頭の痛いお話―――――Lee±様

 

ステージ1

ベーシストは縁の下の力持ちである。誰が決めたわけでもないが、少なくとも”ベーシスト八神庵”氏はそう考えている。
よって、ライブでも極力目立たないように振る舞っている彼であるが、ファンはその割に多かったりする。

彼の所属するバンドは「poison」と言って、メジャーデビューこそまだだが、なかなかの人気を誇っていた。
そんな人気バンドの人気ベーシスト八神庵氏であるが、本人はそのことに至って気付いていなかったりする。
目つきこそ鋭いが、案外天然系なのかもしれない。この間のひと騒動ももしかしたら、 そんな愛すべき彼の天然ボケが招いたことなのかもしれない。

某日某ライブハウスにて その日は比較的大きなライブのある日だった。バンドのメンバーは勿論、混乱を避けて裏口からの入場である。
その日も律儀な八神氏は、リハーサル開始予定の定刻二十分前には会場に着いて、 他のメンバーの到着を待ちつつ自分のパートの練習をしていた。
そんな彼に、後から来たメンバー達は度肝を抜かれてしまった。 いや、彼が律儀なのはいつもの事なのだが、問題は他にあった。

「八神、お前その格好・・・!」
八神氏の次に早く来たギターの斉藤が、彼を見るなり思わずそう言葉を発した。
「ん?なんだ、斉藤。」
目の前で口をポカーンと開けっ放しの斉藤に逆に問いかける八神氏に、斉藤の問いにならなかった問いが再び発せられる。
「いや、だから・・・その格好、どうしたの?」
今度こそ届いた言葉も、八神氏には理解できないモノであった。

「・・・?・・・普段着だが、何か変なところでも?」
彼が、至極真面目にそう答えると
「いや、変じゃないけど・・・その格好でここまで来たのか?」
と、さらに問いが帰ってきた。
「その通りだが、やはり何か可笑しなことでも?」
わけがわからないままもう一度、至極真面目な応えを返す八神氏だが、何故かまた疑問系である。
実は、このしゃべり方も彼の愛すべき癖の一つである。
が、今回の場合は、純粋に気に掛かっただけらしい。
「ああ!お前って、ほんとわかってないよな〜・・・」
斉藤は苦笑しながらそう言った。別に、八神氏に可笑しなところなどないのだ。ただ、彼は自分というモノがわかっていなかった。
「?どういう意味だ?さっきから何を言ってるのだ?」
斉藤は答えにならない答えを返すと
「いいから、いいから、気にしなくて。君は一生そのままでいてくれればいいから。」

疑問の尽きない彼を余所に、さっさと奥の方へと消えていってしまった。
「何だというのだ?一体。」
その場に取り残されて釈然としない心地の八神氏。実を言うと、彼は理解できなかったが、斉藤の反応の方が普通であった。
それを指し示すかのように、次々と揃ったメンバー達も、斉藤と同じ様な反応を表すのであったが・・・。
やはり、八神氏にはその反応の意味がわからないままであった。

END

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

<Lee±さんのコメント>

いたたた!痛すぎ!区切れ悪うぅ!!
ホントに御免なさい、僕・・・短いの書けない。 詩か長編しか出来ません。
痛いです。似非バンドマン小説なんか書いちまいました。
実は、ライブとか一回も行ったことありません、僕。
全ては妄想の賜です。 全国のバンドマンさん御免なさい。
庵さんの「ベーシストの在り方」は、「BOOY」のベースやってらした方を参考にしました。 ああ!これ言った瞬間、全国のロックファンを敵に回した気がする。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

しらす:イタイですか??何かイタイとこなんてあったかしら!?庵さん、可愛い…vvv
下に続きますvv

 

ステージ2

果たして、彼はどのような格好をしていたのだろうか?実は、別段奇抜な格好をしていたわけではなかったのである。
ただ、時期がまずかったかもしれない。彼は、素肌に光沢のあるタイトな黒のベストを身につけていた。
他は至って普通、いつもの真っ赤なボンテージ・パンツである。首にはいつものチョーカーも忘れていない。
指輪や靴だって、至って普通。だがしかし!この寒空に何故に?何故に素肌にベスト?しかもへそ出し?
そう、街は陽気なクリスマスシーズンである。つまるところ、今回のライブだってクリスマスライブだったりする。
その、季節感を疑う格好はどういう事だろう?皆の疑問を代弁するかのように、彼と一番親しい間柄のドラムの麻井が口を開いた。
「寒くない?その格好。どうしたのさ、いったい・・・」
ドラマーもベーシストと一緒で縁の下の力持ちである。誰が言ったわけでもないが、やはり麻井もそう考えていた。
そう言ったところもあってか、麻井と八神氏はかなり気を許した間柄である。だからだろうか?疑問を遠慮なく口に出して聞けるのは。
「ああ、だから普通だろう?いつもこうだぞ。」
ある意味問題発言である。充分普通の域をはみ出まくっているのは明らかなのだから。
「え?でもこの間まではドレスシャツに黒の短いジャケットだったよね?
なんで、冬が深まってから薄着になるの?そこがわかんないよ、僕・・・。」
至極もっともな疑問である。これを待ってました、と他のメンバーも思ったことだろう。
「ああ、あれはUVカットだ。」
!?またまた問題発言を吐く、我らが八神氏!
「!?なにそれ?どいうこと?」
麻井ですら、もうお手上げ状態である。
「だから、あの格好(お馴染みのKOFの衣装)は紫外線対策なのだ。・・・白いシャツは紫外線を反射するが、
確実に防ぎたいなら紫外線を肌まで通さない黒い服を身につけるのが賢明だな。」
珍しく熱く語る八神氏には、もう誰も付いて来れないでいる。が、流石麻井。彼はなんとか立ち直って聞いた。
「それはわかったけどさ(わかるな)、だったら今日のその格好はなんなの?」
「ああ、これはだな・・・今日ライブがあると言ったら京の奴が、どうしても着て行けと言って聞かなくて。
・・・まあ、普段もだいだいこうだがな。」
「・・・・・・・・・・。」
もう何も言うまい。そう決意する一同であった。京だって、まさか本気で着てきているとは思うまい。
だって、庵氏の肌には至る所にくっきりと朱色の痣らしきものが散っていたのだから。
その格好でよくもまあ、ここまで来れたものである・・・と、麻井は呆れ半分関心半分に思った。・・・結論、やっぱ天然だ!!
その日のライブは、「血の惨劇」、「ハンバーガーヒル事件」、その他いろいろな呼び方で語り継がれることになった。
と言うのも、ライブに来た客の大半が八神庵氏のその姿に思わず鼻血を吹いて倒れてしまったからである。
結局、メジャーデビューもまだの「poison」には勿論衣装さんなど居るはずもなく、あの格好でステージに立った八神氏。
他のバンドの番になる頃には、客の殆どが再起不能状態になっていた。

ステージ3

「間に合わなかったか・・・!」
ライブハウスに駆け込みながら、ため息をつく男。我らが、漢・草薙京氏の登場である。
彼は、今朝ほんの出来心で言った言葉を後悔していた。
「なあ、これ着て行けよ。今日、ライブあるんだろ?絶対、こっちのが似合うって・・・」
そう言って、我らが天然系・八神庵氏をからかったのである。
情事の後がくっきりと残るその艶めかしい肌に艶やかなタイトな黒のベスト・・・その朱色の痣を付けたのは自分。
まるで、庵は俺の所有物だと主張するかのようなその刻印!皆が瞳を奪われ、そして嫉妬に狂うだろうその愛の証!!
・・・草薙氏が己の妄想に陶酔しているうちに、本当に八神氏はその格好で出かけて行ってしまった。
「まさか本当に着てくれるとは思わなかったし?」
とか一人で言い訳しながら、八神氏の控え室に直行する。
ガチャリ!無遠慮にドアを開け放つと、愛しのマイ・ラバー庵vがベースの手入れをして終うところだった。
「なんだ、貴様か。」
視線もくれずにつれない言いぐさの八神氏。
「なんだじゃねぇだろ、庵ぃ!」
ガシッ!!と抱きつきながらの反撃を食らわす草薙氏。ここまでしても、やはり天然系八神氏に届かなかった。
「だから、こんな所までわざわざ・・・なんの用だ?」
今度は冷たい一瞥付きである。・・・なんでも、付いてくりゃお得と言うわけでもない。
「・・・まさか、その格好でライブしたりしてないよな?」
打ちひしがれつつも、本題を忘れない草薙氏。流石、漢・京!
「だったら、どうするというのだ?」
八神氏は、それがどうした?と言わんばかりに小首を傾げて答えた。
(か、可愛いvvv)←漢・京陥落!!
「だいだい、お前が着て行けと言ったのではないか。」
と、抱きついたまま恋は盲目モードに入った草薙氏を引き剥がしつつ、八神氏は続けた。
「だって・・・まさか本当に着てくれるとは思わなかったし・・・?」
今度は拗ねてしまった草薙氏。・・・色々と忙しい性格である。
「だったら、何故着ろと言ったのか?俺を馬鹿にしているのか?」
はぁ、もううんざりと言わんばかりのため息付き。
「いや、みんなに見せびらかしたいなぁ〜・・・なんて、思ったりして☆」
(”☆”じゃないだろ!)はぁ、またため息。
「何を見せびらかすんだ?何を。」
「え?気付いてないの?・・・これ。」
と言いつつ滑らかな肌に舌を這わせると、八神氏は初めて気づいたらしい。
「んっ・・・・・!」
身を捩って、舌の辿った後を見た。
「・・・・・////。」
思わず赤面しつつも、怒りのぶつけ先を迷わず草薙氏に定める。
「これで終わりだぁぁぁ!!!」
ドォォォォン!!決まった。見事に決まった。

フィナーレ

不振な音を聞きつけ皆が集まってきた。
が、そこには己の妄想に破れて戦い破れて、打ちひしがれる漢・草薙京が転がるばかりであった。
皆があっけに取られる中、ただ一人麻井だけは、
「庵、達者で暮らせよ〜♪」
と、八神氏にエールを送っていた。
天然系八神庵氏!・・・彼の行く先は今日も騒動が絶えない。

END

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

<Lee±さんのコメント>

っ!頭痛ぇ!とんだ馬鹿話だぁ!!
つまりですね、鬼畜未満京と超絶天然庵ってことで・・・。
ホントは社も出てくるはずだったのに・・・。もう、限界。
しかも、ボーカルが出て来てなかったりして☆
取りあえず、ボーカルは「如月」です。
以上、ほら吹きジャックでした。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

しらす:あぁあぁあーー!!!期待を裏切らないこの庵さんの状態!!!
ステージ1のときから、「キスマークでも付いてたらウハウハ(オヤジ発言)なのにぃんvv」
などと、思っておりましたが、まさかマジだとは!!!可愛すぎ!!ぐはぁ!(吐血)