空騎兵物語(SNK 1988)

彼らは戦うためにのみ空を駆けるのか…

かつてSNKには、男臭いゲームをガツンガツンとリリースしていた時代があった。 もっともそれはSNKに限った事ではなかったのだが、SNKはただ「カッコ良さ」を 追求するのではなく、「重厚さ」を重視していたかのようなゲームをリリースしていたため、 そのように映るのかも知れない。
有名な「怒」シリーズは言うに及ばず、巨大な鋼鉄の塊同士が撃ち合いを演ずる「バミューダトライアングル」、 男臭いスポーツ「タッチダウンフィーバー」、へビィ過ぎて死亡寸前「脱獄」、キューバ革命の英雄に捧ぐ あまり米国でタイトルが差し替えられた「ゲバラ」、アメリカ横断ウルトラガチンコ「ストリートスマート」 等など…。
そんな中、SNKでは珍しい縦シューである本作品もやはり、男臭さが前面に押し出されている一品。 某所にては「早過ぎた『ガンフロンティア』」との評もあるほどの美学シューをここに紹介。

このゲームは縦シューで、自機はヘリ。ステージは全12面あり、後半ステージは基本的に前半ステージの 難易度アップバージョンといった感じだ(「ASO」なんかを思い出す)。
ボタンは2つで対空・対地兼用ショットと特殊兵器ボタン。
ところで全然関係ないが、ある時自機のショットが実は中心から若干右側にズレた位置から発射されている 事に気づいた。左右非対称かよ、渋っ!と喜んだが、パワーアップしてみれば、単にショットのグラフィックが 微妙にズレた位置から出ているだけと判明して意気消沈したものだ。
話を元に戻そう。特殊兵器はいわゆるボンバーで、 3種類を混合して4発まで保持する事ができる。もっとも、一番使い勝手がいいのは最初から持っている 援護機のナパーム爆撃だと思う。咄嗟に弾消ししてくれるしね。 あとの2つは自称バリヤー(インストによればバリヤーらしいのだが…火の玉を周囲に 撒き散らしているようにしか見えないので)と、炸裂弾と名づけられたいわゆるボンバー。 前方にひゅーと飛んでいって炸裂する。炸裂時間が長いので、対ボス戦にはかなり有効だと思われる。

また、自機は敵ヘリからパワーアップアイテムを入手する事でパワーアップが可能。
まず「L」は射程が延びるパワーアップ。最初は画面半分くらいしか届かないが、これを取ると 画面上まで届くようになる。
「P」はメインショットのパワーアップ。2連装、3連装、3連装さらにパワーアップ、と3段階までアップする。
火の玉(逆涙滴型?)の絵はバルカン砲。Vの字型に斜め前方を攻撃する。単発ではあるものの、障害物を 貫通するという特性は入り組んだ地形の面では非常に頼もしい武装となる。
ミサイルの絵は誘導ミサイル。1つ取ると1発、2つ取ると2発の誘導ミサイルを発射する。 因みに誘導ミサイルも障害物を無視して飛ぶ。ところでこのミサイルの発射っぷりが独特。 一旦射出されて点火、しかる後に敵を追尾し始めるというなんとものんびりした 仕様ながら、ベトナム戦争辺りの時代背景を意識したこのゲームだと、妙に似合ってるというか…。
あとはパワーアップしていくと「B」が出るようになる。取ると3000点ボーナス。という訳で、ハイスコア狙いなら フルパワーにして「B」狙いになるものと思われる。
ところがそこはうまくしたもので(?)、パワーアップすると、敵ランクがしっかりアップしてしまう。 敵弾の発射頻度や投網(後述)発射頻度が上がり、ボスが固くなるというリスクつき。 ミスってからボス戦に挑むと、ノーミス時と固さが結構違う事を実感できるだろう。

このあふれ出る力は何だ?敵への怒りかあるいは正義の光か。

先ほど少し書いたように、このゲームは全12面。7面から12面は1面から6面の難易度アップバージョンと なっている。具体的には、敵弾の発射頻度が上がり、敵が固くなっているようだ。 敵の出現パターンも一緒らしい(基板である程度遊んだ限りでは)。 「なんだよ、敵固くして水増しかよ!」と思われるかも知れないが、これが意外と侮れない変化で、 雑魚ヘリが2発撃たないと破壊できないというのは結構違和感を覚えるものだ。 連付きでプレイしても「むむっ?」と思うくらい、手連だと結構キツく感じるかも。
あと、システムとして面白いのは、ステージに障害物がある点だろうか。 鉄骨や壁、フェンス、仏像など、プレイヤー及びメインショットが通過できない(敵や敵弾は オッケー。あと前述のように、バルカン砲と誘導ミサイルも貫通する)。自機が触れても ミスにならないが、スクロールに挟まれるとさすがにミスだ。
あと自機はヘリだが、移動は結構軽快だ。ヘリが自機というとゆっくりと動く印象があるかも知れないが、 このゲームはあまり気にならないだろう。
さて、自機のスピードと障害物の存在、初期装備だと画面半分しか届かないショット…これらを総合すると、 基本的にこのゲームでは、
「自機を画面中央辺りに置き、障害物に邪魔されないポジションから敵を出現即壊するのが基本」
という感じになる。が、フルパワーでもない限りそうそう上手くいくものでもないので、
「どの敵を撃ち、どの敵を残して攻撃を避けるか」
という点が重要なポイントになる、と感じた。そういう視点から敵のアルゴリズムを見てみると、 画面上から下へまっすぐ下りるヘリ、蛇行しながら画面下へ下りるヘリ、他は自機を追尾して攻撃する ヘリ、というのが雑魚の基本。これに地上物(戦車や砲台)と投網が混ざって攻撃パターンが形成 されている。
随分と敵のバリエーションが少ない、と感じたかも知れないが、これがまたよくしたもので(?)、 パワーアップを持つ中型ヘリが複数の行動パターン(自機を追尾してくるパターンもあり。 っていうか、自機を追尾するパワーアップ所持敵なんて他にいるか?) これに後ろから現れる大型機(ステージ途中のヤマだ)、障害物が合わさると、敵の少なさなんて 殆ど気にならなくなってしまう。

銃を持っていても、いつも心には両親が、恋人が、そして故郷があった。
さて、このゲームの男臭さについて考えてみようか…。
まず、基板買ってビビったのが、1988年というご時世にして?3枚重ね基板だという事。男らしい! 東京で買って新幹線で持ち帰ったのだが重たくて仕方がなかったぜ!
そしてデモを眺めてしょっぱな、「彼らは戦うためにだけ空を駆けるのか…」という赤い文字が 画面を横切ってすでに熱い予感が。というか、「航空騎兵物語」というタイトルが既に 男臭すぎる。
他にも、このページに点在する見出しはデモ画面及びインストに書かれている文だったりする。
もちろん題材も渋い。敵もギャギャギャンな感じの要塞とか最新鋭戦闘機じゃなく、ひたすら重い 戦車、ヘリ、潜水艦といった面々。敵の空中物が大型機以外全部ヘリというのも渋い。

そしてBGM、SEも渋い。つーか、ゲーセンじゃ殆ど聞こえてなかったんだけど、改めて聞いてみて SNKのあのへビィさがオーイツしている事に驚愕。ドラマ性溢れるメロディももちろんいいんですが (2、4面の曲とか特に好き)、とりわけドラムの「重さ」よ!コレに関しては当時としては 業界随一じゃないか?正直、恐れ入りました。 そうそう、BGMっつったら、普段は静かながら力強いといった印象を受ける曲が多いのだけど、 6,12面のボス時のBGMはイントロからストレートな熱さでプレイヤーをビビらせてくれる。 いかにも「ヤマ場だ!」という感じがしてイカす。そーいやここのボスだけ飛行艇?みたいな 奴で他と一線を画しているよなぁ。
で、SEよ。敵ヘリを破壊した時のSEがえらく豪華なのよ!勿体無いとすら思えるほどで、 雑魚一匹落とすだけでカタルシスが得られちまいそうでさぁ。

そして何より、ステージクリア時の上官の台詞。みんな語るのはやっぱコレだろうな。
当時は「うひゃー、男っぽいステージ間デモだよなぁ」程度の認識だったんだけど、 今になって改めて見直してみると純粋な若者をあの手この手で釣って前線に送り出している タヌキ親父、という感じに見えて仕方がない。それがまた、妙にリアルさを持っているというか…。 あ、この場合の「リアル」ってのは、戦争とそこに関わる人間に対して俺が持っているイメージと 比較して、「あぁ、いそうだな、こーいう上官」という感想を得た、って意味ね。
だってさ、まず「国境付近に敵が…これは訓練ではない!」で何も考える間を持たせず 前線に送り込み、「成果によっては諸君らの昇格もありうる」と階級で釣ってみたり、 そうかと思えば「祖国に平和をもたらしてくれ」と愛国心に訴えかけたり、 「あの激戦をよく生き抜いたな」とストレートに褒め称えたり、 「多くの仲間たちが土になったが諸君らは彼らとは違うはずだ」などとプライドを刺激してみたり、 という感じであの手この手でおだてて全12面を戦わせているんだから。

コンティニュー時の文章もそうだよね。
「ここで止めれば、君はただの負け犬だ」
「戦友たちの死をむだにするな」
「戦ってくれ…男なら!」
と、台を離れようとする兵士(=プレイヤー)をたきつけたり情に訴えたりする様が わずか5秒くらいの間に展開されているという。
これが琴線に触れたオトコノコは多いはずだぞ。

それでも男たちは、黙って戦ってきた。

さて、ひとしきり男臭さについてだらだらと述べた後に、個人的に2002年にプレイして ちょっとだけ気になった点を。
このゲームでは画面上にレーダーが表示されている。ボス戦手前になると敵影が映り、 「Look Out! Enemy Coming!」とのボイスが入るのだが、それ以外のシーンでこのレーダーが 使われる事がないのだ。これはあまりにも勿体無くないか?
このゲームでは画面下から大型機やパワーアップを持つ中型ヘリが現れる事がある。 頻度はそう多くないが、それでも他の敵との戦闘に夢中になっていると敵の出現と同時に 激突してしまう事がある(もっとも、このゲームに慣れてくるとあまり画面下にはいないようになる と思うので、杞憂かもしれないけど)。
そこでレーダーに敵影が映って何か警告ボイスでも出れば…という風に思うのだ。
もしかしたら、当初の企画ではこのレーダーを存分に生かしたゲーム性、あるいは演出が なされていたのかも知れない。「6時方向から大型機!」とかね。 けど、後半面が前半面の使い回し(悪く言えばね)だとか、少ない敵キャラの種類とかから 思うに、そういう演出は泣く泣く削らざるを得なかったのではないだろうか?と推測するわけだ。 それでもまっさらな縦シューとしてしまうのは惜しい、という事で、ボス登場時の演出のみが 残ったのかも知れない。あくまで想像だけどね。

この手を見ろ。人の血にまみれた、真っ赤な手だ!

とまぁあれこれ述べてきたんですが、いやね、あちらこちらで「男臭いストーリーが!」という 紹介をされているこのゲームだけど、今現在見ると流石に単純だなぁ、という印象は拭い去れないんだよ。 特にエンディングなんて、どんでん返しその他の「見る側」の意表を突く演出が様々になされてきた 現代からすれば、「やけにあっさりしてるなぁ」「それで終わりかい!」なぁんて言ってしまいそうな 感じなんだよな。
とは言え、1988年当時にして、これだけの重厚なデモを持つシューティングというのもなかった訳で、 後の演出型シューティング(あるいは世界観主体型?)の先便と言ってもいいのではないだろうか。 だって、先にも言ったように、後半面は前半面のランクアップバージョンといった感じなのに、 敵の種類なんてボスを含めても20種類には届かないはずなのに、 それをあまり感じさせないのはひとえにあのステージ間デモがあればこそか、と思えるから。
そして何も考えずにヘロヘロと弾避けするようなゲームじゃないからこそ、あの単純なエンディングでも 心に感じるところがあるのかも知れないし。

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PaCIfIC PASSER-BY/ Cult Shooting 100/ 航空騎兵物語