About Rhythm And Police  



今や国民的人気を博している『踊る大捜査線』ですが、TV本放送は皆様御存知の971月〜3月。最初はそれ程の期待を持って見始めた訳ではなく、結構見れない回、ありました。でも、第10話と最終回をリアルタイムで見て、思いっきり後悔しましたね。心底「ちゃんと、全話、見れば良かった・・・」って、思いました。
それでも、まさか、スペシャルが放映されるとは思っていませんでした。一つには主演の織田裕二さんの『続編(?)嫌い説』があったし、そりゃあ青島くんには刑事として復活して欲しいけれど、私個人としては最終回の終わり方にかなり満足していたもので。

最近、連ドラの最終回って、結構滅茶苦茶な終わり方してるもの、多いですよね。私はあまりTVを見る方では無いんですが、どのクールでも最終回前2話くらいから集中して見たりします。まあ、これで結構そのドラマのつくりが判っちゃうもんでして。

私の場合、『踊る大捜査線』TV放映時にきちんと見たのは第1話、第2話、第4話、第7話、第8話、第10話、最終回―――確か、こうだったと思います(後にビデオ見て確かめました) 今、考えると第3話での青島くんと室井さんの邂逅とか、第5話のすみれさんのトラウマ解決とか、第6話の雪乃さんの過去にまつわる謎とか、第9話の本店と支店の間に横たわる距離感とか、肝心なトコロを見逃していたようですが。
しかし、私のような薄っぺらいミーハーはともかくとして、多くの熱いファンの支持を得たこのドラマがスペシャル2本、番外編1本を経て映画になった時は、正直、ビックリしました。TV放映で人気が出て映画化というのはありがちな話ですが、それに直ぐ飛びつかないで、間にスペシャルを挟んで映画まで盛り上げた製作者サイドには頭が下がります。『踊る大捜査線』に関わった人達のおそらく全員が、本当にこのお話が好きで、ていねいに、楽しんで作ったというのが伝わってきます。
私個人としては、まず、湾岸署の設定にやられたーという感じでした。あの界隈は子供の頃から縁のあるところなので、元々親近感(?)のある場所だったんですが、ホントに空き地だらけのなーんも無いトコロでして(湾岸署の刑事さんと同じ名前の元都知事が頑張って臨海副都心整備計画を練ったお陰で、今は色々出来ているみたいですが)、まさに鈴木都政のあだ花って感じ。都市博やるのを見越してあそこに警察署作ったはいいけど、青島知事に変わったら公約通り都市博中止にされちゃって、作っちゃったモンはしょうがないから警察はそのまま残って、でも周りは結局空き地ばっかで、ちまちました争い事や揉め事だけはいっぱい、というのは、大きく頷けるものでした。
だから、第1話を見て一番最初にビビッときたのは織田裕二さんでも柳葉敏郎さんでもなく、ナント湾岸署のビル・・・某社の潮見ビルだってことは知っていましたから。
それから、脇の俳優さんたちの素晴らしさ―――これには、ほんと、毎回ノックアウトされていました。
もちろん冒頭テロップを飾る(?)メインキャラを演じる人達は文句無く素晴らしい俳優さん達ですが、犯人役や脇役で出ている方々が、劇団や小劇場系の味のある役者さん達ばかりで、もう、ここまでやってくれるなんて〜!!!という嬉しさでした。
脚本も最高でした。私、君塚良一さんて、てっきり劇団出身の脚本家かと思ってしまいましたが、違うようですね。でもシチュエーションコメディというか、笑いのツボを完璧に掴んでいるようで、毎回、様々な笑いがあって、そのどれもお気に入りでした。
そして、音楽。松本晃彦さんはショコラータ時代からファンでしたので、名前を見たときに血が騒ぎました。でも、織田裕二さんの音楽をプロデュースしてたのは、知りませんでしたが。松本ファン失格かも(笑)
一番好きなのは、スリーアミーゴスが登場する時にバックで流れているあの音楽(「OTOBOKE」)! あの力の抜け具合がたまりません。次は「Moon Light」。切ないメロディーがグッと心に沁み入るようで。もちろん「Love Sombady」も大好きです。レゲエとして、とても素晴らしい曲じゃないでしょうか。
それにしても、TVでここまでのクオリティーを全体的に保ち得たドラマって、珍しいですね。今、ビデオ見ても、古く感じないですし。あ、でも「都知事と同じ名前の"青島"です」は、さすがに古いか・・・
ドラマ全体に関しては、いろんな人がいろんなところで言っている通り、ズバリ"組織論"の上に成り立っていると思います。私も過去に、俗に大企業といわれるところに勤務していましたし、中小企業で働いたこともありました。雇用形態も正社員・契約社員・派遣社員と一通り経験しました。一社だけでなく数社を渡り歩いた経験は、色々な意味で現在の仕事にも役立っていますが、何処へ行ってもついてまわるのが"組織"―――完全なフリーランスで無い限り、"組織"と無縁で働くことは無理ですから。『踊る大捜査線』はその辺のトコロを上手く突いたドラマだと思います。警察内部の"組織"性にスポットを当てたそのアイディアが、まず素晴らしかったです。
更に、脚本の君塚良一さんの取材力も、大きな勝因だと思います。随所にリアリティーがあって、ああ、こんなことってありがちだよね―――と思えるのが、人がフィクションに共感する第一歩ですから。
全く個人的な感想ですが、『踊る大捜査線』の中で、私にとってリアリティーがある登場人物は、スリーアミーゴス/桑野冴子(初夏SP番外編)です。スリアミはねー、本当にああいう人達、いるんですよ。いや、もっと酷いかもしれない。渡辺えり子さんの演じた桑野冴子お局も、巨大な企業になればなるほど生息している確率が高くなると思います。別にイジメられた訳じゃないですが、私の新入社員時代にも桑野さんソックリの先輩はいましたし。
青島くんや室井さんは、現実にはチョットいないかな?という感じがします。誰もが心の中に、あの二人に通ずるモノを持っているとは思いますがね。実際にはあそこまでやる人達はいないでしょう。
もしも、青島くんのような部下がいたら、フツーの会社のフツー(?)の上司からは、まず干されることでしょう。窓際に追いやられて、本筋とはかけ離れた仕事をさせられ続けるとか。室井さんも間違いなく懲戒免職。第1話のまま上に突き進んでいれば、生き残れるとは思いますが。まあ、会社によって若干の違いはあるとはいえ、日本企業での一番大きな出世哲学は「出る杭は打たれる」ですし。
余談ですが、アメリカには全く逆の諺があり、「ギーギー音を立てる扉の蝶番が、一番に油を注してもらえる」(テキトーな訳だ)のだそうです。国民性の違いがよく現れているような気がします。
でも、青島くんや室井さんをひょっとしたらいるかもしれない・・・という風に描いた君塚良一さんの筆と、俳優さん達の演技力と、本広克行/澤田鎌作両監督の演出が三拍子揃って、亀山千広プロデューサーの総指揮の元に空前絶後の人気を得たのでしょう。
たかがTVドラマ、されどTVドラマ―――本当に素晴らしい作品だと思います。