ぼぉるひろい そのじゅういち






不安定な空間を抜けると、最初に視界にはいった眩しさにクーンは目を顰めた。
前を歩いていたフラルに導かれるように握られていた手が離れる。
本当に、別の世界に来たんだろうかと、クーンが疑問に思っていると、何かが色んなものを巻き込んで落ちたような大きな音に身体が跳ねた。

「い・・・いったあああいっ!」

ようやく光になれた目が捕らえたのは、埃が舞う中、目の前を歩いていたはずのフラルが
1、2段ほどの段差の下でダンボールやらビニールなどに紛れて顔面から転んでいる姿だった。

「だだだ、大丈夫ですか・・・?!」

「なんで倉庫に出るのよ!信じらんない・・・!」

「いいざまですねぇ。」

「うっさい!黙れこのド変態!死ね!」

遅れて亜空間を抜けたエンストが、フラルの無様な姿をみてからかうように笑うと
少し顔を赤くした彼女はすぐに起き上がって、服についた埃を叩き落とす。

「大体なんで倉庫に出るのよ!?埃っぽいし・・・っ!」

「洗濯板娘の鍵の使い方が悪いんじゃないですかー?」

「な、違うわよ・・・!毎回出るところが固定されてないのが悪いのよ!・・・たぶん。」

勢いをつけて訴えるも、語尾の方が小さくなったフラルは乱れた髪の毛を梳かしながら
転んだときに散らばったダンボールや物を通れるように端に寄せ始める。足で。

「普段の行いが悪いからこういう目にあうんですよ。」

「うっさいわよ・・・!」

「でも、エンにぃもさっきフラねぇたちのところ着いたときに、窓から出て落ちたよね。」

「ほら見なさいよ!あんただってダメじゃない!」

「キリ・・・!余計なこと言わないでください!」

相変わらず喧嘩腰の二人にあわあわしながらも、さっきの二人が現れる寸前の大きな音のことを思い出して
その音のことかなと、クーンは一人首を傾げつつ、倉庫を見回す。窓から入ってくる淡い光が舞っている埃を目立たせている。
それを見ていると、舞い上がった埃が鼻に入って、くしゅんとくしゃみが出た。むずむずとする鼻を擦る。

「大丈夫?」

最後に出てきて、亜空間が広がる扉を閉めたシークが、鼻をすすっているクーンを覗き込む。
それに慌てて頷くと、シークはぽんと頭を一度だけ撫でてフラルの方に歩み寄っていく。
クーンもそれについていくと、シーくん!と反応したエンストがフラルから盛大なとび蹴りを食らって
盛大に埃を舞わせながらダンボールとごちゃまぜになって倒れる所だった。













昨晩の嵐が嘘のように、雲ひとつない真っ青な空を見上げながら、女性は眩しさに目を細めた。
ティルと探しに行ってきますとだけ言って、今朝出て行ってしまった子のことを思い浮かべながら。

「アリアままー。クーンとティルはー?」

アリアと呼ばれた女性の足元に、まだ幼い少女が駆け寄る。
見上げてくる少女と目を合わせて、女性は優しく微笑む。

「クーンくんはティルちゃんを探しに行ってしまいました。」

「かえってくる?」

不安そうに見上げる少女の柔らかい髪の毛を撫でる。

「ちゃんと帰ってきます。二人一緒に。」

いつー?と首を傾げる少女を抱き上げると、開け放った窓から離れて室内へと入っていく。
長い髪がさらさらと揺れる。窓から差し込む太陽の光で淡く輝きながら。

「それはわからないけれど、いつでも二人が笑顔に帰ってこれるように、みんなで元気に待っていましょうね。」

そうしたらきっと、二人ともとっても喜んでくれるから。
静かに告げたアリアの言葉に、少女は「うん!」と笑顔で頷く。
そんな無邪気な少女に微笑みかけながら、アリアはすでにこの世界にはいない二人に思いを馳せた。
















今更だけど、会話の多い文はむずかしいなー。