LAWBREAKERS vol.2

 俺は今ものすごく後悔している。依頼主の所に行っては見たんだが、出迎えてくれたのは体格のいいでかいおっさん達で、俺達を有無を言わさず家の中へ連れて行き、そのまま地下室へと案内した。こり ゃ逆らったら殺されるな。

 地下室は金持ちの象徴のような物で大きければ大きいほど良い。ちなみに俺達のいる地下室はそう大きくはなかった。俺達はいかにもというような奴の前までエスコートされると、そいつはこう言った。

「デミント遺跡に忍び込んできて欲しい。最下層にたどり着いたらこれを置いてきてくれ。くれぐれも見つからん様にな。頼んだぞ」

 すると護衛の一人が俺に小さな箱をくれた。

「……これは何なんですか?」

 無駄とは思いつつもとりあえず聞いてみた。

「頼んだぞ」

 案の定そいつは俺を無視して奥の部屋へと引っ込んでいった。

「…………」

 何だか嫌いだな、ああ言った奴は。そのあと俺達は来た時と同様、有無を言わずに連れ出された。

 

 

 

「なあ、それ何なんだろうな?」

 エイジが箱を眺めながら聞いてきた。

「案外爆弾だったりして」

 メグがこんな事を言った。

「んなアホな。じゃあなにか? あいつらはテロでもしようとしているのか?」

「もしかしてわたし達捨て駒?」

 身も蓋もない話になってきた。

「……自警団のとこにでも行くか?」

「だがもしこれがマジで爆弾だったらえらいことになるぞ」

 段々不安になってきた。

「もし爆弾の類だったとしてもどうやって起爆させるんだ? ま、そんな事はないだろうからさっさと行こうぜ」

 確かに。エイジにしてはまともな意見だ。いや、奴は多分深く考えていないだけだろう。

「……あいつはどうしてあそこまで楽観的なのかね?」

「知らない。たんに無神経なだけじゃない?」

 メグの台詞とは思えない言い方に少し絶句する。

「……実はお前ひどいやつだろ」

「ジャグほどじゃないよ」

 ……俺ってそんな風に思われてたのか?

 

 

 俺達は夜になってから遺跡に来た。

「さて、どうやって入ろうかね?」

 警備はあまり見られないが油断はできない。

 俺は後ろから警備員に近づくと、素早く締め落とす。手を振って突入の合図をかけると、先陣を切った。にしてもここの警備員は弱かったな。もっとてこずるかと思ったのに。貴族達も金がないのかな。

「よし、行くぞ!」 

 俺達は意気揚々と乗り込んでいった。

 

「……妙だな」

 俺はぼやいた。遺跡に入ったのは良かったが、他の警備兵の姿が見えない。入口の時といい、一体どうなってるんだ? すでに、四・五階は降りているというのに。別にこれといったトラップもないし。
でも一階一階がが迷路のようになっていたため、時間はかかってしまった。

 まったく今回の仕事は不可解な事が多すぎる。ああ、何であんな怪しい奴を助けちまったんだろう? そもそもエイジの奴が……

 

 そろそろ十階を降りただろうか。なにも起こらないというのもなかなか怖いもんだな。一つ気付いたんだが、壁が階を増す毎にじめじめし始めている。そういやさっきエイジがこけてたな。この遺跡は他の遺跡と違ってやけに人工的な感じがする。多分できてから数十年しか経っていないんじゃないかな?

 

 ついに二十階を突破した。

「なあ、ここはどこまで続いてんだ?」

 エイジはどうやら飽き始めたようだ。

「いいじゃない。楽しいんだから」

 ……メグはまだ元気がいい。

 

 いい加減に降りていくのに飽きてきたところだった。目の前に大きな扉が現れたのは。

「えらく大きな扉だな」

 率直な感想を述べる。

「しかもえらく硬いぞ、一体なんでできているんだ? 鋼か? 鉄か?」

 エイジが扉を叩いている。

「開けてみようよ」

 俺とエイジが全力を出して、ようやくその扉は開いた。扉の奥は見た事のないような彫像でいっぱいだった。

「何だか気味が悪いね」

 メグが不安そうに言う。部屋に置かれてあった彫像はどれも桁違いに大きく、全て形はばらばらだった。そのせいか、広い部屋なのにやけに狭く感じた。

「奥のほうに行ってみようぜ」

 俺達は奥のほうに行ってみたが行き止まりになっていた。

「ここじゃないか? あいつらが言っていた所は」

「じゃあ置いて行くか」

「けっこうあっさり終わったね」

 俺が箱を置こうとした時、俺達の右手の方の壁が、ゴリッと音を立てて外れた。

「……なんで開いたんだ?」

「俺に聞くなよ」

「何かの仕掛けでも動いたんじゃないの?」

 変だな。と思った瞬間、中から入口にあった彫像と同じ形をしたモンスターが飛び出してきた。

 異形のそれは五・六体はいた。尻尾、多足、顔なし、はては有翼種まで様々だった。そいつらに統制というものはなく、バラバラになって向かってきた。

「なんなんだこいつら!?」

「とりあえず逃げるぞ!」

 俺達は完全に不意を付かれた。身構える暇もない。俺達は振りかえると一目散に逃げ出した。

「どうなってるんだ畜生!」

「愚痴るな、さっさと走れ!」

「いやああぁぁ!!」

 

 なんとか距離を置く事に成功した俺達は、自分達の武器の感触を確かめると、とりあえず逃げてきた方を見る。しばらくすると奴らの姿が見えてきた。

「ここで迎え撃つぞ」

「へっ、あんな奴らぶっ飛ばしてやるぜ!」

 エイジが強気な事を言っている。

 敵との距離が近付くに連れて、俺はある事に気がついた。

「……なあ、増えてないか?」

 確か敵は五・六体だったはずだ。しかし、今目の前にいる数はざっと数えても三十体はいる。

「ああ、増えてるな」

 エイジが答える。

「やっぱ逃げるか?」

「逃げようよ」

 俺達はまた逃げ出した。

 

「ここまで来れば大丈夫だろう」

「久しぶりだぜ、こんなに走ったのは」

「疲れたよう」

 俺達は息を整えるとどうするか考えた。

「あの箱はまだ持っているか?」

 エイジが通路の方を向いたまま聞いてきた。

「ああ、ここにあるぜ」

「開けて見ないと気がすまねえ。あいつらはこの事を知っていたはずだ」

 エイジは箱を強引に開けようとした。しかし、以外にあっさりと箱は開いた。

「なんか石が入ってるぜ」

「綺麗な石ね。……ってあいつら来たよ!」

 ……なんか無性に腹が立ってきた。なぜ俺らはこんな目にあっているというのだ。

「俺はやるぜ。あいつらが何十体いようが構うものか」

「珍しく意見があったな、ジャグ」

「ふん、行くぞ」

 俺達は勢いよく駆け出した。


続く


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2000.07.28