■■■■■小説

 

愛が痛い
「草薙、貴様を殺す・・・」
またかよ。奴のこのセリフを聞くのはもう、何度目のことだろうか。はあ、数え上げたらキリがねぇ。
殺す・殺す、死ね・死ね・死ね・死ねってお前は死ね死ね団か何かかっつーの。
はあ、なんかもう、どうでもいい気分。
「俺が怖いのか?」
おっと、呑気に考え事してる場合じゃねぇな。
相手が相手だけに、気を抜いたら本当に殺されかねない。だいたい奴も俺も、そう気が長い方じゃねぇからな。
そろそろキレても可笑しくない頃だ。とかなんとか考えてたらやっぱり・・・。
「どうしたぁぁぁ!!」
ゴワァ!!!一見冷たいようで、全てを焼き尽くす灼熱の蒼炎がこちらへと放たれた。それを寸でのとこでかわして、
「てめぇの都合で生きてるわけじゃねぇ!こっちはこっちで忙しんだよ!」
と怒鳴り返す。クックック、と奴は耳障りに笑って一言。
「そんなことはどうでもいい。俺にとって一番重要なこととは・・・草薙、貴様をこの手で葬り去るとこだ。」
うわぁ〜・・・やっぱ融通の利かない奴ぅ。
「だいたい貴様のどこが忙しいというのだ。
高校だって、そうまじめに通っているとも思えんが・・・。だいたい貴様、いつまで高校生している気だ。
いい加減卒業してくれ。でないと、貴様を敵視しているこっちが恥ずかしいでわないか。」
奴は、その冷たく色の薄い瞳と薄い朱色の唇に苦笑をにじませてブツブツと小言を言い出した。
そんなこと、今じゃお袋ですら呆れて言わなくなったことばかりである。
「それはそれは・・・。だったら卒業してやんねぇ。・・・っつたら、どうする?」
「何を言っている?お前、自分自身のことだぞ!もっと真剣に・・・」
奴の言葉が途切れた。間合いを詰めた俺が、その細い手首を捕らえたせいだ。突然の俺の行動に、奴は何が起きたのか分からないで居る。
「お前に言われたかないね。お前こそ、もっと自分自身のこと考えろよ!・・・手首、また細くなってる・・・。無茶なこと、すんじゃねぇよ!」
うわ!何言ってンだろ、俺。でも、こいつを前にすると俺は俺が止められねぇんだ・・・。
「何を言い出すかと思えば・・・。考えているから、お前を殺しに来たのだろう?
さっき俺が言ったこと、聞いてなかったのか?言っただろう?俺にとって一番重要なことはお前を殺すことだと。」
ああ、予想通りの奴のセリフに目眩を覚える。そうじゃねぇ。そうじゃないんだ。
「そう言う意味じゃなくって!!お前・・・もっと躰を大切にしろよ!痛いんだよ、お前を見てると!なんか、痛いんだよ・・・!」
ずっと掴んだままだった奴の腕を力任せに引き寄せて、躰ごと抱き込んだ。やはり、以前より大部窶れてしまっている。
細い腰などこのまま力を加えれば砕けてしまうのではないだろうか?いや、女子供じゃあるまいしそんなことはないだろう。
・・・そうはわかっていてもそう考えてしまえるほど、俺には奴の衰弱の度合いが深刻なモノに見えた。
「・・・離せ、草薙!」

続く

<Lee±様のコメント>
一応、コメント。
ああ!区切れ悪いけど、待て「次号」です!!
じゃ、レイアウト(タイトルも)はしらすさんに完璧任せました!
僕はこれから逃亡します!
何処が京庵やねん!何処が「漢」やねん!
いたたた!愛が刺さってますよ、僕の胸に君の愛がぁぁぁぁ!(逃げた!)

<しらすのコメント返し>
ごめんなさい、もう載せても良かったのかな……?ダメでしたか…?
愛がいたいわー!!私も痛いー!!(なんちゅーコメントじゃい)




下弦の月
 傷付いた躰を引きずり乍ら、京はそこへ向かっていた。
 不意打ちだった。意味も無く街をブラついて家に帰る道すがら、たまたま通った人気の無い公園で。付けられていたのか。奴等がそれなりの使い手である事は、手合わせをして解った。
 しかし―――――――     
 京は、全くその気配を読む事が出来なかった。不覚。
 口の中で鉄の嫌な味がする。骨に罅でも入ったのか、脇腹が鈍く痛んだ。 
(ちきしょう・・・・・)
 額から冷汗が流れ落ちる。視界がやけに狭い。
 奴等はネスツか!?否、そんな筈はない。例の事件で消滅した筈だ。では、一体誰が。
 以前の記憶が、京の脳裏に浮かんだ。彼の力を欲した組織により、彼は己が存在理由さえ揺るがし兼ねない状況に追い遣られたのだ。その中で生まれた「K'」、そして多くの名も無き彼のクローン達。
 また、そのような愚挙を講じる輩が、現れでもしたと言うのか。
 京は苦し気に舌打ちをした。
 もう2度とあのような下らぬ事態を、引き起こしてはならない。
 もう2度と―――――――
 あの時の奴の言葉が、京の胸を我知らず締め付けた。          
 見上げれば、下弦の月。そのほの暗い光が、京を冷たく照らし出している。
 蒼炎の下弦の月。京を見下して嘲笑ったような、そんな気がした。貴様はその程度の物だったのか、と。
 重たい脚を引きずり乍ら、京は遠退きそうになる意識を引き戻した。そして蒼い月を・・・否、月ではない、月を思い起こさせる冷たく鋭利な男を、奴を睨み付ける。
(俺様がそう易々とやられるかって?馬鹿言ってんじゃねーよ)
 その口元には、笑みが浮かんでいた。
(遊びが過ぎただけだ。てめえとの約束がまだだってーのに、こんなとこでおっ死んだんじゃ張り合いねーだろ?) 






『――――――――――八神――――――――――!!!』




 

「・・・・何をしている・・・・」
 聴き馴染んだ低い声に、京は瞼を開いた。冷たいアスファルトの感触を頬に感じる。すぐ側の、視界に入った黒い靴を辿れば、そこには見慣れた男の姿があった。
 京の躰は既に鉛のように重く、冷たくなっていた。痛みはもう感じない。
「俺が手を下すまでも無い、下らぬ人間ならば、そのまま死ね」
 感情の見えぬ言葉を吐き、男は様無く死の淵を彷徨う京をただ見下ろす。
(死ぬ訳、ねーだろ?まだ約束が・・・・)
 口にしようとした言葉さえ、声にはならない。
 ここまで辿り着いたと言うのに。奴の、八神の所までやっと辿り着いたと言うのに。
(俺様ってば、格好わりー・・・)
 見上げれば、下弦の月。闇に消え往く僅かな時に陽を追い求め、憎しみの炎で己の身すら焼き尽くすが如く、陰を落とす。
 その光があの時と同様、ふと悲し気に歪んだのを、京は最後に見た、気がした。

終わり

<ジヲ様のコメント>
今日は。暦の上では既に秋の筈ですが、未だ暑い日が続いております。如何お過ごしでしょうか。

同盟の方での企画に投稿させて頂こうと思い、今回メールさせて頂きました。
しかし、確か「漢な京様」だった筈なんですが、全く漢ではございません。反対に格
好悪いです。でも、一応打ってしまったので勢いだけで送らせて頂く事にしました。ご不要ならば、削除して下さって結構です。

で、まだメールでこう言う物を送った事がないので送り方解らなかったんで、訳も解らず一応添付ファイルで送信しました(泣)。

<しらすのコメント返し>
はああう、かっこいいですーvvvこういうKOFテイストの京庵、大好きなのですわー!!はうはう…!!漢じゃないですか、十分!!ありがとうございました!!




 天高く舞い上がる炎の柱。
 屋敷から立ち昇る煙は空を覆うほど黒く、不吉な模様を描きながら風に捕らわ
れ西へ流れていく。
 もはや叫ぶ声も聞こえない。
 焼き尽くされ崩れ落ちていく屋敷をじっと見つめながら、京はその燃え盛る炎
と同じ色のそれを右掌に上らせた。
「あっけないモンだな…。こんな簡単に済むなら、もっとさっさとやっときゃ良
かった」


 お前を、失う前に───


「なあ…庵」
 重体の庵が半ば無理矢理八神家に引き取られたのが先月の末。
 その後幾度となく面会を求めたが、結局一目会うことすら叶わなかった。
 そしてそのまま…
「力づくで取り戻しときゃ良かった。無理にでも会えば良かった。今なら…あの
時どうすれば良かったか、こんなにも判るのに…」
 どうして、あの時それが出来なかったんだろう。
 大切なお前が、この塀の向こうで、まだ確かに生きていたのに。
 自分は何をためらっていたのか。
 何故自分は、庵を取り戻すために本気で闘えなかったのか。
 けれど今なら判る。
 自分が後手に回ってしまった理由、こんな結末になってしまった理由、そして
そのすべての構造が。
 ───だから辛い。


「お前は…満足かもしんねーけど」
 庵の死とともに京の手によって崩壊した八神家。
 庵が嫌悪し、それでも大切に大切に守ってきた八神家。
「お前は俺に、八神を潰させたかったんだろ?しかも、お前がこの世から消えた
その後に。…我侭な奴だぜ、本当に」
 そして、京は左手を眼前に掲げてみた。
 気を込めると、吹き上がったのは赤ではなく、庵と同じ青白い炎だった。


 『あのとき』───京は庵の最期を確かに感じた。
 庵がこの左手に宿ったその瞬間に。
 そして庵が心の奥底に秘めていたすべての感情や思惑も。


「なあ…次は何がお望みだ?全部叶えてやるよ」
 庵がやりのこした、すべての望みを。
 庵が宿った、この左手で。
「そして最後には、この青い炎で俺を殺してやる。一番のお楽しみだろ?」


 京は黒い瓦礫と化した屋敷の残骸を無造作に踏みしめた。
 黒い炭は未だ熱を散らし続け、京の足に崩されるたび赤い火の粉が舞い上が
る。
 京が脇目も振らず目指すのは、広い敷地の中の一番奥の館。
 愛しい人が死躰として文字どおり処理されようとしていた、その儀式の間。
「運が良けりゃ…骨ぐらい拾ってやるか」
 そんなことを呟きながら、けれどその眼は真剣そのものの色で、それを探して
いる。
 草薙の炎で焼かれれば、骨すら残らず消えると判っていても───


 黒の中の白。
 ただひたすら、京はその白を探す。
 愛しい人。その最後の姿は『白』であってほしい。
 そう、願いながら。


「庵…なあ、俺を呼べよ。拾ってやるからさ…」
 身体の中で二つの焔が絡み合い荒れ狂う。
 その感覚に心地よく身を委ね、京はまるで狂人のように微笑した。

終わり

<てて様のコメント>
ところで漢京…
あああ本当は漢らしくフンドシ京を描こうと思ってたのにタイムリミットです。
でもこれって何か他の人とネタかぶりそうだしね…
つーわけで、小説。しかしこの期に及んで『漢とは何ぞや』という事で我に返り
首をひねっている私…。漢京…漢庵…(こらこら)

って…どこが漢やねん…!!!!
なんか訳わかんなくなっちゃった…しくしく。でも修正する時間な───い!!
まあいいか。私が恥かくだけだわ〜〜(泣)
おかしいなあ。ホンマは闘う京を書く筈だったのに。だってKOFって、闘って
る京の激烈カッコよさに魂抜かれたんだもん!!!そもそもの始まりは漢京だったのよ〜〜〜〜(のわりに、このていたらく…)

<しらすのコメント返し>
漢京はふんどし!?(笑) かぶってませんて!!すっごく好みですわー!!!
なんでてて様は絵も小説も平気で上手にかけるのでしょうか!!!羨ましいかぎりでございますわ!!!
京様は闘ってステキ度格段アップですからねーvvvうひひ・・・vv