落語もどきホラーもどき   キャプテンAT

昔から変わった物を売る店というのは多うございますが、価値観の多様化した現在では尋常でないかわりかたをしたお店もございますようで。

「こんにちわ、大家さん」

「おう、来やがったな。店番頼む」

「へい」

「ちっと変わった客が来るかもしれんが気にするな」

「へーい」

「何か用があったら来てくれ」

「へーい、ふん、店賃のかわりに働かせやがって。どうせだれも来やしねぇだろうから眠って過ごすか」

「こんちわ」

「なんだ、いきなり客が来やがったな」

「うちの河童野郎が扇風機に向けてレールガンを撃ちやがって羽が壊れたんだが何か代わりになる物はないか」

「これなんかどうでしょう」

「ちょっと大きすぎねぇか」

「いえ、いえ、大きければそれだけよく冷えるという道理で」

「おお、じゃぁこれをもらっていこう」

 

「おい、何か売れたか」

「あ、大家さん、扇風機の羽根が欲しいという人が来たんで、そこにあった物を売りつけました」

「何、お、お前そりゃ俺がブーゲンビルから苦労してとってきた一式三二三号機のプロペラじゃねぇか」

「はあ」

「貴重品を安く売るな。今度ばかりはしょうがねぇが今後気をつけろよ」

「へい」

 

「こんちわ」

「はい、はい、何でしょうか」

「ホラー系のマスクはないですか」

「これなんかどうでしょう」

「ちょっと臭いな。まあ。これをもらっておくか」

「ありがとうございます」

「なにかうれたか」

「あっ、大家さん、ホラーのマスクが欲しいという人が来たんで、そこの瓶に入ってた奴を売りつけましたが」

「何、お前、そりゃ俺がお湯につけて戻しておいた干し首じゃねぇか」

「こっちのお面の方が良かったんでしょうか」

「いや、そりゃまずい。そいつは肉付き面だからかぶったら二度と剥がせなくなる。訴えられでもしたら厄介だからお前のやったとおりでよろしい。私は用があって奥に引っ込んでるから何かあったら呼んでおくれ」

「文句がねぇならがたがた言わなきゃいいのに。おっ、また客が来たな」

「おう、誰もいねぇのか。借金に首がまわらなくなって皆首をくくったか」

「えらく乱暴な奴が来たな。はい、店員はちゃんといますよ、ここに」

「おう、まだ生きてる奴がいるんならさっさと返事をしろ。おい、俺の親父の頭蓋骨をくれ」

「えっ、そんなものをどうなさるんで」

「俺は今立川流に凝ってて、どうしても親父のしゃれこうべがいるんだ」

「しかし、この店にはあなたの欲しがっている物はないようですが」

「そんなはずはない。この店の親父が俺の親父なんだから。もう五度もこの店で親父のしゃれこうべを買っているんだ」

「え、そうですか。少々お待ちください。全く、大家にあんな子供がいるとは。あいつはきっと頭がおかしいんだな。同じ人間のしゃれこうべが五つもあるわけじゃねぇか。第一、大家はまだ生きてるじゃねぇか。おっ、ここが奥の部屋の扉だな。なんか変な音が聞こえるな。もしもし大家さん、息子さんがあなたの頭を欲しがっていますが・・・」

といって扉を開けますと、そこにはクローン培養器がありまして、そこからわいてくる大家がうじゃうじゃ・・・