弱点―――――めそ様


 八神さんがくすぐったがりなのに気付いたのはいつだっただろう。
 そうだ、前の大会中、服についてたごみをとってあげた時だ。

 触れた途端、びくんと大袈裟なまでに反応して。
 振り返った顔は赤かった。
 その顔が可愛くて、でも綺麗で。
 見惚れていたら、草薙さんに燃やされたんだっけ。

「何してるのかなー、真吾くん」
 超低音、不機嫌全開な声で名前を呼ばれて、気付いたら無式がきた。

「その技、使えないんじゃなかったんですか?」
 って聞いたら、
「使えないんじゃなくて、使わねーんだよっ!!」 
 と蹴りをくらった。

 …とにかく、八神さんがくすぐったがりだってことを知っているのは、
俺と草薙さんくらいで。
 草薙さんは、俺が八神さんの弱点を知ったってことが気に食わないみたい
だったけど。

 でもすいません…。俺、他の人に喋っちゃいましたぁぁ(泣)。

 あのとき紅丸さんにお酒を飲まされていなければ
……いや、いい訳は男らしくないぞ真吾!

 とにかくここは素直に謝っておくしか…。
 というわけで、俺は今、八神さんのマンションの前にいた。

 ピンポーン。
 インターホンが鳴って、しばらくしてから八神さんが顔を出した。

「なんだ、矢吹か。どうした」
 なんだか疲れたような顔をしている。玄関には八神さんと草薙さんとあと二組、女物のブーツが揃えてあった。

「いえ、忙しいならいいんです。また来ます」
 そう言って立ち去ろうとした俺を、八神さんが引き止める。
中へ入れと促されて、恐る恐る中に入ると見なれた顔があった。

 草薙さんと、あれは…KОF´98で一緒にチームを組んでいた、
たしか…マチュアさんとバイスさん。

「なんだよ真吾。お前なにしにきたんだよ」
 不機嫌な口調に俺はビビる。でも、決めたことはきちんとしなくては!!

「えーとですねぇ……実は俺、草薙さんに言わなくちゃいけないことがあるんです」
「なんだよ」
 いつのまにか八神さんが俺の分までコーヒーをいれてくれていた。
 秘書のお二人も、興味津々で俺を見ている。

「あのー、八神さんがくすぐったがりだってこと……紅丸さんに喋っちゃいましたぁぁ」

 ……………。
 あ、あれ? なんにも起きない???

 絶対殴られて、蹴られて、必殺技、超必殺技をくらった挙句に東京湾に沈められると思ってたのに…。
 とか思ってたら。

「しーんーごぉぉぉぉぉぉぉ!!」
 地の底から響くような草薙さんの声。
 ああああ、やっぱり沈められるぅ〜っ(泣)。

「私もそれ聞いたわ。二階堂から」
 マチュアさんが楽しそうにそう言った。
「私も聞いた。だからそれを確かめに来たんだ」

 その声に、草薙さんと八神さんが唖然とした。
 とりあえず、俺へのおしおきは持ち越しになったみたいだ。

「バイス、ちょっと手伝って」
「始めからそのつもりだ」
 突然行動を始めた二人に、八神さんは抵抗するヒマもなく押さえつけられた。

 そして。
 マチュアさんが八神さんの背筋に人差し指を当てて、一気になぞった。
「っひゃあっっんん…」

 うわっ…。い、今の八神さんの声…?
 なんて言うか……い、色っぽいって言うか………その…。

「おもしろーい、バイスもやってみなさいよ」
「当然だ」
「な、こら、やめ……ん、やああっ! ひゃうんっ、ぅやんっ!!」

 必死に抵抗するけど、力が入らないのか、起き上がることもできないらしい。
 その間に、八神さんにのしかかった二人は背筋をなぞったり、
脇をつついたりしていた。

「…やぁっ…ひゃぁぁぁんっ…きょ、京ッ…な、なんとかし…ぃ、ふあ…っふ」
 その声に、草薙さんがやっと我に返って、なんとか二人を引き剥がした。
 助けられた八神さんは目に涙を溜めていた。その姿も色っぽい。

 はやくこの二人から逃れたいはずなのに、八神さんは一向に立ちあがる気配がなくて。
 草薙さんがどうした、と心配そうに聞くと、
「腰が抜けた」
 と一言。その声が可愛くて、思わずほぅ、と溜息をつくと草薙さんがこっちを見た。

 ヤバイ。
 表情がない。これはもう本気で怒っている。

「あはは、楽しかった。じゃーねー」
「来たばかりでなんだが、またな」
 無責任な美女二人は、八神さんで遊んで満足したのか、のんきに帰っていった。

 ず、ずるいっ。俺も帰りたいぃぃ(涙)。
 八神さんを抱え上げてソファーに座らせた草薙さんが、ゆぅーっくりと幽鬼のごとく振り返った。

「真吾、お前覚悟はできてるよなぁ。庵の弱点を知った挙句にそれを他のヤツに喋って、その上庵のこーんな色っぽい声聞いたんだもんなぁー」

 さっ、最後のは不可抗力ですぅぅぅぅぅっ!!
「きょ、京、お前何するつもりだ…?」
 八神さん、決まってるじゃないですか!

「決まってんだろ! 殴って、蹴り入れて、必殺、超必をくらわせたあと、東京湾に沈めるんだよ!!」

 やっぱりぃぃぃ〜〜〜〜〜〜(大泣)。
 助けてぇぇぇぇぇ、と叫んでみても、この場で草薙さんを止めることのできる唯一の人、八神さんは腰が抜けた状態で動くこともできない。

 もうダメだ〜〜〜〜〜っ!!

 八神さんが止めてくれたおかげで俺は沈められずに済んだ。(超必まではくらったけど)

 ありがとうございます、八神さん。もう二度と八神さんの弱点を人に言ったりしません。
 ところで最近、紅丸さんの姿が見えません。

 噂によると、闇討ちに遭って入院してるとか。それも大火傷を負って。
 言わなくても誰が犯人か分かっている俺は、はたと恐ろしいことに気付いた。

 そういえばあの酒盛りの場に、K’さんやマキシマさんや神楽さんや、七枷さん、
クリスくん、シェルミーさんもいたんだ……。

 あああああああっ、こっ…今度こそ殺されるぅぅぅぅぅっ。


 真吾が病院のベッドの上でこれから来るであろう恐怖に身を震わせていた頃、草薙京は最後の邪魔者を片付けていた。 

そして二日後。
 真吾の入院している病院に、恐怖の大魔王が降臨した。

 

END

 

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<めそさんのコメント>

 なんかもー、ダメです。
 なんでこんな話書いてんだろう。
 趣味丸出し。
 でも真吾になって書くのは楽しかったです。

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しらす:だめですか?私的には大オッケーですがv真吾好きなんだも〜んvv
書きやすく、読みやすい!!サイコーだね!!
…って、どうでも良いけど、庵、可愛いぃーんvvv
お、おれもくすぐりてぇ〜〜!!!
東京湾に沈む覚悟で、ここは一つ…!!(マジ?)