ぽふっ。

…。
ぽふっ…?

緩やかに覚醒し始めた意識を無理矢理に浅い眠りへと引き留めながら、顔に触れ
る鬱陶しいものを払いのけようとしたはずだった。
けれども俺の手が触れたのは、いや、手だけじゃない。手が払ったはずの頬から
額にかけても、奇妙な違和感が通り過ぎた。
「?!」
文字通り、跳ね起きた俺は、思わず叫んでいた。
「なんだ、こりゃ〜〜〜〜?!」

寝起きで働きの悪い頭が見せた幻であって欲しい。
俺は切実に、そう思った。

俺は、一夜にして、全身緑色をした怪獣へと変身していた。

手には、足と同様の黄色い円錐型の爪のついたクッションが嵌められ、尻の下に
敷いたものの奇妙な感触に立ち上がって後ろを見た俺は、目眩を覚えてその場に
しゃがみ込んでしまった。
身体を包む、ずだ袋のようなパジャマの尻からは、ご丁寧に三角形の剣状突起ま
でつけた尻尾が生えている。ついでに背中にも三角形の剣状突起は生えているよ
うだ。

…………。

「ああ、悟浄。起きてたんですか。おはようございます。やっぱり、似合いますね♪」
いきなり開いたドアから、浮かれきった声が入ってくる。
ニコニコニコニコ。

コイツの仕業か。

いや、他に誰がいるのだと問われても、コイツ以外に、俺にこんなことをするヤ
ツなどいやしないのだが、それにしても、何を考えているんだ。
くらくら、目眩を起こしている俺にお構いなしに八戒は嬉しそうに近寄ってきて
俺の首の後ろに、なにやらごそごそやっている。
ぱさりと頭からかぶせられたモノは、やはり緑色のフードらしきものだった。
顔の周囲に小さな白い三角形がたくさん見えることから、多分、歯のつもりなの
だろう。
怪獣型着ぐるみパジャマというわけだ。

「悟浄、とっても可愛いです」
笑顔全開で告げる八戒に、俺は夢なら早くさめてくれと、涙が出そうになった。
何が悲しくて、この年で着ぐるみパジャマを着せられなくちゃならないんだ。
「徹夜で作った甲斐がありましたね♪」
と、はしゃいだ調子で続ける八戒に、俺はただ、乾いた笑いを返すことしかでき
なかった。


*END*






おもしろあわれなお話、ありがとうございますLUNAさん!
着ぐるみ悟浄の出来上がりなんですね。見てみたいです。(笑)
それも寝ている間に全身コーディネイトとは!さすがだ八戒さん!
やっぱり天然な思考のままで「悟浄にきっと似合いますよvv楽しみですvv」
とにこにこ微笑みながら、ちくちくと針仕事したんでしょうねぇ…。
愛ですよ、愛。(爆笑)
歪んでても斜めにかしいでても、コイル状に巻いてても、八戒からの愛なら
ば悟浄は受け取るんですね。漢だわ〜〜〜!(違う?)



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