シャリシャリジャクジャクチクタクカチコチ。
そんな風に、時計が時を刻んでいく音が聞こえてくるくらい、
静かな夕暮れ。

出掛けの挨拶をしようと居間へ足を向ければ、
たそがれの中、どこか世界から切り離されたような空気の中で、
八戒が本を読んでいた。

闇が深くなるのにも気づかずに一心不乱に読んでいる。

「八戒さん、明かりもつけずにそんなところで本読んでたら、
目を悪くしますよ?」
そう言って、居間の照明をつけてやると、

「ああ、悟浄。お出かけですか?」
そう言って、八戒は笑いながら振り向いた。

その笑顔を見た瞬間。
心臓がまるで拳銃を突きつけられた時のようなはね方をして、
自覚していなかったものを、薄闇と、静寂と、光が暴き出した事、
流れ出したものをとどめる術が無いことを知った。

時計の針は戻らない。心の中身は戻せない。
流れ落ちる砂や、零れ落ちる水で作られた時計。
「時」が器の中に閉じ込められて、行きつ戻りつして、
それでも確かに世界は時を刻んでいるように。
そんな風に、気づいてしまった感情は元の場所には戻れない。

確信がもてる。
もう二度と、さっきのような後姿を、無心で見ることは無いだろう。
こちらを向けと、引き寄せる感情がわきあがってくるだろう。

まるで影法師のように、
意識しようとしまいとついてくるだろうこの感情。
断ち切れないなら受け入れて、開き直るしかないだろう?














《葉月遠矢さまのコメント》

キーワード;影、時計、拳銃、砂、水

今回参加者様が少ないとお嘆き気味の雰囲気にみえましたので、
こんな明後日な文も生まれてたって事でご報告します。
とはいえ、ニセモノ劇場なシロモノなのでお慰みになるか、
微妙なトコかとは思います。
というか、お怒りを買わないか少々心配です・・・・。



嘆いてよかった〜〜!と心の底から思う作品ありがとうございますvv
八戒のなにげない笑顔が、恋に落ちる瞬間だったんですね。
今まで何気なくそこにあった「もの」が、恋した時からすべてが悟浄
とっての「特別」になるんですね。
さすがです!無敵の笑顔な八戒さま!(何かが違う)







《言の葉あそび》