くるすさんとの相互リンク&5000hitsゲット記念に頂きました。
Kanonの真琴のSSです。
ほんとに涙なしでは読めないでしょうね〜

星の降る夜に


ねえ、私戻れるかな……

祐一の所に帰れるのかな……

私が私でなくなちゃうのがよくわかる……


会いたかった人……

あの人は私と入れて幸せだったかな……

誰も教えてくれない……

でも……

私はいやだ……

このまま消えちゃうなんていやだ……

お願い……私を祐一の所に行かせて!!

私を愛してくれた…約束してくれた……

ずっと待っていると約束してくれたあの人の所に……



俺は真琴の部屋にいる。
秋子さんがいつ帰ってきてもいいようにとそのままにしてくれている。
「なあ、真琴……」

祐一……

「もう本当に会えないのか」

(あう〜、そんなことないよ)

俺は紙飛行機を拾うとそれを持って外へと出た。

(ねえ〜祐一、私が見えないの!!)

ポカッ!

(あれすりぬけちゃった……なんで???)

(あう〜、せっかく戻ってきたのに……)

真琴と別れたあの日以来、
俺は彼女のことばかり考えている。
「…………」

祐一…元気なさそう……

(あ、肉まん売ってる……祐一買いに行こうよ、ねえってば!)

気がつくと俺は、商店街にいた。
なるべくここにはこないようにしていた……
というより真琴の事を思い出してしまう場所をさけていたのだ。
どうしても…どんなに耐えようとしても……

真琴の笑顔……

真琴のとの思いで……

真琴の全てを……

思い出す事自体けしていやなことじゃない。
真琴の事を思うたびに俺は暖かい気持ちになる……
真琴の存在がいかに俺の中でこれほど大きくそして、
愛すべきいとおしい存在かということがわかってしまう。
それは同時に大きな喪失感を俺にもたらす……

(ゆーういーちー!どうしちゃったの?)

苦しそうで辛そうので……

私は祐一に何かしてあげられないの?

肉まん……

それも真琴と俺とを結んでくれていた大事なものだ。
「しばらく食べてなかったな……」
店に入ると、俺は真っ直ぐに肉まんの売っている所に向かった。
「すみません……」

祐一お店にはいってちゃった……

(もしかして……やっぱり!!)

(肉まんだ…もうずっと食べてない)

(あう〜、祐一ちょうだい、ねえってば!)

私の必死に祐一に向かって言う。

だけど気がついてくれない……

(あう〜、もおいいもん、祐一のバカー!!)



口に入れた肉まんはうまかった。
そのときふと真琴の声が聞こえたような気がした。
「…真琴……」
そうだよな、肉まん買って一人で食べてたら怒るよな……
あう〜、ちょうだいって言って。
でも俺と一緒に肉まんを食べてくれる少女はもう……



祐一、ひどいよ。

肉まんくれないしそれに……

私のこと全然気がついてくれないなんて……

私のこと嫌いになっちゃったのかな。

こんなに私は祐一のことが大好きなのにどうして。

(もう全然わかんなくなっちゃったよ……これからどうすればいいの)

さびしいよ

ちゃんと、ちゃんと祐一と話がしたい

「にゃー、にゃー」

(……ぴろ、ぴろには私がわかるの?)

「にゃー」

(あう〜、うれしいよ、ひさしぶりだね)

「にゃぁ〜」

(みんな元気かな?美汐も秋子も名雪もそれに……)

「にゃー、」

元気じゃないよね祐一は……

「…にゃ〜」

(くすぐったいよぴろ……暖かいね…お前)

ちりーん、ちりーん

あれ、この音は……

ポケットの中を探ると鈴がでてきた。

(鈴……)

意識がもう薄れてほとんど喋れなかった時に、

祐一が遊んでくれた鈴……

(そうだ!これを使えば……)

これをこうして……

「にゃー!」

(あう〜、ぴろあばれないでお願い……)

「にゃー」

ぴろは大人しく言うことを聞いてくれた。

(ぴろお願い!祐一に伝えてほしいの)

私がいることを……

あなたのそばに帰ってきている。

そう祐一に伝えて……

(私はあの場所で待ってるから……)





俺は駅前のベンチに一人で座って肉まんを眺めていた。
結局一口しか食べなかった。
袋に入ったたくさんの肉まん、
とても一人じゃ食べきれないけど二人ならがんばれば……
「もうずっとこの調子だな…名雪や秋子さんに迷惑かけっぱなしだしな」
この街を去ろうか……
そう考えた事もある。
けど真琴が帰って来て俺がいなかったら怒るだろうしな。
俺はさっき真琴の部屋からもってきた紙飛行機を投げた。
すーっと空にまった後、ゆっくりと落ちて行く。
「にゃー、にゃー」
落ちたさきには一匹の猫がいた。
「ピロシキか……どうしてたんだ」
俺が近寄る前に、すでにピロシキが近づいてきた。
「にゃー!」
脚にばっと飛び乗ってくる。

ちりーん

「うわっなにするんだ!この……」

ちりーん

鈴だ……

俺が真琴に聞かせていた鈴……

真琴を繋ぎとめるためにずっと鳴らしていた音、

俺はすぐに立ちあがり辺りを見渡して、

「真琴!いるのか!?」

しかし、それらしき姿はどこにも見つけられなかった。

その時……

ちりーん

また音が聞こえた。

俺が立ちあがった瞬間、飛んで着地したピロシキから……
「おい、お前もしかして」
「にゃー」
鈴らしき物はまったく見えない……
音だけがまるで風に流されるかのように響く。
ピロシキは勢いよく走り出した。

お前は知ってるんだな

真琴のいる場所を……

「待っててくれよ、真琴!すぐ行くからな!!」
俺は確信した。
理由なんかないけど……
なんとなくわかるんだ

この音を……

風の教えてくれたその場所で……

その場所で俺達はまた会えると……



「はあっ、はあっ…ここは……」
そこは俺達が結ばれた場所、
この丘の上で俺達は会ったんだ。
丘を一気に駆け上がった。
「真琴!」

(祐一!)

私は一気に祐一の胸に飛び込もうとした。

だけどすり抜けてしまう。

「ここにいるんだろ!姿を見せてくれよ」

(あう〜、私はここにいるよ、祐一)

祐一と話せない……

祐一にだっこしてもらえない……

祐一の温もりを感じられない。

前は普通にできたことだけど今はどうすることもできない。

(なんでこんなに悲しいの……涙が全然とまんないよー)


いないのか、
そんなはずはない。
姿は見えないし声も聞こえないだけど、ここに真琴いるんだ。
俺は街がよく見える所に座った。
「真琴いるんだろう?ここに座れよ」
俺はじっと待った。
そして……


祐一は私のことが見えていないはずなのに……

私は祐一の隣りに座った。

そして……祐一はゆっくりとしゃべり始めた。

私がいない間どれだけ悲しかったかとか、みんなの話……それに私のことをどれだけ愛していてくれているか。

当たりがもう暗くなっているのにずーっと……

(あう〜、祐一ごめんね、祐一の事疑っちゃったよ)

でも声は祐一には聞こえていない。

それでも私は祐一の気持ちが痛いほど伝わってくるのがうれしかった。

「星が綺麗だよな」

本当に綺麗だった。

「こんな夜に二人っきりでいられるなんて幸せだな」

そうだね……

ゆっくりと視線があった。

私のこと見えないはずなのに……

祐一はの目は私を見ている。

私は目を閉じて祐一に近づいた。

そして一筋の星が流れた時……

唇が重なった……

ゆっくり目を開いた時、そこには私の大好きな祐一が笑っていた。

「おかえり、真琴」

「…ただいま、祐一」



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2000.03.07


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