ある戦士のお話
戦う、倒す、金をもらう
それが今の俺の生活の全てだ
考えることは得意ではないが、
自分なりにどうしてこうなったのかと
今までを振り返って見たくなる
子供の頃は勇者になりたかった
さらわれた姫を求めて暗い迷宮に分け入り
迫り来る怪物を一掃し
悪の魔術師を退治する
暖炉のそばで婆さんが話してくれた話は
いつも俺を暑くさせてくれた
いつだったか、本物の勇者にあったことがある
ドラゴンを倒したというその勇者は
誇らしげに剣を掲げていた
その姿に見とれる俺を
母さんはひどく悲しげな目で見つめていた
俺が15になったとき
俺は親父の剣一本を背負って家を出た
勇者になるために
初めて敵を斬り殺したとき
俺は血糊のついたままの剣を抱えて
一晩中ふるえていた
勇者にはなれなかったが俺は今の自分に満足している
今の俺にはこの充実感があるのだ
肉を切る音
骨を削る音
血が滴る音
俺を呼ぶ声・・・・・