「めっずらしー、今日のメシ、野菜ばっかじゃん」
食卓につきながら、京は言った。
庵は無類の肉好きである。もう、信じられないくらいの量を一人で食べる。
そんな庵と暮らすと、否応無しに肉を食わされるのだが。
「ああ、栄養のバランスのことも考えなければと思ってな…」
野菜が嫌いなわけではなく、肉を異様に愛しているだけなので、食べられないわけではないのだ。
だから、本当にたまーに、こういう野菜のみの食事も作ってみたりする。
「ふーん、まあいいや。いただきまーす」
手を合わせて食事の挨拶をしたと同時に、京はスープの器に手を伸ばす。
ずずず、と決して上品とは言えない態度でスープを啜りながら、京は中から出てきたモノに、思わず吹き出した。
5p程度の、白い変なモノが入っていたのだ。
「なあ、コレ何…?」
箸で器用にソレを摘み、目前に曝す。
見ると、人型をしている。
頭と思しきところには小さな花。全体的に白くていかにも怪しい…。
「そこのプランターに生えていたのだ」
「ハッ…生え…っ!?」
妙な声を上げた京を、庵は不思議な顔をして見た。
「見るか?」
ベランダに続く窓にかかっていたカーテンを庵が無造作に開く。白いプランターにびっしりとその妙な生き物が生えていた。
このプランターは以前庵が買ってきてたもので、今は使われていなかった。
「土を入れたままにしていたから、何処からか種が飛んできてここに根をおろしたのだろう」
種があるのかどうかも怪しい。
しかし、こんな怪しいモノをよく食べる気になったものだ。
「鳥が時々来てはコレを突ついて行くのでな。食えるかと思って試しに食べてみたんだが、意外と美味かった」
「んなもん試しに食うなぁぁぁぁぁっ!!」
京が絶叫する。
不意に京の脳裏に嫌な予感が走る。綺麗に並べられた料理を箸でかき分けていくと…。
「ぜ、全部その変な生き物じゃねーか!!」
真っ白なアレ、緑色のコレ、味付けされたソレ。
全部その生き物だった。
「…あ」
何を思ったか庵が窓を開けてプランターを持ち上げ、家の中に入れる。
「?」
思わず覗きこむと、その生き物がぷるぷると震えていた。
「なんだ?」
ぷるぷるぷるぷるぷる…。
震えは一層強くなり、プランター自体がごとごとと床の上で跳ねるほどに強くなったとき。
庵がおもむろにその生き物を指で挟んで土の中から引き摺り出した。
じたばたじたばたじたばたじたばた。
掴まれた生き物は、あろうことか束縛から逃れようと暴れ出した。
「生きて…る…?」
茫然とそれを見る京。
こんな植物(?)は見たことがない。
自分の意思で動きまわる植物など。
ぼーっとしている京を無視し、庵はその生き物を開いた手に持ち替えて二匹目を摘み出した。
ずぼずぼずぼずぼ…。
凄い勢いで震えているソレを引き摺り出す。
全てを引き摺り出し終えた庵は、ゆらりと立ちあがり、キッチンに向かった。
「い、庵…?」
後をつけていくと、なべに水を入れ火をかけている。
どうするのだろうと見ていると、沸騰した湯に無造作に一匹投げ入れた。
ぐらぐらと煮立った熱湯にその生き物が投げ込まれて行く。
生き物は余りの熱さに悶え苦しむ。その様子を見ながら。
庵が笑った。残酷な笑顔を浮かべて、一匹、また一匹と投げ込んで行く。
ぷかり、と初めに入れた生き物が白くなって浮いてきた。
「死んだか」
くくくっと笑って菜箸で白くなったソレを突つく。
それはさながら、地獄絵図とでも言おうか…。
地獄の釜に入れられた罪人と閻魔。
そんな感じだった。
(うーわー、庵イっちゃってるぅぅ)
ぐつぐつと楽しそうにその生き物を茹でている庵を見ていられなくて、京は寝室に戻った。
結局その日は夕食はそれでお開きになった。
−翌日−
「おお!」
庵の妙に感心した声に、目を覚ます。
(あれ、庵もう起きてんのかよ)
寝ぼけながらそう思った。庵は低血圧で、朝が弱いはずなのに、こんな時間に起きているなんて。
「んー、いおりぃ、なんかあったのかぁ」
目を擦りながら寝室から出ると、緑色のモノが目に飛び込んできた。
人型で、頭に小さなピンクの花。
もしや……。
「見ろ、京。また生えてきているぞ」
楽しそうに笑う庵に頭痛がする。
そう、昨日の生き物がまた、びっしりとプランターに生えていたのだ。
「これでまた楽しめるな…」
にやり、と庵が笑った。
END
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<めそさんのコメント>
アッサム! アッサムです!!
5pのダーリンです。
とりあえず、どんな風に生えるのかわからなかったんで、こげなふうにしてみました。
でも、アッサムってマンドラゴラみたい。
庵×アッサムでした。
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しらす:こえぇーーー!!!!Σ(゜Д゜;)白く浮いてきてるアッサムがこえぇーー!!
って、私が原案者だけど。一部に人気なだけでここまでキャラとして独り立ちするとは思って無かったです…。う、嬉しいのかむなしいのか…。(^_^;)
まさか小説まで書いてくださるとは。それは嬉しいですがv
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