LAWBREAKERS vol.1

 自分で悪いことを考えていると実際に悪い事が起きる。最初は嘘と思っていたが、そういうことを研究しているところがあると聞く。世の中暇な奴もいるもんだな。

 だが、自分で良いことを考えてよいことが起こった例はない。さらにそういう事を研究しているところもあると聞く。どうにかして欲しいものだ。

 そう、その時は自分があんな目に会うとは思いもしなかった。

 

「ねえジャグ、宝捜しに行かない?」

 メグが急にこんなことを言い出した。

「……どうしたんだ急に」

 俺は新聞に目を落としたまま言った。

「この前助けた商人さんから依頼があったんだ」

「……なんで向こうはこっちの事を知っているんだ?」

 俺は不思議になって聞いてみた。新聞に目を落としたまま。

「エイジが助けた時に名刺を渡したんだって」

 ……あの野郎……いつかマジで殺してやる。でもなんであいつは名詞なんて持っていたんだ? 誰もいないほうを向きながらそんな事を思った。メグは頭に?を浮かべたような顔をしている。

 

 事の発端はメグの提案で「三人仲良くピクニックに行こう♪」という事だった。ここで断ると後が怖いので、俺は渋々ついて行くことになった。

 山に来たまでは良かったのだが、そこでたまたま野党に襲われている商人達を見つけた。

 ここで普通に助けに行ったというなら俺もこんなにはムカついてはいない。エイジの野郎、あろうことか野党と一緒になって商人を襲いやがった。そしたら野党の一人がエイジになにやら文句を言ったらしく、エイジがそいつらと戦闘を始めやがった。……俺とメグを巻き添えにして。そしたら何故か商人を助ける形になってお礼まで貰いやがった。世の中絶対に間違っている。

 

「ねえ、行くの? 行かないの?」

 メグがしつこく迫ってくる。

「……ところでどこに行くんだ?」

 まだ新聞には目を落としている。

「デミント遺跡」

 それを聞いて俺の動きがピタッと止まる。

「あそこは確か貴族地域に指定されているところだったような気がするんだが」

 貴族地域。それは各国々の王族・上級貴族によって構成される,通称“院”によって指定されている特別地域のことだ。当然一般人には入れない場所であって、侵入すると死刑になっても文句は言えない非常に危険な場所なのだ。

「ところでその依頼は合法的なのか?」

「違うけど」

 メグのあっけらかんとした声に、俺は目の前が白くなっていくのを何とか抑え、メグの方に向き直った。

「気は確かか? 捕まったら殺されるぞ」

「それは分かっているけど」

「分かっていない。んなことやってられるか」

 新聞を丸めて漫才のノリでメグの頭を叩いた。

 すると。

「うう〜」

 やばい、こいつ泣きそうな顔になってる。

「びえええ〜」

 あ〜あ、始まった。俺は内心、頭を抱えた。

「おいおい、分かったから泣くのは止めてくれ」

「……ほんと?」

「ああ、じゃ今から依頼主の所へ行くぞ」

「うん、ありがとう! ジャグならそう言ってくれると思った」

 ……こいつさっきまで泣いていたよな。

「……と言うわけだ。エイジ、お前も来い」

 俺はエイジに先刻の話を聞かせた。

「面白そうだからな、行ってやるよ」

 あっさり引き受けやがった。少しは考えればいいものを。

「それじゃ行くか」

 とはいうものの、いまいちやる気が出てこない。

「うん♪」

 ……こいつは至って元気だ。さて、どうなる事やら。


続く


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2000.07.24