「ねえねえ、聞いた?」
それは名城の第一声から事が始まった。
十夜は配達に行っている
「なんだ?名城?なんかあったのか?」
誠志郎が興味なさげに聞く。
「柊、よ〜〜くききなさいよ。パティちゃんが教えてくれたんだけど
今度舞踏会があるんだって…。」
「ほ〜〜、それで?」
「だから私と雲野で出るに決まってるじゃない。」
「なるほどな。で、それを俺に話してどうしてほしいんだ?」
「だからそれとな〜〜く雲野のところに
私を誘うように仕向けてほしいかなって…。」
「ちっ、今度なんかおごれよ。ま、手伝ってやるよ。
この程度ならエイルとの約束とも反しないだろうしな。」
「約束?」
「ああ、名城と十夜の関係に手を出すなってよ。」
「なっ!!あの人って何者なの?
でもそれって約束におもいっきりひっかかるような気がするんだけど…。」
「な〜に、十夜に舞踏会の話して 『男はそういうとこに女をエスコートするもんだ』ってなかんじで
言ってやれば干渉はしてねえだろ?」
「そっか…。でも私を連れてくって保証はないんじゃない?」
「こっちの世界で俺たちに
そんなとこへ連れてくぐらいの女の知り合いがいるか?」
「う〜ん、パティちゃんぐらいか…。でもカスミも対象にはいるんじゃない?」
「だから俺がパティとカスミを説得すれば丸くおさまるだろ。」
「なるほどね。じゃ、柊よろしく。」
「了解」
しかし彼らは気付くべきだったかもしれない…。
舞踏会の会場がショート邸やシェフィールド邸やリヴェティス劇場ではなく
グラシオコロシアムということに…。
ぶとうかい1日前
「なあ、パティ、カスミ、ちょっといいか?」
「どうしたの誠志郎君?」
「どうかした?」
「ああ、明日舞踏会があるだろ。
それに名城が十夜と出たいわけなんだけどよ〜。
ひょっとしたら十夜がお前たちを誘ってくるかもしれないから
そん時は上手く断わってくんねえか?」
「ああ、あたしは観客に回る気だからいいわよ。
応援してあげるから…。」
「わたしも応援してあげるからいいよ(でも観客って舞踏会にいたかなぁ?)」
「そっか、わりいな。」
その後そのやり取りを柊から伝えられた名城が参加届を提出し
十夜の説得をすることになったのは言うまでもない…。
ぶとうかい当日
さくら亭の2階
「なあ、名城。ホントに私服でいいのか?」
「ええ、パティちゃんが動きやすい服装って言ってたけど…。」
「正装じゃ動きにくいだけだしな…。
あ、あと名城。この世界だと当然の魔法が俺達には使えねえんだから
オーギュメントもってけよ。
っていうよりアクセントになっていいんじゃねえか?
結構似合ってるしよ〜〜。」
「あ、そ、そう?じゃあ、身につけていくわ。
(雲野が誉めてくれた♪雲野が誉めてくれた♪)」
ルンルン気分でジーザスシュラウドを身につけている名城…。
すでにセイクリッドデスを背中にしこんでいる十夜である…。
さくら亭の1階
十夜たちが降りてくるとまず第一声は柊のこれだった…。
「お似合いだぜ〜〜。名城〜〜。ひゅ〜ひゅ〜〜。」
「柊のバカ。」
「名城ちゃん、普段着なんだね…。」
「うん、動きやすい服装ってパティちゃんが言ってたし…。」
「がんばりなさいよ〜〜〜。応援してあげるから…。」
「じゃ、行ってくるな。おい、名城、いこうぜ。」
「あ、ちょ、ちょっと雲野、まってよ〜〜」
雲野がさっさとと歩いて行ってしまうのを
後ろから飛びついて強引に腕を組んでいる名城の姿を柊達は見送った…。
「しっかし、名城も大胆だよな〜〜。」
「恋する女の子は盲目だから…」
あははと苦笑いをうかべるカスミである…。
「でもホントお似合いよね。これから舞踏会にでも行くみたいな感じだし…。」
「え?どういうことだ?」
「舞踏会って今十夜君たちが向かった所じゃないの?」
「ええっ!!ひょっとして踊る方を思い浮かべてたの?」
「ああ、チークタイムとかあるあれじゃねえのか?
なんか名城があんたに聞いたって嬉々としてたぜ」
「!!!!!!!!!!!!!!!!!」
パティの顔が真っ青になっている…。
「パティちゃん大丈夫?」
「どうしよう……」
「なあ、おい、突然どうしたんだ?」
「ぶとうかいって闘う方なのよ…。あたしそういうの好きだから…。」
一同顔色が真っ青になっている…。
「やべえじゃねえか…。十夜たち止めにいかねえと…。」
誠志郎の一言を合図にグラシオコロシアムへダッシュする一同であった…。
グラシオコロシアム
「第1戦目
この大会の常連のマーシャルandミッキー君
VS
異世界からの来訪者カップル〜〜〜」
柊達が到着すると同時に実況の声が響いた…。
「もう選手控え室の中には入れないわ。みてるしかないわね。」
すばやく入場料金を払うと誠志郎達は観客席の最前列へと向かう…。
もっともカスミが非常自体ということで
ためしに十夜のよく使っていたスプレッドフィアを見よう見真似でやって
邪魔な観客をどかしていたのは秘密である…。
グラシオコロシアムのリングの中
「な、な、な、なによ〜〜〜これ〜〜〜〜。」
「どうやら騙されたみてえだな…。
名城、いつでもやれる用意しておけよ」
十夜はセイクリッドデスを構えると臨戦体制にはいる…。
「…………………………………………………」
名城は肩を震わせている…。
「じゃあ、はじめますよ〜〜。はじめ〜〜〜」
審判による開始の合図がかかる。
「あちょ〜〜〜。異世界人だかなんだかしらないアルが
手加減はしないアルよ〜〜。」
「OH、ミーもガンバリマスネ〜〜」
このセリフで分かると思うが相手はマーシャル、ミッキー君。
「…………うるさい…。」
「名城?」
「せっかく舞踏会だと思ってたのに舞踏会違いだなんて〜〜〜〜。
絶対許さないんだから〜〜〜〜。」
ジーザスシュラウドのトリガーを引き不意打ちのごとく カレイドフェノムを発生させる…。
「ブラックグランス!!」
ブラックグランス――行動不能にしたうえにダメージまで当てるという
悪魔のようなカレイドフェノム
ゴボゴボゴボチュド〜〜ン
「アイや〜〜〜〜〜〜」
「NO〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
勝負は一撃で決まった。
後には吹き飛ばされたマーシャルたちの声がだけが響いていた…。
「勝者異世界からの来訪者カップル〜〜〜。」
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」
実況が声を張り上げて盛り上げるとそれに呼応して観客も盛り上がる。
「うるさい…。」
「は、いまなんと…。」
実況が聞き返す。しかし彼は本能がつげている言葉に従うべきだった…。
『はやく逃げろ』という…。
「うるさいって言ってんでしょ。放っておいてよ。」
「あ、あの〜〜、はなしがのみこめな…。」
実況が途中まで言ったとき名城は冷酷な一言を発した。
「アウトダフェ」
アウトダフェ――爆破系で最強のカレイドフェノムである。
自分を中心に広範囲を吹き飛ばす…。
ちゅど〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
「「「きゃ〜〜〜〜〜〜〜」」」
会場は一転して大騒ぎになった…。
「君。やめなさい」
あわてて次の試合にスタンバイしていたリカルドが説得に来る。
「どうして?せっかく上手く雲野を誘えれたと思ったのに…。
メタモルフォシス!!」
メタモルフォシス――手っ取り早く言うと吸収形カレイドフェノムでは
最強のやつである…。名城専用…。
シュインシュインシュイン
バタバタバタバタバタバタ
駆けつけた自警団員+リカルドを一撃で沈める…。
「とおや〜〜〜〜〜。」
観客席の方から声が聞こえる。
「誠志郎、お前、これはどういうことだよ。」
「わりいが話は後だ。名城をとめる方が先だ。」
「ああ、それが先決だな…。」
「おい、名城止めろ〜〜〜。」
「柊…。メイヘムフォロウ」
メイヘムフォロウ――単体を攻撃するカレイドフェノム
かなりの威力…。
バシバシバシバシバシ
「痛っ!!くそっ!これじゃあ、J.B.に操られてるときと同じじゃねえか…。」
「前と同じ!?そうか、だったらこうすれば…。」
十夜はとっさに誠志郎の方にセイクリッドデスを投げ渡すと
ダッシュして名城に近づきそのまま抱きしめた。
「雲野……………………。あっ…。」
名城の狂気が入っていた目に光が戻る
そのとき
バタッ
名城が不意に崩れる…。
「名城!!」
「おい、ちょっと見せてみろ。」
不意に後ろから白衣を着た人(試合前に検査をしていたひと)に
十夜は声をかけられた。
「脈は………、呼吸は……。やれやれ、なんてことはない。気絶しただけだ。
感情が激しく揺れ動いたせいでふっときれたんだろう…。
安静にしておくことだな…。」
誠士郎達と合流しわけをきいた雲野は受付に棄権するという旨を伝えると
グラシオコロシアムを後にした…。
名城を背負って…。
さくら亭
「ったく、おい、誠志郎。
名城が起きたらどう説明すんだよ…。」
「十夜。それって本気で言ってるのか?」
「人の質問に答えろ!!」
「十夜君、落ち着いて。
瞳ちゃんは十夜君と一緒にいたかったから柊君にお願いしてたんだから…。」
「お願い?」
「十夜といっしょに舞踏会に出ようと思って
俺にお前がそう考えるように仕向けさせたんだよ。」
「なんでだよ?いつも一緒にいるのになんでいまさら…。」
「!!!!それは名城がお前を………………」
感情が高ぶった柊は名城の本心を告げそうになったが口をつぐんだ…。
これを言うという事は自分の世界に帰れなくなるうえに
名城の努力を無駄にしてしまうから…。
「くそっ!!エイルもとんだ制約つけてくれやがったぜ!!」
誠志郎はあの手紙の本当の意味に気がついた…。
「ねえ、十夜君。瞳ちゃんの看病よろしくね。」
「な、おい、カスミ。どうして?」
「なにか問題でもあるの?(いいかげん十夜君、気付いてあげてよね)」
笑顔でカスミが言った…。
しかし彼らは後に口をそろえて言う。
『夢に出てきそうなぐらいカスミの笑顔がすっっっっっっごくこわかった…。』
そんなこんなで看病することになった十夜…。
それから数時間後、 名城が起きたとき目の前に雲野がいたせいで顔を赤くし
十夜が風邪かと心配しておでこをくっつけ
名城がまた赤くなるということが延々と続いた………。
その後カスミと誠志郎に事情説明を受けた名城は
自分の勘違いだったと知り、がっかりしたのはいうまでもない…。
所変わって ビショップの教会
「あらら、名城さん、残念………。」
結構冷静に分析する理子ちゃん。
「キ〜〜〜〜〜〜ッ、見ていてむかついてきたわ。
なんであそこまで露骨に表現されて気がつかないのよ〜〜〜。
歯がゆくて仕方がない…。」
ぶち切れてるジョーカー
「う〜む。色恋は私の範囲外ですが何とかしてあげたいと思いますねえ…。
名城さんにはさぞ辛い試練でしょう…………。」
考え込むビショップ ちょうどそのときパソコンからエイルの声が流れる。
「DISK1が終わったよ〜〜。DISK2にとっかえてね〜〜。」
「「「……………………………………………………………………」」」
「どうします?まだやりますか?」
沈黙を破ってビショップが二人に問う。
「乗りかかった船だしね〜〜。
途中まで見せといて最後まで見せないなんてひどいんじゃな〜い?」
ジョーカーが冗談めかして言う。
「それに全部見終わらないと
カスミさんたちはこっちの世界に戻れないわけだし…。」
状況を冷静に分析している理子ちゃん。
「では続きを見ることにしましょう…。」
かちっ かしゅっ かちっ かしゅっ ぎゅい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
CDの読みこみ音が響く。
「さ〜て、今度はどんなお話かしら?」
「あら?ジョーカー、案外楽しんでる?」
「もちろんよ〜〜。そういう理子ちゃんも…。」
「もちろ…」
理子ちゃんが続けようとしたとき二人は殺気を覚える。
「お二人とも、まだ教えが足りなかったようですねえ…。」
「「ビ、ビショップ、ちょっと待って。ちょっと魔が差しただけなのよ〜〜」」
「問答無用です。SC空間展開!!!」
もちろんこのあと前回よりも酷い目にあわされたのは言うまでも無い…。
とある場所
1人の男がPCのディスプレイを見ている。
「う〜〜ん、十夜のあの鈍感さは酷いねえ…。
どうするかな………。
そういえばモーリスのとこの娘が前に惚れられ薬作ったっけな…。
十夜に送りつけて………………、ひゃ〜〜〜ははははは。」
狂気に満ちた笑い声が響いた…。
あとがき
結構続いてるねえ。デバイスレイン。
さ〜て、最後のエイルのセリフで分かるでしょうが 次回は悠久幻想曲をやった人(マリアを攻略した人)にはもうおわかりでしょう。
でも薬の性能をどうするかで迷ってるんだよね〜〜。
どれがいいと思うか感想をお願いします。
1:異性にしか効かない惚れられ薬
2:短期間のみの惚れられ薬
3:短期間のみの惚れ薬
4:無差別に効く惚れられ薬(マリアが作ったやつと同じ)
どれが面白くなるかなあ…。
1なら名城のやきもち
2なら薬の持ち主が転々とする様
3なら素直な名城と悪用するアレフ
4なら誠志郎とかにまで言いよられての十夜の逃走劇ってとこかな…。
他にも作りようはあるけど…。
個人的には1・3が好みかな…。
じゃ、そういうことで…。感想はお早めに……。
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