ぼぉるひろい そのじゅうご






夕焼けに染まる空がゆっくりと夜の姿へと変わっていく。
その光景を見ながらも、クーンの頭からはさっきのフラルの表情が離れなかった。

「キリはね、ママを探してるの」

クーンの手を引いて歩くキリが呟く。
すっかり夜の色になってしまった空を見上げていたクーンが慌てて視線を向ける。

「ここにいたら、会えるかもしれないって思ってる」

さまざまな世界を渡るグロリオーサならば、いつか手がかりが見つかるかもしれない。
それを理由に幼いながらも一人で動くことをキリは選んだ。

「フラねぇもね、何か探してるのかも。キリにはわからないけど。 シーにぃもエンにぃも、みんなあんまり自分のこと話さないから」

みんな、笑っているけれど何かを抱えてる。

「・・・すごいん、です、ね・・・」

フラルさんも、シークさんも、エンストさんも、キリさんも。

自分よりも幼い彼女の強い想いが、繋いでいる手から伝わってきているような気がして
僅かにその手にクーンは力を込める。

「それならクーにぃもすごいよ」

「・・・へ?」

緩くカールされた髪を揺らしながらキリがクーンを見上げる。
キリの言葉がうまく理解できなくてきょとんとした顔をしていた。

「クーにぃも、妹探してるもの」

だからすごいよ、と言われて何故か目の奥が熱くなるのを感じて少し目を伏せる。

「クーにぃ?」

「なな、なんでも、ないです・・・っ」

ただ必死になって、無我夢中だっただけなのにそう言われたことが嬉しくて
同時に酷く、ティルに会いたいという想いがクーンの中で強くなる。
クーンのそんな気持ちに気づいたのか、心配そうに見上げていたキリが繋いでいた手を強く握った。

「・・・絶対見つけようね」

「・・・・っ、はい・・・!」

涙を抑えたクーンが笑顔で返事をすると、キリも嬉しそうに頬を緩めた。

「ね、クーにぃ、キリもっとクーにぃと仲良くなりたいの。敬語やめようよ」

「え、え?えぇと、は、・・・・うん。えと、キリさ・・・」

「さんもいらないよ。キリの方が年下だよ?」

「・・・き・・・キリ・・・・さん・・・・・・・っ」

恥ずかしいのか、それともクセなのか、なかなか呼び捨てに出来ないクーンに
キリはゆっくりでいいよと告げて、繋いでいる手を引っ張った。