さ行


 最後の億萬長者 


   
Le Dernier Milliardare ('39) フランス
監督:ルネ・クレール 出演:マックス・デアリー、ルネ・サン・シール、マルト・メロー

観光収入を唯一の財源とするヨーロッパの小国。
財政は火の車、女王は最後の手段として王女を外国に住む銀行家と結婚させて融資を受けようとすると、ことごとく食い違って珍事件の連続へ。

ルネ・クレール産のスクリューボール・コメディー。
小国の国民たちをはじめ、みーんな呑気さん(笑)
クレールの下町の人々もそうだったように、愛すべき人々ばかり。
だけど、そんな中に当時の世界情勢を風刺した要素もあり、クレールは世界に向けて笑いというエッセンスとともに投げかけているのです。

それにしても終始笑いっぱなしでした。
このドタバタコメディー、どこかで見たような形式だなぁ…と思ったら、吉本新喜劇でした。
たしか舞台は結婚式場で、新郎新婦、その関係者たちが右往左往にドタバタ走り回るといった内容です。
なんと偶然!この映画も「結婚」」がテーマだったりする!
吉本の原点はルネ・クレールにあり(ちょっと嘘(笑))
  


 死体を売る男 


   
The Body Snatcher ('45) アメリカ
監督:ロバート・ワイズ 出演:ボリス・カーロフ、ベラ・ルゴシ

「サウンド・オブ・ミュージック」のワイズ作品。
フランケンシュタインのカーロフ、魔人ドラキュラのルゴシの顔合わせということでワクワクしながら見てたんだけど、ルゴシの扱いが相変わらず不憫(笑)
ふふふ、二人ともライテングが下から当たってるし、上目遣いだし、恐いモード醸し出してるし。
死体運び人カーロフと解剖医のヘンリー・ダニエル、しつこく付きまとい、「何が欲しい?」と聞けば「何も欲しくない」と答え、「友達だろ?」と言い続けるカーロフ。
「セルロイド・クローゼット」の見過ぎでしょうか、二人の関係は歪んだ愛情にさえ感じる私…。
  


 シャルロット・フォーエヴァー 


   
Charlotte For Ever ('87) フランス
監督:セルジュ・ゲンズブール 出演:セルジュ・ゲンズブール、シャルロット・ゲンズブール

おほほほ、こりゃセルジュ・オヤヂの自慰映画ですか?
「寂しげなオレなんだぜ」「オレの娘可愛いだろ?」な、映画です。
この人、やっぱ詩人なんでしょうかね?才人っていうのかな、「ばかまるだし」と思えるんだけど憎めないわね。
だから女はセルジュ・オヤヂに夢中になるのか…。
  


 親愛なる日記 


   
Caro Diario ('93) イタリア
監督:ナンニ・モレッティ 出演:ナンニ・モレッティ、ジェニファー・ビールス、アレクサンダー・ロックウェル、レナート・カルペンティエリ

イタリアのモレッティ監督が本人として登場する日記体映画。第一部でスクーターに乗ってイタリア巡り、2部は島巡り、3部は医者巡り、となっている。

自分がモレッティ・フリークでないことを悔やんでます。
っつーか、うちのレンタル店にはモレッティ作品なんて置いてないです、ちきしょっ。
今まで自作自演の作品ではミケーレの名前で登場していたモレッティだったそうです、だけど今回は映画監督本人として登場です。

イタリア巡りでは、モレッティがベスパに乗り、ローマの街並みを走り抜ける。
かなりの長録りである。だからこそゆったりしている、そして開放的。
モレッティをはじめとするイタリア人の気さくさを感じたり、音楽があると思わず歌って踊ってしまう国民性を感じ取れる。
モレッティのアイドル、ジェニファー・ビールス夫妻と出くわすシーン、興奮気味に喋るモレッティ、困った顔のジェニファー、何言ってんの?と不思議顔のロックウェルの対比が最高に可笑しかった。

島巡り、これが一番笑いを誘うエピソードかも。
モレッティの友人は静寂な仕事場を島から島へ探し求めます。
彼はテレビを見ることを禁じられてる中、移動中についテレビを見てしまい、取り返しのつかない結果を招きます。
その行程が楽しくてたまりません。
他にも各島々の生活の違いのエピソードなんか最高。ほのぼのしてて笑いっぱなし。
今回はモレッティはサブに回り、友人がメインです。

最後はもしかしてこれがモレッティらしいかも、と、勝手に思った医者巡り。
原因不明の激しい痒みに襲われたモレッティが皮膚科で往診してもらうが、処方してもらった薬では快復に向かわない。
評判の皮膚科や、有名な皮膚科の権威に見てもらい薬を処方してもらうが一向に直らない。
結局、精密検査を受けると手遅れの癌という結果に。
これがまたまた一転して、最終的には命には別状はない癌とわかり、摘出して元気となるモレッティ。
そしてラストシーン。
皮肉たっぷりにモレッティが言うセリフ。
これを聞いて、私は「しまった」と思った。
…この人の映画が見たい!なんなんでしょ、この髭面のオッサンを可愛く思ってしまった。

彼はイタリアのウッディ・アレンと呼ばれているそうですが、私はアレンよりモレッティ派だ。
いや、彼の作品はこれが初めてだから、気が早いかしら。
でも、絶対私は好きになるはず。

ああ、悔しい、もっと早くにモレッティに出会いたかった。