小説コーナー初のファンタジー作品「ファイナル・ゲート」です!
どんな冒険が繰り広げられるのか、楽しみですね!
星蒼矢さんの作品です。

ファイナル・ゲート(2)

 ライブは心躍る気分を押さえて家へと急いだ。ティラと別れた森の入り口はちょうど、 二人の家の中間地点ほどにあった。ライブは果たして、この一刻という時間を自分が待ちきれるかどうか心配になった。
 何かの予感に、胸がドキドキして時間が来る前に張り避けるのではないかと思ったからだ。けれども、そこはやはり魔法使いの弟子である。彼は懸命に気を落ちつけると、今、 この村に何が起こっているのか、自分が何をしでかそうとしているのかをできるかぎり冷静に考え出していた。
 冷静なる事。それがおろかな行為を改め、未来へと導いてくれる。師のそんな言葉を彼なりに実践する時がきていたのである。
 あるいは、師ならばこの程度のことを難なくやってのけ、いとも簡単に事件を解決して くれるのかもしれない。けれども、今、その師はここにはいないのだ。
 ライブはただひたすらに家へと向かった…。
「痛っててて」

 しかし、ライブは突然、誰かにぶつかって思わず声を上げた。そして、ふと我に帰ってまわりを見ると数歩先に少年が四人転がっている。どうやら、全力でライブと衝突したらし い。
 幸、そこは開けた草原だったから、四人とも怪我はなさそうだ。
 なんとも…。ようするに、彼はいつも自分が魔法の練習をしている見通しのいい広場の 真ん中で四人もの少年の群れに突っ込んだわけである。
「はぁ・・、師匠にばれたらなんていわれるだろう…」
  とりあえず、頭の中にそんな事がよぎるが、彼は思考を切りかえるとすぐ少年四人に声をかけた。
「ごめん…大丈夫?」
「あ、ライブさん」
 十三歳の少年を「さん」付けするその少年はライブよりもまだ一回り若い。
「あ、フォルツ…」
  彼はついこの間のゴブリン騒動を解決に導いた四人組の一人だ。
 この四人が、剣士のフォルツ、シーフのレッジ、魔法使いのディオ、エルフのシリスと、 バランスがとれたパーティなのである。このバランスが先のゴブリン騒動の解決に貢献し ていることは言うまでもない。
「それが大変なんです…」
  一呼吸置いてフォルツが続けた。
「知ってるよ。村に落ちてきたやつが教会から逃げたんだろ?」
「そうなんですけど、ヤツには仲間がいたんです。今、そいつを追ってるんですよ…」
仲間?
「で、そいつは今どこにいる?」
「え?あ、いや、そのぉ…」
ライブは黙り込んでしまったフォルツに代って、しどろもどろに付け加える少年シーフを 見て肩を竦めた。言わずともわかる。つまり、彼らは目標を取り逃がしたのだ。
 それでも、とライブは考えた。もし、やつに仲間がいたなら、それそれで大変なことに なる。もし、そいつが、村を襲ったら?仲間がいることを知らない村は混乱するだろう。
「な、仲間がいることを村の人に言ったのか?」
「一応…。でも、誰も聞いてくれなかった…」
ディオが口を尖らせた。
 例のモンスターが降ってきた、それだけで大人達は混乱していたのである。彼らはつま り、子供言葉をカケラも聞こうとはしなかったのである。
「これから、東の方へ探しに行きます。ところで、ライブさんはこれからどうされるのん で?」
エルフのシリスが尋ねた。
「オレは、行く所があるから、お前達、そいつを逃がすのよ」
「よし!行くぞ!」
ライブは彼らがかけていくのを目のすみで確認しつつ、自分の家にかけ込んで準備をはじ めた。彼の中に、この事件がただ事ではすまない、何か非常に大きな問題に発展するという予感が芽生え、それは着実に大きく、かつ、現実のものへとかわっていこうとしていたのであった。

続く

 


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2000.03.04


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