小説「クロノス・ジョウンターの伝説」

著者 梶尾真治 ソノラマ文庫NEXT

カジシンこと梶尾真治の短編集。
「愛は時を越えるか?」というテーマを基に書かれている。
この作品には”時間軸圧縮理論”をもと造られたいわゆるタイムマシン、
”クロノス・ジョウンター”のまつわる話が3本収録されている。

さて、クロノス・ジョウンターという機械の説明をせねばなるまい。
これは、タイムマシンなのだが”時間軸”を圧縮されて過去に行く為すぐに現在に戻されてしまう。
いや、戻ってくる時間は現在よりも遥か未来となってしまうのだ。
バネを想像してくれると分かりやすいと思う。
バネのそのままの状態が現在、縮んだ状態が過去、しかし、縮んだバネを押さえているものを離すとどうなるだろう?
そう、そういう事なのだ。クロノス・ジョウンターで過去に飛んだものは遥か未来へ弾かれてしまうのだ。
しかも、何故か一度飛んだ過去より前の時間には飛べない。

☆吹原 和彦の軌跡
3本の中でも唯一バッドエンド(?)
とにかく切ない。まだ恋人でもなんでもないはずの女性を(いわゆる片思い) 助ける為に自らを犠牲にする。そんな話。
ちなみにこの吹原という人物はクロノス…の開発者の一人である。

☆布川 輝良の軌跡
彼は、クロノス・ジョウンターと、過去に滞在する時間を延ばす機械”パーソナル・ボグ” の実験の為に過去に飛びます。
そして、過去で出会った少女、枢月 圭といつ間にか恋に落ちてしまう。
刻々と近づくタイムリミットの中、布川は全てを圭に話す。
それでも圭は彼の事を想い続けると誓う。
「未来に帰ったら会いに来て」「でもそんな事はしないの、好きな人に自分の醜い姿なんて見せたくないもの」
そして過去での目的を果たし未来へと帰った彼に待っていた出来事は…

☆鈴谷 樹里の軌跡
この作品は単行本の為に書き下ろされたものです。
小さな頃に病院で優しくしてくれたヒー兄ちゃん。
彼女は、幼いながらも彼に恋していた。しかし彼は当時、いわゆる不治の病に侵されていたのです。
そして看護婦から彼は死んだと告げられる。
その事がトラウマとなり、彼女は医者になる。しかし、どんな男と付き合っても全然その気になる事はなかった。
そんな時、ヒー兄ちゃんと同じ病気の少女を助ける薬ができる。そしてひょんな事からクロノス・ジョウンターの事を知る。
何の迷いもなく彼女は薬を持ち、過去へと飛んだ…。

感動した所BEST3
1,未来に帰ってきた布川を過去で出会った圭の元・婚約者 香山の息子が手紙と圭のスケッチブックを持ってくる所
布川を追って圭もクロノス・ジョウンターに乗り、過去の姿のまま布川と再会する所

2,過去に飛んだ樹里がヒー兄ちゃんに自分の事をバラした時、「未来でお医者さんになったんだね。ぼくを助ける為に、がんばったんだね。」
と彼が言い、樹里が子供のように泣きじゃくる所。

3,たんぽぽ娘。(謎)「一昨日は兎。昨日は鹿。そして、今日はあなた…。」

この本が与えてくれる感動は最上級です。買って損はないでしょう。
この本に限らず、彼の本にまずハズレはないです。
お勧めは「地球はプレイン・ヨーグルト」内の「詩帆の去る夏」

ん〜なんか只の本の紹介になってしまったような…
そんなにdeepじゃないね
そんなわけでこんな感じで終わりますか。とりあえず。
以上、レポーター恵未でした。