![]() 遠い遠い何処かから、微かな微かな音が聴こえる。 それは、晴れの朝を運ぶ小鳥のさえずりだったのか、それとも、程近く躯を寄せ合った男 の健やかな寝息だったのか。 また訪れた、雨上がりの朝のしっとりとした空気の中、閉じた目蓋を透かす柔らかな光に 呼ばれるように、八戒はゆっくりと瞳を開いていった。 うっすらと蒼味を帯びた目蓋がゆるゆると持ち上がり、凪いだ湖水を思わせる翠が現れ光 を弾く。 カーテンを引き忘れた窓から零れる光が八戒の瞳を輝かせ、朱の華が散る白い肌に微妙な 陰影を描き出していた。 ―――…朝……? まだ幾分か眠りの世界に残る視覚や聴覚が徐々に現実を捉え始め、意識に時を知らしめる。 いつもよりも遅い時刻を告げる光の強さ。 その光に迎えた朝の遅さを悟り、八戒は小さな苦笑を浮かべて寝返りを打った。 昨夜の激しい情交に気だるさを訴える躯で、出来る限りゆっくりと横を向く。 静かに、静かに、寝台を揺らさぬように慎重に。 その抑えられた密やかな動きは、決して己が躯を労わる為のものではなく、ただ一重に、 肌が触れる近さで眠る男を起こすことがないようにと気遣われたものだった。 「…悟浄…」 朝の健やかな光を弾かせる翠の瞳に男を映し、昨夜の名残か、まだ朱を帯びた唇で吐息に 隠して音を紡ぐ。 空気に溶けてしまいそうなほどに抑えられた、喘ぎに掠れた囁き声。 その声が生み出したひとつの言葉は、誰に聴かれることもなく部屋に広がり、それを綴っ た八戒自身の耳にだけ明確な意味を伝えて、再び八戒の中へと戻っていった。 言葉に込められた愛しさが、八戒の躯をクルリと巡って心に還る。 世界に存在するどんな言葉よりも恋しくて、誰より多く音に刻んだであろうその言葉。 唇に乗せた回数も、心に呟いた回数も、今では誰と争っても一番を譲ることのないであろ うその名前。 それは、ただ口にするだけで、何かを生み出す不思議な力を持った音。 「―――…悟浄……」 またひとつ、その記録を伸ばすように唇を開いた八戒は、愛しげな眼差しをその名を持っ た男に注いだ。 陽射しに煌めく瞳の先で、寝乱れた白いシーツに緋色が散る。 射し込む光に、艶やかな髪を散らして眠る男を見詰める八戒の口許に浮かぶ、緩やかな笑み。 注がれた視線は、今は閉じられている目蓋を透かして、その瞳を見詰めていた。 たとえ視線を絡めてなくても忘れることなど在り得ない、髪にも負けない血色の深紅。 その色こそは、死と言う楽土を望んだ八戒を、この世界に引き止めた戒めの、罪の血の色。 けれど小昏く見えたその紅は、ふたりで重ねた時の中でいつしか命を支える暖かな色に替わ っていった。 ―――綺麗……。 窓から注ぐ光の粒子が長い髪に戯れて、より鮮やかにその色を輝かせる。 躍動する力に溢れた、命を育む暖かな血の色の髪。 ほっそりとした指が、その髪を一筋掬い上げ、大切そうに握り込む。 白くたおやかな手に緋色を絡め遊ばせて、その手の中に微かなぬくもりを見出した八戒は、 僅かながらに目を瞠った。 温度を持たない筈の髪の毛が、なぜかほんのり暖かい。 不思議そうな面持ちで、サラサラとした髪を手指で遊ばせ続ける八戒の口許に、クスリと 小さな笑みが零れる。 頭皮近くならいざ知らず、長い髪の毛先にぬくもりがある訳など在り得ない。 それなのに、それでもそう感じるのは、ただ自分が信じ込んでいるだけなのだ。 悟浄は暖かい――そのように、なんの疑いすら持たずに。 「まだ起きないでくださいね―――」 己が結論に笑みを浮かべたままの唇で寝入る恋人に小さく囁き、髪を手放した指先で眠り の深さを計るように胸許にそっと触れてみる。 肌を撫でる指の感触にもピクとも動かず眠り続ける無防備さ。 それは、傍に置いた自分への信頼の深さの表れであるのだろう。 その想いに、瞳に柔らかな色を加えた八戒は、悟浄の胸に頭を預けた。 素肌に寄せた耳と頬から伝わる、自分のものより高い体温と落ち着いた鼓動。 熱い躯の中から聴こえるトクトクと規則正しい心音は、これ以上ないほどの安らぎを感じ させる。 それなのに―――。 触れ合う肌から伝わる熱と音にまた眠気を誘われて瞳を伏せた八戒は、閉ざした視界の中 で瞳を不安げに揺らした。 光を失った世界に広がる闇色の後悔。 不意に訪れた闇が、朝の光に和いでいた八戒の心を揺さぶり、昨夜の行為を思い出させる。 光の届かない、閉ざされた視界の中に甦る己が痴態。 豪雨の中での情事を振り返るように、八戒がおずおずと自身の躯を探っていく。 耳朶を滑り、鎖骨を抜け、胸許で止まる白い指先。 描いた軌跡は昨夜悟浄の唇が辿ったものそのままで、八戒の躯を震わせた。 ―――…痛い…。 軽く触れた胸先に走り抜ける、疼くような痛み。 その痛みは、雨の夜に自己の断罪を求める八戒が、男にねだった結果のもの。 もっと噛んで…と、雨音の中で自ら苦痛をねだったものだった。 …すみません…。 光の射し切らない世界に迷い込んだ八戒の心の中で、肌を寄せた男に向かって、音になら ない謝罪の言葉が呟かれる。 視界を閉ざされた闇の世界では、心を安らがせる筈の熱も、落ち着きを保った優しい鼓動 も、全てが哀しく感じられた。 「…悟浄―――」 切なげな声を密やかに零して、悟浄の胸により強く頬を押し付けた八戒の唇が、その胸へ と静かに触れる。 雨夜ごとに過去を振り返る八戒を、いつでも抱き留めてくれる暖かで広い胸。 八戒に向けて、いつも惜しみなく開かれているその場所。 けれどその中には、どれほどの悲哀が溢れているのだろう? 八戒が過去を見詰め、瞳から恋人を消し去る雨の夜。 その間も悟浄はひとり、八戒だけを見詰め続けてくれるのだ。 愛を返さない躯に贈られる、いつもより深い愛の行為。 己が許へと恋人が帰ってくるのをひたすら待って、ねだられるままに与え続ける快楽は、 どれほどまでに虚しいか。 暖かな悟浄の腕の中に守られながら、八戒が雨を見詰め続けるその間中、優しい人の胸の 内側は、きっと冷たい雨に濡れているに違いない。 なのに、それでも決して手を抜かれることのない愛撫は、優しければ優しい分、切なく哀 しい―――。 衣類を身に着けていない肌を包む真白なシーツをギュッと握り込んだ八戒は、ゆるゆると 目蓋を開いて、憂いの瞳を光に晒した。 射し込む光を反射して、キラキラと輝く湖水の翠。 けれど明るい朝の光もその底まではさすがに届かず、瞳の奥で闇が澱む。 心に残る後悔と、過去に囚われたまま、恋人を傷付け続ける自己への嘲笑。 それを消し去るかのように数度瞬きを繰り返した八戒は、悟浄の肌の上に指を下ろした。 その指が、そうっと、熱い肌を辿っていく。 筋肉を纏った逞しい腕。 呼吸のたびに上下する厚い胸。 贅肉のない引き締まった腹。 そして、月光と戯れる生活を好むくせに太陽にも愛される、冬でも褪めない健康的な褐色 の肌。 誰より生を謳歌しているような躯の内側に、たくさんの傷を抱えながら生きている悟浄。 禁忌の子として重い枷を背負い、求めた愛の欠片すら手に入れることも叶わずに、それで もひとりで生き抜いて、そして今は、八戒の苦痛すら癒そうとその腕を伸ばしてくれる悟浄。 憧れて止まない、その強さ―――。 焦がれる想いにほぅ…っと長い息を吐いて、滑らせていた指を腹部で止めた八戒は、その 躯を抱き込むように腕を廻した。 腕の中に収めた筈の躯から伝わるぬくもりが、八戒の躯を逆にやんわりと包み込む。 そのじんわりと染み入る、いつもなら歓びを運ぶ穏やかな熱が、雨上がりの今朝は心に痛 かった。 「…悟浄…」 ただ繰り返すその名の中に、想いの丈。 恋しさと、愛しさと、切なさが入り混じった小さな声が、大事な人の名を紡ぐ。 誰も抱けないと思い決めていながらも、手を伸ばしてしまったほどに望んだ人。 その人を、何度も何度も雨に屈して苦しめてしまう不甲斐なさ。 そして、苦しませると判っていても、手放すことの出来ない独占欲。 心の中で入り混じる様々な想いが、八戒を強く責め苛む。 苦しめたい訳など少しもないのに、それでも雨が降れば、甘え縋ってしまう自分の弱さが 疎ましい。 交錯する想いに胸を塞がれて、息が詰まるような苦しさを覚えた八戒は、ギュッと悟浄に 抱き付こうとして、その寸前で手を止めた。 ―――起こしては、いけない。 眠りの深さは疲労の表れ。 雨夜の情事は、悟浄の精神にこそ深い疲労を齎しているのだ。 雨に浚われた八戒を抱き締めて、快楽と言う、たったひとつの武器だけで過去と渡り合う 孤独な戦士。 その戦いは、体力よりも精神の方を疲弊させるに違いない。 緩く抱いた腕の輪を解き、預け置いた頭をそっと持ち上げて、八戒が悟浄の寝顔を見詰め 下ろす。 僅かに見える疲労の陰。 けれどその陰の中に、どこか満足気な笑みが浮かんでいるように見えるのは錯覚だろうか? 理由の判らぬその笑顔。 それでもそこに幾許かの救いを得た八戒の、雨上がりの健やかな光を受けながら眠り続け る恋人を静かに見下ろす瞳には、愛しさや悲哀に労りが交じり合い、幾重もの層を成した 複雑な綾が織り込まれていた。 …もう暫くは安らかに…。 雨の去った、昼に近い朝の光の中。 悟浄の寝息を耳に捕らえながら、八戒が躯を離していく。 恋人の安らかな眠りを願い、起き抜けと同じように密やかに寝返りを打つ朱の散る裸体。 ベッドを降りようとした八戒の躯は、その寸前で、不意に伸びてきた男の腕に引き留めら れた。 ウエストに廻された逞しい腕が素早く動いて、スルリと体勢を変化させる。 急に引き寄せられバランスを取りきれなかった八戒は、抵抗の間もなく組み敷かれ、その 視界は、流れ落ちる髪で出来た深紅のカーテンの中に閉ざされた。 髪によく似た色合いの、緋色の瞳が悪戯気な輝きを浮かべて八戒を見下ろす。 「……いつから起きてたんですか?」 眠気など片鱗も見せずに煌めく紅に、今起きたのではあるまいと確信して問い掛ける硬い声。 「ん〜、八戒の手が、腹の辺りを撫でてくれてた頃?」 もう少し下まで行ってくれるかと期待してたんだケド…と、戯言を零す唇に楽しげな笑み が浮かぶ。 ばれた狸寝入りにも悪びれずキラキラと輝く瞳の奥には、その光とは相反する、深い慈し みを湛えた真摯な光が垣間見えた。 その光は、一体どこから来るものか。 なじられても仕方ないほど辛い思いをさせている自覚にやり切れず、悟浄の真摯さから逃 げるように視線を逸らした八戒は、消え入りそうな声だけを恋人へと向けた。 「―――…悟浄、昨夜は……」 ごめんなさい…と言い掛けた唇が、その単語を綴る前に悟浄のそれで塞がれる。 顎を掴む大きな手と、口内を擽る熱い舌。 暖かく柔らかな感触を持った唇が、八戒のそこに穏やかな熱を伝えて去っていく。 くちゅ…と小さな音を残して離れていった唇を追って視線を上げ直した八戒に、悟浄は小 さく首を振った。 「でも―――」 「いーから」 なお言い募ろうとする唇を塞ぐ、節の立った長い指。 口付けの余韻を残し、しっとりと潤った八戒の唇を悟浄の指が軽く押さえる。 故意に避けられる謝罪の言葉。 その言葉を奪われることで苦しげな色を浮かべる翡翠の瞳を、暖かな色に輝く紅玉の瞳が まっすぐに見下ろしていた。 優しいけれど有無を言わせない眼差しを向けられて、諦めたように八戒の唇が閉じられる。 決して謝らせてくれない恋人に込み上げるのは、身を切られるような切ない想い。 言葉を封じられた八戒は、その言葉の代わりに小さな溜息を吐き出した。 ―――そう、ちゃんと判っている。 謝りたいと望むのは、ただの自己満足なのだ。 幾度となく重ねた罪。 そして、これからも重ねてしまうであろう罪。 今すぐ過去を断ち切らない限り、この先も八戒は雨夜ごとに悟浄を傷付け続けるだろう。 それが判っている以上、口先だけの謝罪など、なんの意味もありはしない。 なのに、それでもやっぱり謝りたくて―――。 自分の罪を軽くする為でしかない行為を望む己が弱さに、八戒は悟浄の視線から目を逸ら すように目蓋を伏せた。 再び閉ざした視界の中に、また闇の世界が広がる。 その闇が八戒を侵食しようとした瞬間、暖かな感触が八戒の頬を包み、耳慣れた声が八戒 へと届けられた。 「―――オマエがどう思ってるか知らないケド、俺、雨の夜の八戒も結構好きよ?」 不意に届いた思いがけない言葉が、八戒を現実へと引き戻す。 闇から離れ、見上げた先に深紅の瞳。 どこか悪戯めいた響きを残しながらも偽りを感じさせない言葉が八戒を包み込み、明日を 生きようとする命を支える血色の瞳が、柔らかに煌めいて八戒を見詰めていた。 「…悟浄…?」 信じられない思いで見詰め返す八戒に、悟浄がにんまりと笑みを浮かべる。 「だってな〜、雨の日の八戒って、スッゲいーんだぜ? 声は殺さないわ、積極的におねだ りするわ、キュウキュウ締め付けるわでさ、俺も気が抜けねぇくらい床上手になんだよ」 その媚態を思い出したのか、鼻の下を伸ばしてニヤニヤと笑う悟浄に八戒の頬がほんのり と染まる。 行為の間の記憶は曖昧で、悟浄の言葉全てを思い出すことは出来なかったけれど、腕にま で散らされた口付けの痕や胸先の痛み、そして枯れた声と今も躯中に残る気だるさがその 言葉を証明していた。 「…本当に―――?」 頬を包む大きな手に、八戒が自分の手を重ねて問い掛ける。 見上げる翠に真実を見定めようとする真摯な輝き。 本意であろうとなかろうと、雨夜の戦いは今後も続く。 いつ終るとも知れない、孤独な戦い。 その戦いは辛くはないのかと、訊ねる視線に悟浄は口許をゆったりと引き上げた。 「八戒、知ってる?」 「何をです?」 重ねた手を悟浄の手が握り直し、笑みを浮かべた唇へと引き寄せる。 絡めた視線はそのままに、なお深く覗き込んでくる紅の視線を受け止めて、八戒は悟浄の 言葉をじっと待っていた。 「オマエさ、覚えてないみたいだけど、ずっと俺を呼んでるんだぜ?」 「…呼んでる…?」 「そっ、色っぽい喘ぎの合間に、ごじょ…って、俺の名前を何度も呼んでる」 「―――…僕が、貴方を、呼んでいる…?」 掴んだ指先に唇を落としながら嬉しげに語る悟浄を、呆然とした様子で八戒が見上げた。 途切れがちな記憶には欠片も残っていないその事実。 それでも、それが真実だとするのなら、八戒自身も悟浄を求めて、その許に帰る為に戦っ ていることにならないだろうか? そこに帰るのだと、紅き光を目指して綴る、一途な想いを乗せた言葉。 引き戻される時を待つだけじゃなく、自ら帰ろうとする意思の表れのその言葉。 ―――ひとりじゃない…? 知らなかった真実が、八戒の瞳に光を運ぶ。 雨に引き離され、出来た距離を埋める為に戦っているのは、決して悟浄ひとりではない。 別々の場所ではあっても、同じ処を目指して、八戒もまた戦っている。 その事実が、八戒の心に沈んだ様々な澱を押し流そうとしていた。 「……悟浄……」 歓びを滲ませ、笑みを湛えた唇が、世界で一番愛しい名前を柔らかに刻む。 唇に乗せ、音にするだけで、何かを生み出すその言葉。 八戒の中で、明日への希望が小さく芽吹き、罪悪感が薄れていく。 罪が消えた訳じゃない。 それどころか、これからも雨夜ごとに罪は増え、八戒は悟浄を傷付けていくのだろう。 いつか八戒自身が雨を断ち切るその日まで、悟浄の戦いも、八戒の戦いも終わることなど 在りはしない。 雨夜ごとに繰り返される、いつ終わるとも知れない戦いの日々。 けれどそれでも、互いを求め続ける限り、幾度でも立ち上がり、ふたりの明日を望むことは 出来る。 だから―――。 戦うことを辞めない限り、謝罪はいらなかったのだ。 共に戦っていると思っているから、悟浄はそれを受け取らなかった。 八戒の柔らかな呼び掛けに、悟浄の瞳が満足そうな光を浮かべる。 それは、もうひとりの孤独な戦士を力付ける、命を支える暖かさを持った希望の光。 朝の光が照らすことの出来なかった、八戒の心の底まで届く強さを持った紅の光。 ふたりの視界を包み込む長い髪のカーテンの中で、その光を映した湖水の翠が、新たな輝 きを生み出し煌めき始める。 「―――…悟浄」 また紡いだ言葉の中に微かな艶を滲ませて、口付けをねだるように瞳を伏せた八戒の閉じ た視界には、仄明るい薄紅色の世界が広がっていた。 閉じた目蓋の中で新たな世界を見詰める八戒の唇に、柔らかな口付けが落ちてくる。 その耳許にサラサラと、微かに微かに響く音。 それは、光のヴェールを纏って晴天の空から舞い落ちる、細やかで優しい照日雨の降りゆ く音にも似ていただろうか? 悟浄の髪がシーツと戯れる小さな音を耳に心地よく聴きながら、八戒は恋人の頭を朱の散 る腕で抱き込んだ。 何度も何度も啄ばむように交わされる口付けが、次第に熱を帯びてくる。 熱くなり、長くなる口付けに自ら舌を差し出した八戒は、心の内にたったひとり、誰より 愛しい人の名前を呼びながら、いつか戦いの終わるその日まで、共に在り続けられるよう にと真摯に願い続けていた。 明るい陽射しが溢れる部屋。 小さな寝台が軋む微かな音が、柔らかに響き出す。 ふたり抱き合い、戦い明けた休息の時を暫し楽しむふたりの戦士を、晴れの光が暖かに包 み込んでいた。 *END* |