夏の思い出―――――御調様 |
「暑い・・・」 「確かに・・・これは辛いですねえ・・・」 少し歩くたびに電信柱に寄り掛かっては、息をはずませている少女と青年。 もちろん、少女は八神れなのことである。 青年の名は、八神暁。庵の偽者だ。 茶色の髪にそれほど高くない背、優しげな双眸。一目で性格の良さがわかるだろう。 一応、姿かたちだけは八神庵に似てはいた。 「ダメだわ・・・暑いのとクモだけは、絶対にダメ・・・」 今日は三十五度を越す炎天下。暑さに弱い彼女と北海道に住んでいる暁にとっては一 溜まりもない。 思わず道端に、ずるずると座り込むれな。 「倒れないでくださいよぉ、れなさ〜ん」 暑さに弱い二人が、わざわざ何をしているのかと言えば、つけているのだ。 庵と京を。 ・・・ことの起こりは数十分前に遡る・・・ 庵を応援にKOF会場に来た彼女が、友達の暁を発見したのがそもそもの始まりで あった。 「・・・なんで、ここにいるの?」 「わたくしにもよくわかりません」 まさか人に手をあげられない暁が、格闘大会にエントリーしているとは思うまい。 いや、それ以前に何故ちづるは、彼に招待状なぞ送ったのだろうか。 それぐらい調べろ。神楽財閥。 そんなことはさておき、庵も見つけ談笑していた最中。 「庵ぃぃぃぃぃぃ!!」 ドアを蹴破り、飛び込んでくる影一つ! 草薙京だ。 「いちいちそーしねえと、ドア開けらんねえのか? お前は」 「うるせーなー」 京の方に目も呉れず、庵は言った。 こういうことに慣れてしまったのは、ひとえに姉のせいだというのは公然の秘密であ る。 「なぁ、庵」 いきなり抱きつかれることにも。 「ちょっと、俺と出かけようぜ」 「えぇ? 今から?」 「庵だって、たまには静かな所に行きたいだろ?」 ・・・京の言葉の、真意になど、気付くはずがない。 最初庵は嫌そうにしていたが、 「いいぜ。でも、少しだけな」 結局最後の方には、笑って承諾していた。 走り去っていく二人を見て、れなの口元に怪しげな笑みが刻まれる。 「ふふふふふふふ」 読んでいた雑誌を、ぱぁん! と威勢良く閉じる。 「追いかけるわよ、暁くん!」 「追いかけるって・・・何、するんですか」 「物書きの宿命ってのは、人生の切り売りよ。 だから、あたしの人生の一部分を占める庵ちゃんにも、協力してもらわないとねv」 「つまり、マンガのネタにするわけですね」 止めるのは無理だとしても、止める素振りくらい見せてやれ・・・暁・・・ 実は、こいつもいい性格しているのかもしれない。 時は戻って今現在。 公園のベンチに座って、話している二人。 木蔭から、それを覗くのも二人。 「暁くん、もーちょっと前に行ってくれない?」 「あ、押さないでくだ・・・」 ごげっ。 押された暁がすっ転んだ。 「こらーーーーーーーーーーっ!!」 即座に飛ぶれなの叱責。 「あああああ、す、すみませええん!」 悪いのはれなの方なのだが、つい思わず謝ってしまうのが暁だ。 「・・・八神の姉ちゃん・・・」 「ばれちゃったものは仕方ないわね」 つかつかと彼女は歩み寄り、きゅ、と京の手を握り締める。 「お姉ちゃんは、そういうの大歓迎よv」 「・・・・・・いいの? 手出して?」 聞くな京。 「もちろんよ」 答えるな姉ちゃん。 ちなみに、庵の耳は暁がしっかと塞いでいたりする。 「庵・・・ホテルに戻るか」 目がギラついているように見えるのは、太陽の光のせいなのか、それとも本性が垣間 見えているせいなのか。 「あ? ああ」 最後まで何も知らないのは庵だけなのだ END −−−−−−−−−−−−−−−−−−− <御調さんのコメント> 疲れました・・・ −−−−−−−−−−−−−−−−−−− しらす:姉ちゃん話し、リターンですvvvありがとうございましたぁーー!!! |