ぼぉるひろい そのじゅうに
「うわぁ・・・!全然違う・・・!」
きょろきょろと周りを見回しながら、クーンは歓喜の声を漏らした。
今まで見慣れていた町並みとは違う世界。見慣れない種族の人。
初めて見るものがたくさんあって、ぐるぐるとクーンは視線を廻らせる。
さっきまでの暗い気持ちも、どこかへ引っ込んでしまった。
結局、この世界にもティルはいなかった。
世界を移動する前(・・・でも、あんまり実感ないんだけど・・・)と同じように
ボクより幼いキリさんが調べたけど、終わったあとに首を横に振った。
次を探しに行くにも、本部の人からの連絡を待たなくちゃいけないらしいし
何よりボクはまだついて行っていいと、完全に許可をもらったわけじゃない。
「却下されたら、即効で元の世界に帰すんで大人しく待っててください。」
って、エンストさんに言われた。
ちょっと怖かったけど、声は優しい感じがしたから、きっと良い人なんだと思う。
それで、連絡が来るまでは動けないからって、せっかくだから買い物ついでに外へ行こうとフラルさんとキリさんが誘ってくれた。
どう答えていいかわからなくて、シークさんの顔を見上げると優しく催促してくれて、頷く
二人が手を引っ張ってくれて、そのまま三人で買い物に行くことになって今みたいになってる。
「これ、お家どうやって作ってるんですか?」
白く平らな壁を触る。ざらざらする。ボクの世界では見たことない作りだ。
さっき買い物に寄ったお店でも、みたことないものがいっぱいあって
でもそれでも、ボクの世界にもあったような食べ物とかもあって
たくさんの見たことのないものが外には溢れていて、わくわくする。
「それはコンクリートって言うんだよ」
ボクの手を引いてくれていたキリさんが、立ち止まって説明をしてくれる。
こんくりーとってなんなんだろう?ボクの世界ではレンガで建物をつくるのが普通だったけど。
「ここはクーンのいた世界より、少し技術が発達してんの。世界によって結構違ったりするわ。まだ野生染みた世界もあるし」
小さな紙袋を一つ抱えたフラルさんの言葉を聞きながら、見慣れない作りの建物を見上げる。
他にはどんな世界があるんだろう。ここよりももっと違う世界もあるのかな。
「クーにぃ、今度こっち行こう」
キリさんにひっぱられて歩きはじめる。今度はどんなお店に行くんだろう。
・・・ティルにも見せてあげたいな。
「そういえば、クーンは名前、あるの?」
「名前・・・?」
「ファミリーネーム」
さらに増えた紙袋を3人で分けて、人気の少ない道を進んでいると急にフラルさんに質問される。
街を真っ赤に染める夕焼けが、ボクたちを包んでいて、話しかけてきたフラルさんも包まれていて
鮮やかなオレンジの髪に赤がかかる。前を向いたままだから、表情は見えない。
ボクの隣を歩いているキリさんは、無表情。
「孤児院育ちだって聞いたから、気になって・・・・ごめん、嫌なこと聞いたなら謝る」
「あ、大丈夫です。孤児院のみんな優しくて、ボクあそこが大好きですから」
アリアママも、他の子も、お兄さんやお姉さんも、みんな大好きなんです。そういうと
少し振り向いたフラルさんが、笑ってくれてボクも頬が緩んだ。
「ファミリーネームは、あります。あそこで育った孤児達全員共通なんですけど、"カランコエ"って言うんです。クーン・カランコエ。」
アリアママが初めて会ったときにくれた名前。
ティルもボクも、孤児院のみんなも、この名前を大切にしている。
「カランコエって、お花の名前?」
ボクの隣を歩いていたキリさんが、紙袋を持ち直しながら見上げてくる。
「はい。そう聞きました。花言葉はたしか・・・・・"あなたを守る"」
「素敵な名前だね」
キリさんに言われて、何故だか褒められているような嬉しい気持ちになって、顔を綻ぶ。
「二人のファミリーネームはどんなのなんですか?」
だから、つい、何も考えずに聞いてしまったんだと思う。
どこか真剣そうに聞いてきたフラルさんの声を忘れてしまって。
「・・・・・・・・・ないわよ」
「・・・え・・・?」
ただ真っ赤に燃える太陽が、ボクたちを静かに見ていた。
時間空きすぎて書き方を忘れ・・・!
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