なって、頭の中で
      固定的に考えられるようになったもの

夜景の美しさと
黒い海の不気味さが
(人間というつかめない物質を持った俺を取り巻いている)

油臭いニオイと
あまりに星の少ない夜空が
(白々とした柔らかい皮膚という物に包まれた物体である俺を取り巻いている)

海を切り裂いて進む
俺は
空気を切り裂いて進む

引きちぎりたい衝動を押さえ

ただ自分が実体であるということを信じ
それに反することを恐れねばならないという観念の元に

俺はただ瞳を開いて 宙を睨んで

手摺りを握っても引きちぎれないという観念を信じ
俺はありったけの力で握りしめ

美しい夜景と、黒い海と、油臭い水と、星の少ない夜空に
『死んじまえ』と呟く

−それが実現しないという観念の元に