OFF(2000.6.1) お腹がぎゅるるゅるって鳴って、胃の中の水が少し斜め上からちゅるると流れる音が背中の辺りから耳元までこっそり聞こえてきたら、それはお腹がすいた証拠なんだけれども、そんなときに限ってコンピュウターのモニターから目が離せなくて、本当はそこに映っている物にそれほど興味があるわけではないのに、なんだか今すぐ席を立つのが惜しいような気がして、無理矢理たばこを吹かして誤魔化したりするのだけれども、やっぱりお腹が空いているのは事実で、そうこうしているうちにトイレにまで行きたくなったなんていうことはよくある。
コンピュウターは何かをしてくれるわけではなくて、何にも教えてくれないんだけれど、時々自分が失敗したくせに不正な処理をしました、とか僕に文句を言って、文句を言うだけならまだいいんだけれども、断りも無しに黙ったまま動かなくなったりするのはどういう訳か説明して欲しいときもある。
僕はそのコンピュウターの中の真っ黒な画面に白い文字をガチャガチャと並べているんだけれども、あいうえお、はともかくとして、「か」がKとAの組み合わせでできあがってしまっているのはどうしてだか解らないのに、僕の知らない漢字がスペースキーを3回押しただけで出てきたりするのは便利で、ついつい難しい漢字を使って少しだけえらくなった気がするのはコンピュータの凄いところで、見習おうとか思ってみても、よくよく考えるとコンピュウターはことばをバラバラにちょんぎって、切って、細切れにして画面の後ろの方で組み立て直したり、くっつけたり、またバラバラにしたりして、そんな大変な作業をこつこつと小人がやっているんだろうけど、いざ画面に出てくるときは汗一つかかないで簡単ですよう、とでも言いたげにスイスイと文字が流れ出してくる。
コンピュウターは世界中に張り巡らされた電線を伝ってあっちに行ったりこっちに行ったりできる魔法の絨毯のように思ってしまうこともあるけれども、世界中の人たちはまだ僕のことを知らないし、僕もその人達のことはよく知らないからもしかしたらこの道具は世界中に繋がっていないのかも知れないけれど、世の中にはそれでもいいという人がたくさんいて、でも時々、電線越しにお話ししたことがある人達に会ってみたりすると、その人が本当にいたことが確認できたようで少し嬉しくなったりする。