撮影こぼれ話

 私にとって道東はまったくの未知なる土地だ。
無論これは言葉のアヤで全然知識が無いというわけではない。
 ただ写真を撮るとなると、どこに行って何を撮ればいいのか、どの季節がここの 一番いい顔を撮れるか・・・ということに関しては全くの無知である。
サイコロを放り投げて決めたような無計画な旅。
果たして何に出会えるのか・・・。何が待っているのか・・・。
 最初にコッタロを目指そうと決めたのはそのアイヌ語っぽい語感がとても新鮮に 感じたからで、ここに行けば何があるのか・・・ということも全く知らなかった。

 釧路市街を抜け、一路この謎めいた響きの"コッタロ"の土地を目指す。 塘路湖を通り過ぎ、道道の車幅の狭い道を突き進む。そして途中からは悪路に変わった。
と、前方に砂埃を舞い上げてのんびり走る観光バス。
観光バスが入るような観光地にアスファルトが敷き詰められるようになって、もう久しい。 これはある意味最近ではとても珍しいことなのだ。どうやらこの観光バスもコッタロ展望台 を目指しているらしい。どれくらい悪路を走ったろうか、前方のバスのテールランプが 急に赤く灯った。
 小さな駐車スペースにバスが窮屈そうに入り込む。そして私もその横に車体を並べた。 バスの乗降口からは聞き覚えのない異国の言葉を話す一団がどっと降りてくる。
(どこの国の人達だろう?)
北海道には日本中いや世界中から観光客が押し掛けているというのは知ってはいたが 間近でしかもこんな辺鄙なところで見るとなぜだかとても不思議な感覚をおぼえるのだった。 そうまるで自分が異国に紛れ込んでしまったような感覚に・・・。
私はカメラバッグと三脚をかつぎ、その一団の最後尾についた。
すると突然前方から悲鳴とも歓声とも聞こえる 声が上がった。トイレを兼ねたゲートをくぐり抜けるとその声の意味を理解した。
(なんだ!?これは・・・。)
垂直に見えるほど急角度の木製の階段が姿を現したのだ。
一瞬、このまま車に帰りたい気分になる。
だがこれだけ急勾配の丘だ。上からの展望はきっと素晴らしいものに違いないと気持ちを奮い起こし、 一段、一段と階段を登り始めた。さすがに普段の運動不足がこういう時は恨めしい。カメラ機材と 三脚が鉛の塊のように肩に食い込んでくる。 やっと登り切った頃には私は肩で息をしなければならないほどだった。

(すごい!)
目の前には根釧台地特有の地平線まで見えるような光景が広がっていた。 この日はあいにくの曇り空だったが、これが晴天だったなら、きっと「生きてるって素晴らしい!」 と大声で叫んでいただろう。
そしてこの土地にアスファルトが敷かれていないことを妙に納得するのだった。


撮影データ
------------ -------------------------
Body Canon EOS-55
------------ -------------------------
Lens SIGMA 17-35mm F2.8-4EX
35mm付近
------------ -------------------------
Exposure 絞り優先 f16 1/2
中央部重点測光 +0.5
------------ -------------------------
Film Kodak DYNA High Color
(EBX) ISO 100
------------ -------------------------
Filter
------------ -------------------------
etc 三脚、リモートスイッチ使用
------------ -------------------------


[Back]