無題―――――春月様



Side−京&庵−


「うるせぇ!黙れ!!」
「貴様こそ黙れ!騒々しい」

KOFの選手部屋の一室。
先刻から…否、かれこれ30分ぐらい前から云い争いが始まっていた。
何がきっかけかは知らないが、(きっと些細なことなのだろうが…)
何でこんなにも口喧嘩が続くのだろうか?とおもしろそうに二階堂紅丸が
拝見していた。

「何で1人で背負い込もうとすんだよ!」
「貴様には関係ない!」

普段からもポーカーフェイスな庵が、京相手にそのポーカーフェイスを壊し
ている。

「ねぇ、京ちゃんもイオリンもそろそろやめたら?30分は続いているわよ?
まぁ、見てて飽きないけど…?」
「「うるさい!お前・貴様には関係ない!!」」
見事にハモった。
まぁ、男同士なので綺麗と云うのはおかしいが…

「紅!黙ってろ!これは俺と庵の問題だ!」
「まぁ、かまわないけどね」
「京、二階堂が待っているんだろう?早く行け!」
追い出すような形の言葉を吐くのだが、京はそんなことに気づいたか気づかな
いか…

「だから、何で1人で終らそうとすんだよ!お前なんて大っ嫌いだ!!」
一瞬の沈黙。
先に口を開いたのは庵だった。

「俺の考えや行動二気が障るなら謝ろう。すまなかった。
に、お前が俺のことを嫌いなのはもとから知っている。」
「い……庵…?」
「頭を冷やしてくる。」

庵が京の目の前を通る。
止めるわけでもなく京は呆然と庵を目で追っていた。パタン−…
とドアが閉まる音が大きく聞こえた。


Side−京−


「京ちゃん。今のはつらいんじゃない?」
「別に…?何で」

言葉では平気なふりをしている京だが内心は焦っていた。
自分は庵のこと嫌いじゃないのに何故嫌いといってしまったんだろう?
否、むしろ好きなのに…

と…でも、京はどうしていいか分からなかった。
追いかける事も、今更出来るはずもない。

「京ちゃん」
「んっ?」
不貞寝しそうな京に紅丸が痺れを切らしたのか、京の胸元を掴んだ。

「京。庵を泣かせたり悲しませたら俺が許さないからな」
いつもより1トーン下がった声で云う紅丸に対し京は関係の無いように聞い
ている。

紅丸は京の胸元から手を離し見下ろすような形で、
「見損なったよ…」
その一言を云うと紅丸は部屋に帰ろうとドアノブを握ったときに京が
小さい声だがはっきりとした声で言葉を発した。

「俺だってどうしたらいいかわかんねぇよ…どうしてあんなこと云ったのかも
わかんねぇし……」
どうすりゃいいんだよ−…と京が云っているのを聞いた紅丸は
一言だけ云って部屋に戻っていった。


『本当の気持ち云えばいいじゃない』


そんなことを云われても庵はいないし…探すのか?
でも、庵にとって俺は唯の殺そうとしている人間にしか値しない。

頭の中で思っても行動で表わさなきゃ人の気持ちなんて分かりはしない。
京はベットから飛び降りて庵を捜しに行った。

あてもなく、唯、庵だけを見つけるために…


Side−庵−


部屋に出た庵は何処に行くわけでもなくふらふらとしていた。
もう、喋る気力もなく、バルコニーみたいな所に行った。

(俺は別に京の事など…でも…そしたらこの気持ちは何だ?)

バルコニーにはベンチがありそこに座っていた。

「よっ、赤毛!」

何処からともなく後から社が来た。
気配が感じられなかった。
それほどぼうっとしてるのか…?
と、思いつつ、庵は社の方に首だけを向けた。

「どうしたんだよ…?そんな顔して…」
「どんな顔をしている?」
寂しそうに笑みを浮かべる。

社はその表情にしたのは誰だかすぐ予想がついた。

「んっ?泣きたくても泣けない顔かなぁ〜?」
「そうか…そんな顔を…多分ショックだったんだろうな…」

泣きたいのに泣けない顔。
どんなに辛い顔をしているのだろうか?

「何があったんだよ?」
「何もない…それより、クリスが待っているんじゃないのか?」
いかにも、一人にしてくれ。と言葉を投げかけるのだが、
社はこんな状態の庵を放っておく事が出来なかった。

「放っておくことなんか出来ねぇだろ?バンドの仲間として教えろよ、なっ?」
「やしろ……」

先刻とは違う落ち着いた表情の笑みをかえした。
庵は社になら話してもいいと思い、洗いざらい話した。

それだけでも、気が楽のなるだろうから…


Side−京&庵−


屋上、ロビー、選手部屋、いろいろな所に行った。だが庵はいない。
ロビーの近くにあるホテル近辺の地図を見る。

このホテルにはバルコニーがあるらしい。
行ってないところと云えばそこしかない。
探すとこもないのでバルコニーに行く。

「よっ。王子様♪」
「な…なか…せ……?」
「そう、嫌な顔すんなよ…」
「何だよ、何か用あるのか?」
「お姫様がお待ちだぜ?」

それだけを云うと社は行ってしまった。
京はどうすることもなくようやく探し当てた『お姫様』に逢いに行くことにした。

否、それしか目的もないし、それしかするつもりもない。


「 庵 」
「……京?」

ぼうとしてたのは一瞬ですぐ京を睨み付ける形になった。

「何をしに来た?」
「お前を捜しに…」
「俺のことは心配するな、もう遅い時間だ。部屋に帰れ。」

その言葉に京は庵を抱きしめたいと云う衝動に駆られ考えるよりも先に
躰が動いた。

「離せ!俺に触るな!!」
「ごめん…俺、お前のこと好きなのに嫌いだとか云って…」
「嘘だ!見え透いた嘘は吐くな!」

叫ぶような形で庵が京の手から逃れようと必死に身悶える。
身悶える庵を更に強く抱きしめた。

「ごめん!本当にごめん…でも、俺…庵のこと好きだから」
「嘘だ!先刻は嫌いだっていったくせに…」
「庵!!」

腕の中で庵がビクッと震えたのが分かった。
と、同時に庵が京に躰を預けた。

「嘘だ…そんな都合の云い話あるか……」
「庵…都合がいいって?」
「俺がお目のこと好きなことを知っていてからかっているんだろう?」

今にも泣きそうな庵の言葉に無理矢理庵を上に向けさせキスをする。

「 んっ……」

濃厚なキス。

唇を割られ、舌が進入してくる。絡められ、吸われて…

息苦しくなったことにやっと京が庵から口を離した。

「きょ…」
とんでもないことをされたような顔で京を見る。

「好きだ…否、愛してる庵……」
「きょう…」

「お、お前は……?」

特別の笑みで京に云う。
「好きだった。ずっと好きだった」
「本当か…?」

疑われているようでムッとした庵に気づき、慌てて庵の手をとった。
「夜も遅いから部屋に戻ろーぜ?」

京の慌てた様子を見て庵は微かに笑った。

京の手を握り帰して…

「そうだな、戻るとするか…」

END

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しらす:可愛いですねえvもう、本当に2人とも仲が良いんだからっv
夫婦喧嘩は犬も食いませんよ?
・・・にしてもこの紅さん、いい男ですねーv
ちょうどへこんでる時期にこんなイイ小説をありがとうっ!!!