無題―――――御調様 |
「いーおりちゃあぁーん」 身も心もぽかぽかするような、うららかな春の昼下がり。 悩みと幸せは一度にやってきたりする。 「・・・姉ちゃん」 陽光を照り返すのは、膝まである月色の髪。下のほうで結ばれた、大きな赤いリボンが明朗さを感じさせる。 「珍しいじゃん、挨拶・・・だけって」 いつもだったら名前を呼ぶと同時に、アメフトのタックルよろしく、飛びついてくる ところなのだ。 しかしこれは、あくまで庵ーー格闘家に彼女流の『挨拶』をした場合である。 常人なら、優にニメートルは吹っ飛ぶ。 「たまにはいいでしょ。どう? 元気してる?」 二人の容姿が似ていないのと姉が童顔なせいで、並んで歩くと姉と弟と言うより、恋人同士か兄と妹に見える。 「うん、平気。ちょっと居候のせいで忙しいけど」 「相変わらず面倒見いいわねぇ。でもお姉ちゃん、そんな庵が大好きよ!」 心からいとおしげに、庵の髪をくしゃくしゃと撫でる。 (・・・ああ) 自分が姉や彼に惹かれてしまうのは、どうしてもできないことを、あまりにも簡単にしてしまうからかもしれない。 こんなにも素直に、自然に、「好き」と言えること。 「どしたの、急にボーッとして」 「あ、いやちょっと・・・立ちくらみ」 心配そうに眉をひそめ、姉が見上げてくる。 元々嘘がつけない性格の庵であるが、この深い蒼の瞳で見つめられると、なおさら嘘がつけなくなるのだ。 「まあいいわ」 言葉を濁す庵を見て悟ったのだろう、姉はそれ以上追及してこなかった。 「とにかくほら、元気出して!!」 がざざさざさざっ、ずこくべしゃあ! 景気付けのための一撃は、すっかり油断していた庵の後頭部にカウンターヒット! 「あああああいーおーりーー」 結果、至近距離から電柱とブロック塀にぶち当たり、黒い上着が赤く染まるという、 そりゃもう恐ろしい事態となっていた。 「庵ーダメよー、死なないでぇえ!」 八神れな、二十三歳。職業漫画家。 "暴走する核ミサイル"の異名を持つ女。 彼女の存在は、一生庵を悩ませ続けることとなる・・・ END −−−−−−−−−−−−−−−−−−− <御調さんのコメント> 駄文・・・ですな。あはははは。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−− しらす:かーわーいーいー!!きゃーー!!姉ちゃん、可愛い!! |