-デートのお誘い





「シーくんシーくんっ!一緒に最近出来たカフェに行きませんか?デザートが格別らしいですよ!」

部屋で寛いでいたらしい、愛しのシーくんは少々眉間にシワを寄せながら、部屋に訪ねてきた僕を見る。

「何…急に。」

「せっかくの休みですし、甘いものでも食べて羽のばしましょうっ。」

そう言いながら、シーくんに見えるように美味しいデザート特集と書かれた雑誌を広げる。そこには最近近所に出来たという、洒落たカフェが載っていた。
普段これといって甘いものに特別興味のない自分が、何故こんな雑誌を持っているかというと、それはもちろん今目の前にいる甘いものが好きな彼のためで。
目の前で広げられた雑誌を一度見てから、シーくんがこちらに視線をもどす。

「…別にいいけど…。」

「ホントですか?!あ、もちろん僕の奢りですから!」

彼の答えが嬉しくて、思わず頬が緩む。二人っきりでこんな洒落た所に行くなんて、まるでデートのようで嬉しくてたまらない。

「じゃあ、準備が出来たらリビングで待ち合わせましょう。」

「わかった。」

お互いまだ部屋着だったため、ここで一旦準備のために別れる。(ホントはずっと一緒にいたいですけど)
部屋に戻って一人着替えている間も、口元が緩む。二人でお店に行って、小さめのテーブルの席に座って
大きめのパフェなんか頼んで食べさせあいっこしたり、シーくんの口元についた生クリームを舐めてあげたりなんかして…!
頭の中で繰り広げられる展開は止まることはなく。
そのまま着替えを済ませて、彼が待っているだろう、リビングへと足を進めた。
(思わずスキップしそうになりましたけど、我慢しました)







「で、」

少なくともさっきまでの自分はそれくらい浮かれていた。
デートとまでは言えなくても、二人で出掛けられることには変わりなかったのだから。
だが、現実というのはあまりにも無情で。

「なんだって、フラルとキリまでいるんですか…!」

リビングには愛しい彼がいた。たしかにいた。
しかし何故かそこには、呼んですらいない二人の少女(しかもバッチリ出掛ける準備が出来ている)の姿まであったのだ。

「エンストの奢りだってシーから聞いたから、せっかくだし?」

「あそこのデザート、キリも食べてみたかったの。ありがとうエンにぃ。」

にっこりと微笑む少女と淡々と述べる少女を見て、この二人、確信犯ですね…っ、と心中で舌打ちをする。

「休みだから、どうせなら皆での方がいいと思ったんだが。」

そう告げるシーくんの目に他意はまったくない。きっと本当にそう思ったんだろう。
彼なりの親切だったのかもしれない。(ただし、フラルとキリに対してのみの)
そんな彼の様子に、思わず反論しようと言いかけた言葉を飲み込む。(…どれだけ僕は報われないんですか…)

「…仕方ないですね…。とりあえず行きましょうか…。二人とも、くれぐれも僕とシーくんの邪魔はしないでくださいね!」

そう言って、聞こえてくる反論を無視して歩き始める。
ああ、どうしてこうなるんですか…。本当なら今頃シーくんと二人で、ドキドキしながら歩いていたはずなのに。
そんなことを思いながらも、店についてデザートを美味しそうに食べる彼を見たら、それだけで満足してしまう自分がいるんだろうなと、単純な自分に一人苦笑した。







雑誌見てよさそうなとこを見つけて誘ったというのに、報われないエンストのお話でした。
でもきっと、店についてデザート頬張ってるシークを見てにこにこご満悦になるんだ。(変態です)





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