「Pastel Color」のApplcotさんがサークルの宿題で書かれたものを頂きました。
Luciferはこの話のノリというか雰囲気が大好きです。
長かったので前後編に編集しました。
北川君の野望は果たして達成されるのでしょうか?

Kの野望 〜後編〜

「ただいまー。」
「お帰りなさい祐一さん。あら?香里ちゃんと栞ちゃんも。」
「すみません。俺もいるんですけど…。」
「御免なさい、影で見えませんでした。こんにちは北川君。」
「秋子さん楽器は?」
「祐一さんの部屋に運んで起きました。」
「すみません、楽器少し鳴らしても…。」
「了承。」
「まだ言い切ってませんけど。」
「あら、そうだったわね。」
  にこやかにそう言うと、奥の方へ行った。
  相沢はわかるが美坂と栞ちゃんもこの家のことをよく知っているらしい。
  相沢の部屋に皆無言で向かう。
  相沢の部屋は三つの楽器だけで埋め尽くされている様なものだった。
  早速美坂がギターを、相沢がベースを、栞ちゃんがドラムスの練習をはじめた。
  水瀬のお母さんの手回しが良く、わかり易い練習の本が置かれていた為、美坂と相沢ははかどって行くが。
「祐一さん、むずかしいです。」
  栞ちゃんが思惑通り困りはじめる。
「相沢がドラムスやったらどうだ?」
「そうだな、栞、少し代われ。」
「わかりました。」
「栞ちゃん、その間ベースの練習したらどうだ。」
「そう、ですね…。」
  横で、一人で上達して行く美坂がその様子を見て。
「栞、練習手伝うわ。」
  そう言って、栞ちゃんのそばに行く。
  ふふふ…。
  ここまで計画どおり行くとは…。
  俺って天才か?
「ただいまー。」
  1階のほうで水瀬の声がした。帰ってきたらしい。
  たただだだっだ。
  階段をのぼる音がする。
  コンコン。
「名雪か?」
「うん。」
「入っていいぞ。」
 ガチャ。
「祐一、玄関前でも聞こえたよー。わ、祐一がドラムしてる。」
  驚いたようには聞こえない口調だが、水瀬はかなり驚いている。
「栞がドラムス下手でな。」
「祐一さん酷いですー。」
「相沢君。」
  相沢はしれっとした顔でそれを流す。
「それで、部屋どおするの?」
「いや、どうにかなるだろう。」
  水瀬の意味の良くわからない練習の付き合いが入りながらも、練習は進んでいった。

「おい、こんな時間だが栞、帰らなくて大丈夫か。」
「あ、もうこんな時間ですー。」
「栞ちゃん、どうせなら私んち泊まっていかない?明日学校お休みだし。」
「そうだな、秋子さんも了承するだろう。」
「名雪、それは悪いわ。」
「今日は祐一さんの家におとまりです。」
「しょうがないわね。」
  美坂はため息をつくと自分も泊まると言った。
「相沢、俺も泊まって行っていいか?」
「好きにしろ。」
「わかった。」
「とりあえずお母さんに話して来ようよ。」
「そんなのは1秒で了承されるぞ。」

「了承」

「相沢、水瀬のお母さんて何者だ?」
「北川君酷いよー。」
「俺も良くは…。」
「そうか…。」
「そうね、名雪のお母さんて、不思議な人ね。」
「3人とも失礼なこと言ってる?」
「そんな事はないぞ。」
「違うわよ名雪。」
「えっと、俺もそんなつもりはないぞ。」
「ならいいけど。」

『あさー、あさだよー、朝ご飯食べて学校行くよー。』
  水瀬の声に驚いて飛び起きる。
『あさー、あさだよー…。』
  相沢が手馴れた手つきで近くにある時計に手を伸ばすと、水瀬の声はなくなった。
「相沢。」
「なんだ。」
「お前いつもそれで学校起きて…。」
 っりりりりりりりりりりりりりりりりり!
  こんどはすごい大音量で、たくさんの目覚ましが鳴る。
「起こしに行くか。」
  気にした風でもなく、部屋を出て行く相沢。
「何が起きたんだ。」
  暫く鳴りつづけたが止まった。
  すぐに相沢が帰ってくる。
「北川も朝ご飯食べるか?」
「あ、ああ。」

 食卓には造りたての目玉焼きなどが並んでいる。
 美坂、相沢、水瀬、栞ちゃん、水瀬のお母さん、俺。
 6人分の食事が用意されていた。
「学校休みの日になんで名雪の部屋の目覚ましなってるの?」
  水瀬のお母さんの手伝いをしていた美坂が聞いた。
  その横では栞ちゃんも手伝っている。
  不機嫌そうな水瀬が「間違ってセットしちゃったんだよ。」と弁明をしていた。
  6人ともテーブルにつき朝食が始まる。
「いちごジャム美味しい…。」
  水瀬はそんなことを言いながら、トーストにたっぷりジャムを塗りながら食べていた。
「おい水瀬、ジャムつけすぎじゃないか?」
「だっておいしんだもん。」
「甘すぎないか?」
  相沢がビクっとなった。
「そんな事はないよ。美味しいよ。」
「北川君、甘くないジャムもありますけど?」
「そんなのがあるんですか?」
「私のお気に入りなんですけど。」
  がたかたがたがた。
  美坂、相沢、水瀬、栞ちゃんが一斉に立ち上がる。
「ご、ごちそうさま。」
「俺も、今日はこれでいいや。」
「おば様のこしてすみませんけど。私はこれで。」
「美味しかったです。ごちそうさま!」
「あら賑やかねぇ。」
「お、おいどうしたんだ!」
「わ、わたしは、もうおなかいっぱいだから。」
「生きて残れよ。」
「無理にとは言わないけど。朝食切り上げた方がいいわよ。」
「北川さん、御免なさいです。」
  バタバタとどこ行くでもなく散らばって行く。
  危険な雰囲気だが逃げ遅れたような気がする。
「このジャムなんですけど、試していただけます?」
  綺麗なオレンジ色をしたジャムだ。

 昼頃、相沢の部屋に集まっていた。
  楽器の練習をする為だ。
  そして、そこには俺の居場所はなかった。
「相沢君、この曲簡単らしいからやってみない?」
「そうだな、あわせて見るか。」
  一方では。
「名雪さん、これで大丈夫ですか?」
「合ってると思うよ。」
  意外なほど美坂と相沢の上達は早かった。
  そして、栞ちゃんも水瀬と力を合わせて頑張っている。
  あの二人がどうやったら、とも思うが…。
  そう言って、4人は練習をしていった。
  そして。
「おい、皆であわせて見ようぜ。」
「そうね、そろそろ。」
「わかりました、やってみます。」
「栞ちゃんがんばれー。」
「この曲でいいか?」
「いちばん簡単なやつね。」
「これしか出来ないです。」
「北川、これでいいか?」
  見たこともない楽曲だ。
「俺知らないぞ。」
「え?」
  そう、水瀬のお母さんが練習用に用意した楽譜の曲だ 。
  しかも俺の知らない。
「私歌えるよ。」
  予想外な事は立て続けに起こった。
「なら北川の代わりに歌え。」
「そうね、名雪やってみたら?」
「うん、わかったよ。ごめんね北川君。」
「あ、ああ。」
  その後、一朝一夕ではどうにもならないのが、目に見えるほど下手なバンド演奏が終った。
  だが、水瀬だけは上手かった。
「ヴォーカル、名雪がやったほうがいいかもしれないわね。」
  美坂がそう提案した。
「わーい、名雪さんなら大歓迎です。」
「しょうがない、俺もそれでいいぞ。」
「おい、俺はどうなる?」
「そうね、北川君はどうしたい?」
「だからヴォーカルを…。」
「北川、お前ちゃんとできるのか?」
「今の曲は俺が知らないんだからしょうがないだろ。」
「じゃあ他のパートでやって見るか?」
「相沢君、それは無理ね。」
「私、これ面白くなってきました。」
  栞ちゃんがそう言った。
「これで、栞のベースは固定。ギターは今私より上手く出来る人はいないわ。ドラムスもね。」
「つまり残りは、楽器がないからヴォーカルか?」
「それは北川君が歌えないから無理。」

  俺、美坂、相沢、栞ちゃん。
  このメンバーで組めば相沢と栞ちゃんは更に仲良くなって。
  俺も美坂と更に仲良くなれるはずだった。
  美坂と更に仲良くなる為のバンド計画は終止符を打った…。

 

あとがき

どんな才能がある人でもまともに楽器が弾けるようになるには相当な練習が必要です。
ましてや、リズム感がない人間にベースはまずつとまりません。

別に北川君が嫌いなわけじゃないけど、どうしても影が薄いキャラになってしまう人。
人形を見つけたり校庭に居る栞を見つけたり…。
重要な役どころをもっていってもそれ以上にならない北川君。
頑張れよ!



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2000.04.12


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