LAWBREAKERS vol.3

「うおおおおぉぉぉぉ!!」

 俺はバスターソードを振りまわした。最初の一振りで三体を吹き飛ばす。返す刀で剣を振り上げると更に数体を切り裂いた。数は多かったが、一体一体の力量はそれほどでもなかった。更に団体で行動していないので、数を減らすのにそう時間はかからなかった。

 数分も経つ頃には敵は一匹だけになっていた。

「はあはあ、あとは貴様だけだ」

 そいつは亀に近い生き物だった。いや、亀を基に作られたと言った方が良いな。なぜなら、頭が二つあったからだ。そして爪が以上に長く、反面尻尾はまったくといっていいほどなかった。

 俺は脳天めがけてバスターソードを振り下ろした。相手は亀だ、これで終わりだろう。と思っていた。 しかし俺の考えは甘かった。その亀は一瞬で俺の目の前から消え、後ろから爪で切りかかってきた。

「なに!? くそ、こいつ速ええ」

 俺はそれを紙一重で避け、振り向きざまに手を切り裂いてやった。そいつは俺の反撃に驚いたのか、後ろにさがるとすごい勢いで駆け出した。俺はすぐさま追おうとしたが、そいつは恐ろしく速く捕らえ る事ができない。

「逃がすかああァァァ!!」

 俺はバスターソードを投げ付けた。投げた剣は亀を貫くと、そのまま向こうの壁に亀を縫い付けた。その場までかけつけると、剣を引き抜き今度こそ脳天めがけて振り下ろした。そいつの甲羅は以外と軟らかく、亀は真っ二つになりドス黒い血を撒き散らしながら死んでいった……と思ったらそいつの傷口から一つの肉塊が飛び出した。俺はそれを剣で難なく弾くとじっと観察した。

「なんだこいつは?」

 まだグニグニと動いている。気持ちが悪かったので俺はその肉塊を踏み潰した。……あまり言い音じゃなかった。とりあえずどんな音だったかは伏せておくことにする。思い出したくない。

 

 エイジの所にかけつけると、エイジもあらかたの敵を倒しており、相手は一人だけになっていた。エイジの相手は鎧だった。しかし、その鎧は浮いていた。なんのことわりもなく。ゴーストの類は聞いたことはあったが実際に見たのはこれが初めてだった。そいつは剣を持っていた。……いや、正確にはこの剣もまた浮いていたんだがな。

「おいジャグ、こいつ足がないぞ」

 エイジも初めてなのか、かなり驚いている。

「見りゃ分かるよ。多分ゴーストの類なんだろうな。倒し方は……分からん!」

「威張って言うな! こっちは必死なんだ!」

 よく見るとエイジが必死になって攻撃をさばいている。剣だけが空中で動いている様に見えるせいか、さばきにくい様だ。

 本来、剣の勝負では相手の動きや視線、呼吸を読み取る事が決めてとなる。しかし、今エイジが戦っている相手はそれが全くわからないのだ。かといって俺が入っても邪魔になるだけだろうと思いメグの方に向かった。

「こらぁジャグ、逃げるなあ!!」

 後ろでなんか声がしたが無視した。

 

 メグは仮面のような物をかぶった筋肉質の化け物と向かい合っていた。そいつは人型で手が以上に長く、身の丈がでかいくせに動きが俊敏だった。しかし、なんでこいつらはこんなに動きが良いんだ? あの時逃げきったのが奇跡の様に思えてきたじゃないか。

 二人とも肉弾戦になっている。メグは元々戦術形式が格闘技なので武器は使わない。どうやら相手も同じらしく、両者とも間合いの取り合いを続けながら攻撃の機会を伺っている。

 先に仕掛けたのはメグの方だった。独特の歩法で間合いを一瞬でゼロにすると、その勢いを使い左手で高速の初手を相手の顔めがけて繰り出す。あれはフェイントだな。その証拠に右腕が引き絞られている。敵はメグの左手を両腕でガードした。次の瞬間、裂帛の気合と共に相手の脇腹に右拳を放った。轟音と共に相手がくの字に折れ曲がる。

 勝負あったな。と俺が思った瞬間、敵の右腕がゆらりと動いた。

「メグ、まだ終わってないぞ!!」

 俺は叫んだが間に合わず、敵はメグの右足を掴むと宙吊りにした。俺は直感的にやばいと感じ駆け出 した。案の定、敵はメグを壁に目掛け思いっきり投げ飛ばした。

「!!」

 メグは声にならない声をあげると、そのまま気を失った。化け物はメグにとどめをさそうとゆっくり 近付いていく。

「させるかああ!!」

 俺はバスターソードを正眼に構えると、叫び声と共に襲いかかった。

「お、やっと目え覚めたみたいだな」

 メグが目を覚ました。メグの前に座り込んでほっと息をつく。

「あれ、あいつは?」

「ああ、あれか?」

 俺は既に肉片となったやつを指差す。

「ジャグが倒したんだ」

「ああ、悪いが美味しいところは俺が貰ったぜ」

 そう言って、自信満々の笑みを浮かべる。

「助けてくれたんだ」

 メグが膝を抱えて蹲る。

「まあそう言う事になるな」

「……アリガト」

「なに言ってんだよ当たり前の事だろ? それに暗い顔をすんな。似合わんぞ」

「ふふ、そうだね。あはは」

 ようやくいつものメグに戻った。

「あれ、ジャグ怪我しているよ」

 俺の頬についた怪我の事らしい。

「ああ、さっきやり合った時に殴られちまった。まあ大丈夫だ。それよりもお前、今度から何か武器になるようなものを持っとけ」

 俺は立ち上がると尻についたほこりを払った。

「さあエイジの所に行くぞ。もう決着がついているかもしれないけどな」

「うん」

 メグが元気よく答える。やっぱりこいつはこうでなきゃな。

 エイジの所に行くと既に決着がついた後だった。エイジはその場に座り込んでいる。

「なんだ、もう終わってたのか」

 残念そうに言う。

「悪かったな期待外れで。そうだ、さっき変な蝙蝠が飛んでいったぞ」

「蝙蝠? そんなのいたっけ?」

 俺は入口の所に有翼種の彫像が合った事を思い出した。

「まあいい。石も置いたことだしさっさと帰るぞ。あいつらに今回の事を問い詰めなければならないからな」

「は、また意見が一致した。明日は雨か雪かもな」

「まあまあ、こんなところで喧嘩しても意味がないよ」

 そう言い合いながら俺達は遺跡を後にした。


続く…かもしれない…(爆)


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2000.08.09