EDENes

第2章  刻まれた宿命

#3

  冬夜が保健室に現れたのは唐突、まさに唐突であった。しかもその姿は現代日本の普段の生活ではおよそ目にすることのない悲痛な姿。シャツは吹き出した汗でぐっしょりと濡れて体に張り付いている。呼吸は荒く、肩が上下して壁に寄り掛かってようやく立っているという状態だ。そして何よりその右腕は流れ出した血液で痛々しく真っ赤に染まっている。どうやらほとんど動かないようだ。
  「ど……どうしたんだよ、冬夜!その怪我……」
  裕嗣は全く月並みな台詞を叫んだ。裕嗣からは少し離れた所に座っていた小津も驚いて立ち上がる。冬夜はふらつきながら部屋の中央へと進んだ。
  「悪いけど……ピンセットを、貸して、くれ……」
  「あ、はい……どうぞ」
  小津は机の上の救急箱からピンセットを取り出して冬夜に手渡した。冬夜は近くにあった椅子に半ば崩れ落ちるように腰掛けて、一息ついてから、何とピンセットを右腕の傷口に突き刺したではないか!
  「うわっ!」
  冬夜と小津は思わず目を逸らした。冬夜の表情も今まで以上の激痛に歪み、脂汗が吹き出している。
  数分して、冬夜がピンセットを傷口から抜いた。それと共に何かが床に落ちた。ピンセットも冬夜の手から床へと滑り落ちる。裕嗣は恐る恐る近付いて落ちた物を拾い上げてみた。……人差し指の先ほどの金属塊だ。丁度そこには冬夜の右腕から血が滴り落ちていたから、今までよりも更に冬夜の出血の酷さがよく分かった。
  「くぅ、はぁ……あ、あと……消毒、液も、貸してくれ……」
  「あ、わ、私やりますから……」
  消毒をして包帯を巻くくらいの事なら小津にもできる。小津は冬夜が落としたピンセットを拾って洗い、綿を摘んで消毒液を付け、そっと冬夜の傷口に当てた。
  「うあっ!」
  「だ、大丈夫!?」
  「……わ、悪い……続けてくれ……」
  綿を押し当てる度冬夜の体がビクンと跳ねる。だが冬夜はもう悲鳴を上げなかった。
  消毒が終わると小津は包帯を取り出して患部に巻き付けて止めた。これで一応、治療は終りになる。
  「ありがとう……助かった」
  「いえ、別に大したことじゃ……」
  冬夜は助かったと言ったが包帯を巻いたところで痛みはさほど和らぐわけでもない。相変わらず右腕は動きそうにないし、出血も勢いは弱くなったもののまだ止まっていない。 何より体力の消耗が激しい。
  「(……やばいな……これじゃまともにやったらまるで勝ち目は……)」
  「な、なあ、冬夜……これって何だ?」
  裕嗣は冬夜の傷口から落ちた金属塊を摘んで尋ねた。冬夜はそれを見ずに、
  「銃弾だ」
  「じゅ、銃弾!?」
  確かに、言われてみれぱ薬莢がない銃弾というのはこのような形かもしれないと思われた。日本の一市民にはこの程度の予測が限界だろう。何しろ今までに一度も銃弾を見た事も触れた事もないのだから。
  「で、でもなんでお前……」
  裕嗣は予想でき得る台詞しか言わなかった。普通の人間ならどうしてもそうなってしまうものだ。
  「……WWMって、あるだろ……」
  「ああ、あのテロ組織……」
  「アレだ。アレに、やられた」
  「……は?」
  息も絶え絶えに真顔で説明する冬夜に対して裕嗣達は全く理解できない様子で、「何言ってんだコイツ?」くらいの表情だった。
  「何馬鹿言ってんだよ。何でお前がWWMに撃たれなきゃいけねーんだよ。大体、何でこんな所にWWMがいるんだよ」
  「……説明、してる、暇はない……とにかく、俺を狙って、今、この校舎の、中に…… WWMが、来てる」
  「……お前、どーかしたんか?んなワケが……」
  「じゃあ、何処の誰が拳銃ぷっぱなすってんだ?屋上でもう1人殺されてるんだぞ!?」
  「!!」

  いつまでも現状を正確に理解しようとしない裕嗣に苛立ち、冬夜はかなり強い調子で言い放った。かなりの貧血なのにそんなことをすれば体がふらつくのは当然だ。冬夜は危うく椅子から転げ落ちるところだった。
  「マ……マジか?マジで屋上に……?」
  「ああ……剣道部の小町とかいったか」
  「!!」

  小津の顔が一気に青ざめた。裕嗣も小津の様子を見て冬夜の言葉が指す意味を理解した。
  「う……嘘……小町って、小町って、小町、通子の事……?」
  小津が震える声で冬夜に間う。
  「さあ……小町としか、言わなかったけど……」
  「おい、大丈夫か?ちょっと寝てたほうがいいんじゃねーか?」
  「そんな暇は、無いんだ……」
  冬夜は机の角をつかんで強引に立ち上がった。周囲を見回す。
  「おいおい……」
  「……何か、武器になるような物はないか?鉄パイプとか……」
  「ここは保健室だぞ?そんなものあるわけないだろ。ねえ、小津さん……」
  振り返ると小津は屈み込んで泣いていた。裕嗣はそれを確認するなりすぐに駆け寄る。 そして慎重に言葉を選んで小津を励ます。
  「……大丈夫だよ、小津さん。小町っていっても小津さんの友達の小町さんじゃないかもしれないしさ」
  ……慎重に言葉を選んでもこの程度かと裕嗣は自分のポキブプラリーと発想力の無さを嘆いた。当然、小津は泣き止まない。
  小町通子は小津の1番の親友だった。いつも一緒に行動し、小津が保健室当番の日もちょくちょく顔を出していた。裕嗣とも少なからず面識があり、仲もまあよかった。まだ死体も確認していないし、冬夜の言葉だけではいまいち信憑性というか、納得がいかないのだが、もし本当に死んでいるのなら─────
  知り合いが死ぬなんて、今までに経験した事がないからかなり変な感じだ……。
  「……死体は確認しない方がいいぞ。頭を撃たれてるからな………」
  冬夜は立っているだけで精一杯という様子で周囲を観察しながら、裕嗣の思考を読んだかのように警告した。そんなことを言われたら想像するだけでも嫌になる……。
  「あいつは多分、すぐにここに来る。お前らは逃げろ……」
  泣きじゃくる小津と、宥める裕嗣に冬夜は新たに警告した。只でさえこちらが不利なのに素人を守りながら戦えるわけがない。ここには屋上に無かった障害物がある。そこに全てを賭ければ何とかなるかもしれない。と言うよりもそうするしかない。
  WWMの言いなりにならないためには─────
  「……あれしかないか……」
  冬夜は体のバランスを保ちつつ、ゆっくりと一歩一歩踏み出していった。向かった先は、 掃除用具入れ。冬夜はそこから長箒を取り出して刷毛の部分をかなり強引に外した。
  「耐久性は低いけど……これでやるしかないか」
  確かに脆いがリーチは竹刀よりある。まあ、拳銃相手では変わりはないが……。
  「さあ、早く逃げろ。そろそろ……!!」

  冬夜が身を翻す。と同時に冬夜の背後の机で何かが跳ねた!
  1メートルほど移動しただけなのだが、冬夜はもう立っていられなかった。ベッドの脇に倒れ込む。小津も顔を上げ、現状を把握しようとする。
  「窓から外に出ろ!」
  冬夜が精一杯の大声で叫ぶ。が、まだ2人は何が起こったのかを理解できていない。冬夜と、机を交互に見て動かない。冬夜は舌打ちをしてまた叫ぶしかなかった。
  「WWMだ!もうこの部屋のすぐ外にいる!今のは拳銃で撃ったんだ!早く窓から外に出ろ!!」
  冬夜の息はそれだけで荒くなる。だがその甲斐あってようやく2人も動き出そうとした。 しかし、廊下では銃口が冷たく黒光りしていた。
  「!この……!!」
  冬夜が残り少ない体力をふり絞って手に握った棒を閃かせる。すると棒の先端に近い部分が弾け飛んだではないか。2人はぎょっとして立ち止まったが、
  「急げ!」
  冬夜の怒声に押されて慌てて窓から外に出た。 保健室内には冬夜の荒い呼吸音と緊迫した空気には全く不釣合なセミの鳴き声だけが響いた。冬夜は棒を持った左手をバタリと床に落とした。

  パチパチパチ。

  廊下から拍手の音が聞こえる。そう、屋上でも聞いたあの音だ。
  「やっぱり君はおもしろいな。よくそんな状態で、あの細い棒で銃弾を2発も受け止められたもんだ。しかも左手1本。よっぽど動体視力と反射神経がいいんだね」
  「……まあ、飛んでる、蠅を、捕まえられる、程度には、な」
  「しかもまだ軽口を叩く根性まである……凄いな、桐嶋君」
  「だから俺は……的場冬夜だって……言ってんだろ……」
  男は保健室に入ってすぐにドアを閉めた。そしてそれ以上は進もうとしない。勿論、冬夜の奇襲を警戒しての事だ。しかしドアを閉めたのは違う理由だ。つまり、人を集めないための処置だ。そうでなければわざわざ保健室内に入る必要もない。
  人を集めない事は単独で敵地に潜入する際には最重要ポイントとなる。人を集めさえしなければ自分と、相手の実力だけでほとんど勝敗が決する。今は冬夜は負傷しているから、 人が集まらなければ男は圧倒的優位に立てるのだ。そのために拳銃にも消音器を付けている。
  冬夜としてはできるだけ今自分が持っているカード、つまりベッドの陰に隠れているという状況を活かしたいところだ。活かしたいところ、なのだが……。
  「(やべえ……意識が朦朧としてきた……)」
  貧血状態で激しく動き過ぎた。視界に霞が掛かる。体が重い。もう、動けない……。
  「なあ、さっきから聞きたかったんだが」
  薄れ行く意識の何処かで男の声が聞こえる。
  「何で君はそんなにWWMを嫌うんだ?むしろ君はWWMよりの性質だと思うんだけどなぁ。それに今ならお母様に会えるってオプション付きだ」
  「!!」
 
途絶えかけた意識が一気に覚醒する。そして何を思ったか、勢いよく立ち上がってしまう。不思議な事にさっきよりも体が軽い。力が漲る。
  「……母さんを捜すのに、WWM(てめえら)の助けなんて借りねえってんだよ!!」
  「おお……気迫が戻ってるぞ。これも『神威』の為す業なのか?」
  男は愉快そうに笑って再び手を叩いた。右腕は動かなくとも、冬夜の気迫は屋上で感じたものと同等、いや、それ以上まで強くなっている。ついさっきまで気絶寸前だったにも拘らず「お母様」というキーワードだけでここまで回復してみせるのだ。何とも興味深い少年ではないか。
  「そう言えば……君の気配というのは普通の人間とは違っていてね……だからさっきもすぐに見つけられたんだが……」
  男は思い出したように言った。何のためにこんな事を言うのだ……冬夜は訝しがりながらも男の次の言葉を待って立ち尽くした。
  「この学校には何故か、君に似た気配を持つ人間が2人ほどいるみたいでね……どうやら君が逃がしたさっきの2人みたいなんだよ」
  「!それは……どういうことだよ」
  「まあ、君と同等の力が備わっていると考えるのが妥当かな?ただ君と同じように何処かで身に付けたのか、それとも先天性なのかは分からんが……」
  そこまで言って男は銃口を再び冬夜に向けた。
  「ちょっと無駄話が過ぎたかな。そろそろ昼休みも終わるみたいだし、ケリをつけようか」
  冬夜が素早く屈むのとほぼ同時に冬夜の体があった空間を弾丸が通過した。
  冬夜はそこに転がっていた、結局竹刀よりも短くなってしまった箒の棒を握り締めるしかなかった。

 

 

  男は「そろそろケリをつけよう」と言ったがそう言ってから既に3分、両者とも全く動かないままで経過していた。男はドアのすぐ近くでベッドの縁に狙いを定めながら、冬夜はベッドの陰で細く短い木の棒を左手で握り締めながら。相変わらず蝉の鳴き声は保健室中に響き渡り、廊下からは移動を始めた生徒の声が聞こえてくる。今日に限って何故養護教論が保健室に現れないのか不思議ではあったが考えても仕方のない事である。そんな事を考えている余裕があったらこの極限状況を打開する方法を思案すべきであると冬夜は認識していた。無論それは正しい。
  男の言う通り『神威』の為す業なのか、体力はある程度回復しているもののそれは本来の力の40%程度に過ぎない。これではベッドの陰から飛び出して男の体を突く前に鉛球が体に挿入されてしまうのは間違いない。
  男にはもはや絶対的ともいえる自信があった。それでも一気に攻めないのは更なる『神威』の発現を恐れているにすぎない。が、それは恐れるには十分足るもので、冬夜の内に眠る『神威』が不完全とはいえ実際にどれだけの割合が冬夜に備わっているのか分かっていないのだ。『神威』を持ってして人類を統率せんとするWWMの姿はもしや間違っているかもしれないと頭を一瞬よぎったのだが、敢えて今は排除した。それに、今は未だ見ぬ 『神威』が自分達の想像を絶するほどのものでなければ意味がないのだから。
  『神威』は少なくとも今は自分を上回るほどの戦闘力を持っていないように思える。思えるのなら、決断するしかない。
  「!!」
 
男が飛び出す。ベッドの陰に隠れて視界が狭くなっていた冬夜は男の補足が遅れてしまう。見つけた時には男は既にベッドの上に立って銃口をこちらに向けていた。冬夜は小さ く舌打ちするしかない。
  「チェックメイト。素直に降参するんだ。そうすればお母様のところへ連れていってやる」
  「……」
 
冬夜は横目で保健室の壁に掛けられた時計を見た。昼休みが終わるまであと数十秒。もはや迷っている時間はなかった。棒を握る手に力が入る。男は冬夜の左腕に照準を合わせていたが。
  「!馬鹿が!」
  冬夜の左腕が関くと同時にパーンと鼓膜を破りかねないほどの大音量の破裂音が、恐らく校舎中に響いたのではないだろうか?

 

  「……何だと?」
  冬夜は床に座ったままだ。そこからでは男の体に棒は届かない。それでも攻撃を仕掛けたのは……
  「消音器を狙うとは……」
  冬夜はもともと男の体に一撃を加えようとは思っていなかった。ただ男の拳銃から弾丸が発射される直前に消音器を外す。それだけが狙いだったのだから。かくして冬夜の一撃は男の指が引き金を引き終える一瞬前に消音器を捕らえ、弾き飛ばした。それにともない 照準もずれ、盛大な音を発して放たれた弾丸は冬夜の脇の床にめり込んでいる。
  今までにテレビや映画でしか聞いたことがないような音に驚き、多くの人間が保健室に押し寄せた。その中に体育科の教師も混じっている。冬夜としてはこれ以上心強い応援はいなかった。
  「どうした!?何があった!!」
  怒鳴る教師側から男の拳銃は見えていない。だから声が出た。
  「ち……面倒に、………! 貴、様ぁ……」
  男は入り口を振り返りかけてすぐにやめた。やめざるを得なかった。なぜなら冬夜が握る棒の先端が自分の左足に突き刺さっていたから。
  「油断は禁物!基本だろ!」
  冬夜は立ち上がりながら男にタックルをかけた。不意を衝かれて男は不様にベッドから転げ落ちる。その際に拳銃が男の手から離れ、ギャラリーの足元へ転がっていった。
  「……なんだこれ」
  一瞬の間 ─────
  「けっ、拳銃だあ一っ!」
  「それよりこいつを抑えるの手伝ってくれ!こいつがそれを持ってたんだ!こいつはテロリストなんだ!」
  またも一瞬の間 ─────
  「早く!」
  「わ、分かった!」
  冬夜の言っている事が嘘か誠かは分からないがとにかくこれはただ事ではないと判断したのだろう、体育教師が2人飛び出してきて男を取り押さえた。普段は鬼のような体育教師もこういう時はこれ以上無いというくらいに頼もしい。冬夜はその2人に半ば弾き出されるようにして男から離れた。
  「誰か警察呼べ!警察!」
  「おいお前その怪我、大丈夫か!?」
  「うわ、すっげぇー。本物の拳銃だよ、本物!」
  「マジマジ?俺にも持たせてよ。おお、すっげぇ。メチャクチャ重いじゃん」
  怒声やら歓喜の声やらが交じり合ってそれぞれが何を言っているのかよく分からなくなってくる。

  取り敢えず、こうして冬夜の突然勃発したテロリストとの戦いは終わったのだった。
  「冬夜!大丈夫だったか!?」
  「ああ、何とかな」
  裕嗣と小津が人混みを掻き分けて冬夜に駆け寄ってくる。その向こうでは既に数人の教師のよって生徒達は教室に押し返されていた。裕嗣達はそれを掻い潜ってここまで辿り着いたのだ。
  「いや、なんかいきなりすげぇ事になっちまって……こんな所でテロリストなんて……信じらんねーよ」
  「それで普通なんだよ」
  冬夜はまた痛みだした右腕を抑えた。出血はもう止まっていたが、病院に行ってちゃんとした治療を受ける必要があるだろう。
  「それにしても……3メートルしか離れてなかったら普通貫通するよなあ……。木の棒で弾丸を受け止めるってのも無理があるしな……」
  「?どした?」
  「いや、何でもない。……ああ、警察が来たみたいだな」
  窓の外からやむ気配のない蝉の鳴き声と共にパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
  「お前、事情聴取受けるんじゃ……」
  「多分な」
  「凄いな……まさかこんな近くにそんなもん受ける奴が出てくるとは思わなかった」
  「あ、そうだ……ねえ、ええと、冬夜君?血が固まっちゃう前に包帯替えておこうか」
  「え?ああ、頼む……」
  冬夜はベッドの上に座り、小津は机の上の救急箱を取り、裕嗣はそんな冬夜を見て苦笑 していた。
  「……なんだよ」
  「いや、お前が女の言う事を素直に聞くなんて珍しいなと思ってさ」
  「ふん……」
  「なあなあ、これってまだ弾入ってんのかな?」
  裕嗣の向こうで3人の男子生徒が固まって何かを奪い合ってはいじっている。
  男が持っていた拳銃だ。
  「ああ、でももう弾倉には弾は入ってないよ」
  「なら安全じゃん。おれ1回この引き金引いてみたかったんだよ」
  「あ、俺も」
  「こーやってさ……」
  冬夜がその男子生徒達を目撃したときはもう遅かった。
  少年の人差し指が引き金を引いていく。
  「!!」
  裕嗣がそれを見てすぐに飛んだのは反射的、としか言えないだろう。それだけの速さだった。やや遅れて、2度目の強烈な破裂音!

  「裕嗣!」
  裕嗣は小津の体を押し倒してその上に倒れていた。白いYシャツの背中が真っ赤に染まっていく。
  「も、森下君!」
  自分の体の上で倒れる裕嗣の息遣いが荒くなっているのに小津も気付いた。次第に裕嗣が流す血も小津の体に流れてくる。
  「馬鹿野郎!」
  冬夜が怒鳴り、自分達が偶然にも発砲してしまった事に驚き震えていた男子生徒達の体がビクッと跳ねた。
  「拳銃ってのはな、薬室にもう1発入ってるんだよ!大体、それはてめぇらが持ってられるようなもんじゃねえだろうが!」
  冬夜は3人を蹴り殺してやりたいと思ったが、そんなことをしている間に裕嗣の状態はどんどん悪化していく。舌打ちをして3人から離れた。
  「パトカーで病院に運んでもらおう。警察も今の銃声ですぐにここに来るはずだ」
  「森下君……」

 


to be continued……

PRESENTED BY 禍因

 


続く


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2000.09.03