ブレードイーグル(セガ 1988)
「ユニバーサルデザイン」という言葉が世に出てしばらく経つ。
狭い意味で言えば、利用者によって利用のための労力が著しく異ならないようにするためのデザイン、
といったところか。
広い意味になると、利用者が利用時に戸惑わないようにするためのデザインも含むようだ。
ビデオゲームの分野では、ユニバーサルデザインというのはかなり取り扱いに困る概念だと思う。
それはビデオゲームが本質的に、視覚・聴覚からのインプットと、手(時に足も)を使うアウトプットを
頻繁に行うというものであるからだ。
思えばビデオゲームの進歩は、グラフィックとサウンド、操作形態の創意工夫の進歩であった。
時折、原点回帰的なゲームが出ないこともなかったが、それはレトロ「ブーム」である。
ブームという事は、一時的なものだ、という事。
2006年現在、日本のビデオゲームメーカーはかつてのゲームをたくさん集めて最新ハード上で
エミュレートさせて遊んでもらおう、というタイトルをかなり出すようになってきたが、
これも次のブームが見えないが故の苦肉の策なのではないだろうか。
次のブームが決まれば、メーカーはこぞってそれにならい、「レトロタイトルを集めたタイトル?
そんなのいらないでしょ」と見向きもしなくなるだろう。
話がそれてしまったが、要はビデオゲームの業界というのは、とにかく上へ!前へ!という量的進歩に
乗っかってやってきたという事で、そのような分野では、現状に不便を感じている人への配慮というのは
どうしても後回しにされがちって事だ。
1988年に登場した「ブレードイーグル」は、3Dグラスを利用する事で立体的映像を視覚に与えよう、
というソフトだった。ファミコンでも「とびだせ大作戦」「ハイウェイスター」「JJ」「ファルシオン」
「3Dホットラリー」などなどのソフトがリリースされていたし、マスターシステムでも「ザクソン3D」
「スペースハリアー3D」「メイズウォーカー」なんてものがあった。
この「ブレードイーグル」は、いわゆる縦シューのジャンルに属するゲームで、自機の8方向移動に加え
ショットと高さ切り替えボタンの2ボタンで操作する。このゲームでは自機の飛ぶ高さを高低2段階に
切り替える事が可能。アーケードで言えば「ザビガ」「エクイテス」に近い。
この高さを表現するために3D表現を使っているのだ。
面数は全部で9面(多分)あり、3面*3周といったイメージ。各面では途中にボスが2回登場する。ボスを
破壊するとパワーアップアイテムが出現(種類は後述)。3面1セットの1,2面にあたる面ではステージ
最後まで到達すると自動的に面クリア。3面にあたる面では最後にボスが控えており、これを
倒すことが面クリアの条件となる。
3面1セットは、「宇宙ステーションぽいところ」→「敵惑星地表」→「敵基地」といった感じで
構成されている。宇宙ステーションでは低空を飛んでいる時に当たり判定がある場所はほとんど皆無だが、
地表では建築物があり、基地内は回廊風の地形になっている。
先ほど途中のボスを倒すとパワーアップが、と述べた。
種類は「スピードアップ」「パワーアップ(2連装ショット→レーザー→ベクトルレーザー?)」「分身?」を
確認している。
が、問題なのはこのパワーアップはどうもランダム出現らしいこと。
運が悪いとスピードアップが2つ連続でガッカリ、なんて事もしょっちゅう。
この中で分身について補足しておく。分身は自機の後をついて回り、自機と同じ攻撃をする、いわゆる
グラディウス式オプションなのだが、自機が破壊された後にはその分身が自機となってゲームは
そのまま続行なのがユニークだ。とりあえず2つまでつけられるのは確認したので、
これだと3機いるのも同然という事になる。
とまぁこのようにマスターシステム末期らしく(88年といえばメガドライブが出た年)、3D処理しつつ
パワーアップなどもつけて、とがんばっているゲームだが、正直この3Dへのコダワリがゲームを
しんどくさせているとしか思えない。
当時から俺は3Dグラスで立体に見るというのが難しかったのだが、どうもこれはグラスのシャッターと
目とテレビの位置関係にあるようなのだ。ちなみに今回この文章を書くために3Dグラスをかけたところ、
どうも真正面以外の位置ではブレてしまうという事が分かった(もしかして常識だったのかしら)。
つまりこのゲームをプレイする時は、自機を真っ直ぐ見つめるように自機移動に合わせて顔を
少し動かすといいようだ。こうするとだいぶマシになった。
が、マシになったというのは「ブレなくて見えるようになった」だけの話であって、画面の中のブツが
見事に遠近感を持って見える!という状態とはとても言いがたい。
プレイしていてもこの3D感をもとに攻撃している訳でもないのだ。本来なら、
「敵発見!→ヤツは低空にいるぞ→降下!→攻撃!→見事撃墜」
となって欲しいところだが、実際には
「敵発見!→ヤツは低空にいる敵だな→今俺上空だな→降下!→攻撃!→見事撃墜」
と、視覚で認識した情報を基に判断を下すのではなく、ゲームの知識(ヤツは低空にいるタイプの敵だ、など)
で判断してしまっているのだ。ゆえに、高度を変える敵はただの「メンドクサイ敵」扱いになってしまう。
このテの「スゴげな技術をゲームに適用しまっせ」は、うまくかみ合わないと並のゲームを通り越して
ゲームの完成度に対して足を引っ張ってしまうという諸刃の剣である事が多いような気がする。
このゲームで言えば「3D映像から状況を把握するより、敵の高低を覚えて対処した方がよっぽど早い」
という別のソリューションが存在した結果、本道であるはずの3Dが「ジャマもの」になってしまっている
事がそれに相当する。「スペハリ3Dみたいに3D効果をOFFにして遊びたいなぁ」なんて言われてしまったら
ガッカリものだ。画面上のオブジェクトを高低に合わせてブレ方を変えて表示させるなんて、結構面倒なんじゃ
ないか?それが「無い方がいい」では立つ瀬がなくなってしまうというものだ。
とは言え、「ブレードイーグル」他の3Dグラス対応ゲーを「余計なエフェクトをつけてプレイしにくくなって
しまったしょうもないゲーム」と言ってしまうのはこれはこれで問題というものではないか。
目指そうとしたのは、「TVで立体映像(っぽく)」であり、これは試行錯誤としてはやるべき事ではあったと
思うのだ。
ただ、その一方で、こういう「五感を刺激する手段を突き詰めたい!」というアプローチに対するもう一つの
危険性は、多かれ少なかれそのメリットを享受できるプレイヤーの数を狭めてしまう事にあると思う。
実はこのテの3D映像というのは、左右の視力が極端に違う人だと見えないらしいのだ。
これまでも、色盲や難聴の人にとっては色々と「そうは言われても俺には関係ない話さね」という映像・音声の
スペック拡大があったはずだ。そこまでいかなくとも、既に既存のマシンのグラフィックで「もうこれ以上
キレイになってもねぇ、ウチのテレビじゃねぇ」なんて人もいるはず。
そんな、先端のスペック競争の場において「予選落ち」扱いされた人たちでも楽しめるゲームという
アプローチを忘れてはいけないと思うのだ。
「ブレードイーグル」で焦点が外れてしまい、敵機や自機がブレて見えると、目に疲れを感じると同時に
そんな事も考えてしまう。このゲーム、BGMはいかにもマスターシステムっぽいFM音源でいいんだけど、
目に悪そうなんで正直あまりプレイする気になれないんだよなぁ。
おまけ:ブレードイーグル裏技
タイトル画面で、方向ボタンを左、上、右、下の順に押すと、タイトルロゴの右の方に数字が出る。
上下ボタンで0〜8まで変える事が可能で、数字を設定してゲームを開始すると、数字+1面の頭から
プレイできる。
入力は何回も受け付けているので、慣れると方向ボタンを時計回りにグリグリと2〜3回回して出せる
ようになる。