ゆらゆらとろとろ。
体が浮上する感覚。

ぼんやりと目を開ければ、そこには夢の続きがあった。
まるで、激しい雨のように視界を埋める深紅の糸。
糸巻きに巻いて、しっかり握り締めていたはずなのに、
どうしてこんなに広がっているんだろう?
 そう思って、目の前の赤を握り締めて引き寄た途端に、
「イテテテ!・・・はぁっかいぃ、俺に何か恨みでもあンのか?」
そう、非常に聞きなれた声ーかなり恨めしそうなーが聞こえてきた。
「あれ?悟浄・・・?何で僕が貴方を恨まなきゃなんないんですか?」
半分蕩けた意識で、手を握り締めたままそう声をかければ、
「あれ?じゃねーよ!こんだけ髪の毛持ってかれりゃ、恨まれてんじゃねーかと思うぜ。」
引っ張られた場所が痛いらしく、悟浄はかなりしかめっ面である。
慌てて髪を手放しながら、
「あ、ごめんなさい。ちょっと夢と現実がごっちゃになってました」
そう謝る。・・・珍しく寝惚けていたらしい。
「一体どんな夢見てたんだよ?人の髪を手が切れるくらいに握り締めるってのは・・・」
少しぐったりした様子でぼやく悟浄。
そう言われて、僕はさっきまで見ていた夢を思い出そうとする。
だが、夢の中身を思い出せない。
・・・・妙に自己嫌悪と幸福感が入り混じっていた気はするけど。
「スイマセン、忘れちゃいました。でも多分、悪夢じゃ無かったです。」
苦笑いしながらそう言えば、
「そうかぁ?ならいいけどよ。手、大丈夫か?」
傷ついた方の手を持ち上げて、悟浄は笑いかけてきた。
「平気ですよ、これくらい、舐めときゃ治ります。」
まるで普段の悟浄のような台詞で笑って、手を取り戻して舐めて見せると、
「お前なぁ、俺が同じ事になったら絶対に薬箱持ってくるくせに、何で自分にはそう、大雑把かなぁ。」
そう、呆れられてしまったので、笑ってキスして誤魔化してみたら、

・・・・・・悟浄が固まった。

たまにはこんな朝もある。












運命の糸車を廻すのは、それを司る女神たちなんでしょうか。
それとも……でしょうか。どちらも当てはまりそうです。
そんな「定め」さえも、自分色に塗り替えようとする八戒が
らしいなぁと思います。《結花》






《言の葉あそび》