小説コーナー第2弾はHARRYセンセの「山頂の風」です!
恋の話ですよ!お楽しみに!
今回も前中後編に編集いたしました。

山頂の風(後編)

 そんなことがあって、すぐに元に戻れるはずもなかった…。みんなの中を妙に重苦しい空気が流れて、正直にいうとオレは息苦しかった。

 オレは後悔してた。はっきり言うとオレは言いすぎたんだ。もっと別の言い方があったかもしれない。

「ね、拓郎君、起きてる?」

その夜寝つけないオレに声をかけたのは沙雪だった。

「ああ」

「散歩、行かない?」

そういうわけでオレは抜け出した。ほかの連中は一応寝てるらしい。少なくとも寝ているようには見せている。

「わりぃな」

バンガローの外にでるとオレはぼんやりと誤った。

「ん?」

「昼間の事…。なんか、オレ言いすぎたかな?」

「そんなこと、ないよ…」

月明かりが綺麗だった。虫の鳴き声が夏を感じさせてくれる。そこへ降り注ぐ月の光は白くて、ひんやり冷たくて、気持ち良くて、どこか不思議な輝きだった。

「ごめん」

今度あやまったのは沙雪だった。

「ね、待っててくれたんでしょ?」

オレは答えなかった。

「昼間、カッコ良かったぞ」

「ばぁか」

沙雪の声に少し恥ずかしくなってオレは照れ隠しにそう言った。虫の鳴き声に混じって川の音が聞こえる。それは、すごく、とても、綺麗だった。

「前に、海で溺れたの覚えてる?」

「ああ」

なんだか沙雪の声が違って聞こえる。胸がドキドキした。

「あの時、私すごく心配した。もう二度と会えないかと思った…。けどね、そのあとの拓郎がすごく元気で、私安心した…」

オレはただ聞いていた。オレは、本当に知っているのか?彼女の気持ちを…?

「でもね、がんばってたんだって、初めて知った。いつもいつもずっと、がんばってたんだって…」

そうかもしんねーよな。オレは頑張ってたかもしんねー。けど、それは…。

見えなきゃ見えないで良かったかもしれない…。オレはなるべく沙雪のそばにいようとした。困ったことがあったらいつでも助けてやりたいと思ってた。その困ったことが恋愛であったとしても、オレは助けてやりたい…と思った…。

「言っとくけど、無理しなくてもいいんだぜ?」

けど、結局気持ちは割り切れなかったのかもしれない…。

「無理なんかじゃないよ。今日、初めて、わかったんだ…」

「そっか…」

良助と夏実はきっと上手く行くだろう!よっしゃ!明日はみんなで川に泳ぎに行こう!


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1999.11.27


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